ケアマネ業務をしていると家族からこんな事言われたことありませんか?
「医療費控除に使いたいので、対象サービスの年間の合計費用を教えてほしい」
家族からそう言われても、この医療費控除について知らないと正直「?」ですよね。僕もケアマネをやり始めたばかりの頃はこの制度についてあまり深く考えていませんでした。
「年間10万円以上の医療費がかかった人が対象らしいけど、自分には関係ないな~」くらいで詳しく知りませんでした。しかしケアマネ自身ははこの制度を使わなくても利用者やその家族は十分対象になる人が大勢います。
そこで、質問に対して適切な対応ができると「このケアマネできるな~」と信用力のアップにも繋がります。必須とまでは言えないかもしれませんが、覚えておいて損はない制度なのでご紹介します。
医療費控除の概要
その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。
なお所得税に対して控除をうけるシステムですが、所得にかかる住民税の税率は10%(都道府県民税・市区町村民税の合計)であることから、医療費控除額の10%に当たる金額だけ住民税が安くなります。覚えておきましょう。
対象となる医療費の要件
- 納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります。)
期間はその年の1/1~12/31。そして自分だけでなく、一緒に生活している家族も対象になります。この事から一緒に暮らしている家族等が自分の所得税から控除を受けるために利用者本人の医療費の確認を求めてくることがあるのです。
控除の対象となる金額
医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。
(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額
(1)保険金などで補填される金額
(例) 生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
(注) 保険金などで補填される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。
(2) 10万円
(※) その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
保険などで補填があった場合はそれを差し引いて、10万円を超える医療費が対象となると覚えておくと分かりやすいです。ただし、所得が200万以下の場合は10万円でなく、総所得の5%が対象です。
例えば総所得が150万円の人の場合は
1.500.000×0.05=75.000
つまり75.000円を超える医療費が控除の対象になるということです。
控除の対象となる医療費
- 医師又は歯科医師による診療又は治療の対価(ただし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)
- 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)
- 病院、診療所、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)
- 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価(この中には、家政婦さんに病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。)
- 助産師による分べんの介助の対価
- 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価
- 介護保険制度の下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
- 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの(ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等は含まれません。)
- 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯などの購入費用(ただし、治療を受けるために直接必要としない近視や遠視のための眼鏡、補聴器等の購入費用は含まれません。)
- 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合に、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代(この場合には、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。)
- 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
- 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
- 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導(一定の積極的支援によるものに限ります)のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金
病院の診察や治療費が対象になるのは知っていると思いますが、介護保険サービスなどに関係する費用が多いことも分かりますね。さらに詳細に介護保険サービスで受けられる控除について説明します。
控除対象の介護保険サービスとは
大まかに3種類あります
②医療系在宅サービス
③福祉系在宅サービス
では、それぞれについて説明します。
①施設サービス
対象サービス
・指定地域密着型介護老人福祉施設
・介護老人保健施設
・指定介護療養型医療施設【療養型病床群等】 介護医療院
この中で特別養護老人ホームと、指定地域密着型介護老人福祉施設についてはかかった費用の1/2の金額が控除の対象となります。この辺りは特養などのサービスが老健や療養病床に比較すると医療の割合が少ないせいかもしれません。
②医療系在宅サービス
対象サービス
・介護予防訪問看護
・訪問リハビリテーション
・介護予防訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導【医師等による管理・指導】
・介護予防居宅療養管理指導
・通所リハビリテーション【医療機関でのデイサービス】
・介護予防通所リハビリテーション
・短期入所療養介護【ショートステイ】
・介護予防短期入所療養介護
・定期巡回
・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限ります。)
・複合型サービス(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります)
これらのサービスは単独利用であっても、かかった費用の全額が控除の対象となります。
③福祉系在宅サービス
対象サービス
・夜間対応型訪問介護
・訪問入浴介護
・介護予防訪問入浴介護
・通所介護
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・短期入所生活介護
・介護予防短期入所生活介護
・定期巡回
・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限ります)
・複合型サービス(上記の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります)
・地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除きます)
・地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスを除きます)
ただし、この福祉系在宅サービスが控除の対象となるには重要な条件があります。それは
医療系在宅サービスと併用利用した場合のみ、控除の対象となる
です。つまり医療系サービスとの併用利用がなかった月などは控除の対象とならないので注意が必要です。しかし例外があり、それが
「介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価」
です。分かりやすいのは在宅で訪問介護のヘルパーさんが痰の吸引(もちろん資格がある人が行うことが前提)を行った場合です。
ただし、対象となる金額は自己負担金額の1/10です。なのであまり多くの控除は期待できない部分と思われます。
手続きの方法は?
医療費の控除を受けるためには、税務署に確定申告をする必要があります。
確定申告対象期間は年度ではなく「年」が対象です。つまり、対象期間の1/1~12/31です。申請期限は原則として2月16日から3月15日です。
尚、会社員の方などは年末調整をしているので、そこで申請できるのではないかと考えがちですが、医療費控除は年末調整はできず自分で確定申告をしなければいけないので覚えておきましょう。
まとめ
色々書きましたが、ケアマネとして医療費控除で覚えておきたいことは
これくらい覚えておけば、利用者や家族から質問されても大体答えることができます。尚、おむつ代や病院等の交通費も対象になります。
さらっと医療費控除について説明して是非「このケアマネできるな~」と思われるようになってみてください。
(参考文献:国税庁HP、厚生労働省HPより)