この記事はこんな人に役立ちます
苦情対応が怖くて上手くできない。最低限どんな事を押さえておけばいいのか知っておきたい
僕達が働いている介護や医療業界はガチガチのサービス業です。
そして、その中でも「感情労働」と呼ばれる仕事の性質から、顧客である利用者やその家族も感情的になりやすく、苦情も小さなモノから大きなモノまで日々発生しています。
その為、この仕事に携わっている人のほとんどが苦情対応の経験をしていると思いますが、皆さんは苦情に対して上手く対応はできていますか?
でも苦情対応に必要な基本的考え方について触れましたが、今回の記事ではもう少し具体的な基本的対応方法のコツについて書いてみたいと思います。
苦情対応の8個の基本的なコツ
①とにかく謝って早く終わらせようとしない
苦情対応に慣れていない人がやりがちな対応が、相手が苦情を言ってきた瞬間内容もあまり聞きもせずに
「申し訳ありませんでした」
と、ひたすら謝罪の言葉を繰り返し早く事態を収拾しようとする事です。
しかしこのような態度に顧客は誠意を感じません。それどころか
「どうせ面倒だから、謝っとけば済むと思っているんだろう」
と不信感を抱き、かえって長期戦になりかねません。
こちらに非があれば謝罪をすることも大切ですが、まずは苦情の内容をしっかり聞く事から始めましょう。
②対応はスピーディーに
例えば、デイサービスから帰ってきたら、行く前にはなかった怪我をしているという苦情が電話で家族から入ったとします。その時の対応はどちらが誠意を感じますか?
A:「そうでしたか。ただ本日は営業が終了しています。明日も利用される予定ですので、明日来られた時に状態を観させてもらいますね」
B:「そうでしたか。ご心配おかけして大変申し訳ありませんでした。構わなければ今から自宅にお伺いして、怪我の状態を確認させてもらえないでしょうか?」
どうでしょう?ほとんどはBのスピーディーな対応に誠意を感じます。
苦情対応はよりスピーディーである程良い方向に進む事が分かっています。その為素早い対応を心がけましょう。
③全職員が組織の代表という意識で対応する
苦情対応が上手くない事業所に多いのに、「苦情担当職員以外は他人事」という意識があります。
苦情というのはいつ、どの職員が言われるか分かりません。何故なら利用者や家族は苦情担当者が誰かなんて知りません(契約の時に説明はしますが、覚えている人はほぼいません)
そのためこう考えています。「全職員が、自分の要望に誠実に対応すべき」だと。
それなのに「ああ、苦情ですか。担当に代わりますのでお待ち下さい」といった発言や態度は絶対にNGです。
利用者や家族からすれば、自分が苦情を申し出た最初の人が担当者です。それが他人事のような態度では、いくら苦情担当者が素晴らしい人でも大きなマイナスからのスタートになるので上手くいきません。
苦情担当者に引き継ぐにしても、良い形でバトンを渡す事を全職員がデキる。これが組織として必要な意識改革です。
④苦情対応はふさわしい場所で対応する
苦情対応と言うのはどこでやってもいいというわけではありません。
ただ利用者や家族はどこで苦情を言い出すかと言えば、事務所があるロビーやサービスステーション等、不特定多数がいる場所です。
そこで感情的に怒鳴る人もいるのですが、そこで慌てふためくような未熟な対応をしていると、他の利用者や家族はどう思うでしょうか?
- 「何やっているんだよ、うるさいんだけど」
- 「さっさと、他の所に移動するとかしろよ。ここはなってないな」
このように事業所の信頼を低下させてしまいます。
さらに感情的に怒鳴っている利用者や家族は、周囲が冷ややかな目で見ている事を感じると
「お前たちのせいで恥をかかされた」
と、さらに怒りがヒートアップして、解決に時間がかかってしまいます。
そこで、このような場合は丁寧に対応しつつ外部から遮断できる相談室などにスムーズに誘導しましょう。
(例)
「こっちを馬鹿にしてるんじゃないの!?」
「不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません。恐れ入りますが◯◯様、よろしければ別室でお話しを聞かせていただけないでしょうか?」
⑤感情をコントロールし、聴くことに集中する
苦情対応の基本の中でも、最も難しいのがこれです。
苦情対応は相手の怒りの言葉に対して、自分は冷静さをキープしながら相手の話を聴くことに集中します。そして怒りが静まり、冷静になりだしてからこちらの事情を説明するのです。
しかし、多くの人ができていません。特に相手の勘違いであることが早い段階から分かると、不機嫌そうな表情や口調が出てしまうのです。
また、苦情を言う人の多くの心理は
- 自分の不快な思いをちゃんと聞いてほしい
- 苦情を言った事で恥をかかされたくない
こういった思いを抱えています。こういった背景を理解すれば、どのように対応するのが良いか分かるはずです。
例えばデイサービス利用中に利用者に発熱が確認できた。その為家族に受診することを勧める為、電話した際に
「病院はそっちが連れて行ってくれるんでしょ?」と言われた場合の悪い例と良い例を比べてみます。
「病院はそっちが連れて行ってくれるんでしょ?」
(不機嫌そうに)「いえ、それはこちらで転倒などの事故があった場合のみです。利用前に説明したはずですが?」
「何ですって!?そんなの聞いてないわよ」
これはダメなパターンの受け答えです。自分の感情コントロールができなかった結果、相手を余計に怒らせてこじらせてしまいます。では、どうすれば良いのでしょうか?
