今回の記事では、僕が尊敬する岩間伸之先生の著書
「支援困難事例と向き合う 18事例から学ぶ援助の視点と方法」
この本から、ケアマネの支援で困難事例が発生するメカニズムを「3つの要因」と「4つの類型」という内容をご紹介したいと思います。
困難事例に対応する時、とても参考になる考えだと思います。
3つの要因
①個人的要因
発生源が個人(本人)に側に帰属するもの
・強い不安、精神的不安定、気力、意欲の低下
・判断能力の低下や不十分さ
・社会規範から逸脱した強いこだわり
・各種疾患、各種障害
②社会的要因
発生源が社会(環境)の側及び関係性に帰属するもの
・生活苦、生活環境の悪化、家族などの障害、疾病
・社会資源(サービスや自治体の制度など)の不足
・家族、親族との不和、虐待など、近隣住民とのトラブル、職場、学校での排斥
・地域の偏見や無理解、地域からの孤立、排除
③援助者側の不適切な対応
発生源が援助者の不適切な対応にあるもの
・援助者主導の援助、本人の意向や意思の無視
・本人の主体性が換気されないかかわり
・援助関係の形成不全
・不十分な連携と協働、ネットワークの機能不全
・本人を取り巻く環境への不適切な働きかけ
これらは単発で困難事例に即なる、というわけではなく実際は重複していることがほとんど。その組み合わせは全部で4つ。(Ⅰ~Ⅳ型)
困難事例4つの類型
【第Ⅰ類型】 個人的要因+社会的要因
(例示ケース)
本人は独居で軽度の認知症がある。(個人的要因)近隣住民の認知症に対する理解が十分ではない。(社会的要因)その結果、住み慣れた家に住み続けたいという本人の意向に反して住民が施設入所を強く求め、両者間に強い葛藤が生じている
本人はアルコール依存症(個人的要因)一緒に暮らしていた妻が倒れ、緊急入院。その結果本人はさらに酒を飲み、精神的に不安定になり近隣住民に罵声を浴びせる等の言動が見れるようになった。
【第Ⅱ類型】 個人的要因+不適切な対応
(例示ケース)
本人は脳梗塞による右完全麻痺。援助者は機能回復を目指してリハビリを強く推奨(不適切対応)その結果、本人は辛いリハビリを続けても一向に回復の兆しが見られない状況に落胆して、一切のサービスを拒否してしまった。
本人は重度の知的障害があり意思疎通に工夫が必要である。(個人的要因)援助者が本人 の生活パターンを無視してサービスを導入。(不適切対応)その結果、本人は楽しみにしているテレビ番組の時間帯に入るヘルパーに抵抗し、暴力を振るうようになった。
【第Ⅲ類型】 社会的要因+不適切な対応
(例示ケース)
主介護者である家族がリストラにあい生活苦に陥る。(社会的要因)介護保険の支払いを重く感じた家族の訴えのままにサービス量を大幅に減らした。(不適切な対応)その結果、家族が介護できる範囲を超え、本人はネグレクトされる状態となった。
高齢化率の低い新興住宅地。90歳で一人暮らしを続ける本人に対して、近隣住民が失火等不安を訴える等過度に心配する声が上がる。(社会的要因)遠方に住む家族や地域住民からの要望を受けて、援助者が訪問介護などのサービス利用を強引に勧める。(不適切な対応)その結果、本人は周囲との関わりを一切断つ状態となり、その後脱水と低栄養で倒れた。
【第Ⅳ類型】 個人的要因+社会的要因+不適切な対応
(例示ケース)
娘と同居する母親が認知症を発症。(個人的要因)娘には精神障害があり、これまでは母親が身の周りの世話をしていた。(社会的要因)援助者は娘を介護者と期待して、娘へのサポートなしに母親への介護を求めた。(不適切な対応)その結果、娘は混乱して症状が悪化。母親へ身体的虐待へと至った。
本人は人との交流が苦手で、猫が大好き。アパートで13匹の猫を飼っている。(個人的要因)悪臭が強く、近隣からの苦情が頻回にある。(社会的要因)援助チーム側の連絡調整ミスもあって、本人の意向を十分に確認しないまま保健所を呼んで猫を全て処分した(不適切な対応)その結果本人と近隣との関係が悪化し、再び多くの猫を飼い始めた。
まとめ
まとめるとケアマネの困難事例とは
この3つの要因の2つ以上の組み合わせによる、4つの類型パターンに分類されることが分かります。こうして見てみると、困難事例とはケアマネが困難さを感じる要素が重なり合うことで、結果より困難性が増幅していくという悪循環なメカニズムとも言えそうです。
このメカニズムを理解した上で、困難事例と向き合えればまた違った展開になるかもしれません。困難事例で行き詰まっているケアマネの人は是非参考にしてみてください。
(参考書籍)