「病院はそっちが連れて行ってくれるんでしょ?」
「恐れ入ります、◯◯様。お時間頂戴して申し訳ないのですが、このような場合は当事業所としてどういう対応ができると聞かされているか、教えていただけないでしょうか?」
「ええ、いいわよ。私は◯◯~・・・と聞いてますけど」(話は相槌を打つなどして、途中で絶対に遮らない」
「そうでしたか。実はこのような場合、当事業所としては◯◯という理由で病院にお連れする事ができないのです。大変お手数なのでが、◯◯様(利用者)の為にもご協力いただけないでしょうか?」
相手のイライラした感情に流されず冷静に相手の話を聴く。そして相手が冷静になってきたタイミングで、こちらの事情を説明し、ソフトな言動で理解を求めるように努めて見ましょう。
⑥難しい案件は複数で対応
ここで言う難しい案件は「金銭の賠償問題が絡みそうな場合」です。例えば
- こちらの不手際で怪我や誤薬等、健康状態に悪影響を与えた可能性がある
- 不適切な介護により、自宅や備品に何かしらの破損をさせた可能性がある
- 書類手続きの不備で、不利益を与える可能性がある
この時単独で対応すると「言った・言わない」問題になって平行線になり、問題の解決が長引く可能性があります。
こういった事態を防ぐ為に、複数人で対応することが基本になります。
また相手がこちらの些細な言質を取って金銭を要求する事が目的の場合は、法人が契約している顧問弁護士にも立ち会いをお願いしたり、アドバイスをもらう。場合によっては「今後の対応を適切に行うため」という名目でICレコーダーを回しながら対応するのも有効です。
もし金銭が絡む可能性がある場合は、なるべくスピーディーに解決する必要があります。
理由は「時間は相手の期待を膨らませる」からです。
時間がかかればかかるほど、相手の心理として「これは賠償してもらえるだろう」という気持ちが強くなるため、そこで賠償できないと分かるとほぼ100%激昂します。
威嚇的な言動の方であっても怯んではいけません。丁寧でありながらも、毅然とした態度で対応する必要があります。時間をもらう場合も先に「検証した結果、賠償できない場合もありますのでご了承ください」とハッキリ伝えましょう。
⑦苦情は全部署で共有しておく
苦情を言った側の心理として「重要なことだから、この事は皆が知っているはず」というのがあります。
それなのに、「この間の件は本当に困りました」と言った時、「何の事ですか?」と言われると相手の不信感を高めてしまいます。
最悪の場合、また別の形で苦情が蒸し返される事があります。苦情対応は担当者だけがやるものではなく、組織として行うものです。きちんと情報共有できる体制を築いておく必要があります。
⑧前例を作らない
なかなか解決に向かわない案件があると「今回だけ特別ですよ」と対応したくなりますが、これは絶対避けなければいけません。
この対応はその場では解決しますが、長い目で見ると事業所にとって不利益です。
一度前例を作ると
- 「前はやってくれただろ」
- 「聞いたんだけど、あの人は良くて、なんで私達はダメなの?」
と、本来一度限りのはずの特別対応が、当たり前になってしまうのです。
これは何も全く融通を利かすなという事ではありません。このような事を機に、組織としてサービスを検討し、改善した結果、全ての顧客に対してこれまでより質の高いサービスを行うことは良いことです。
そうではなく、その場しのぎの特別対応が良くないということです。
まとめ
苦情対応の基本。8個のコツは
①とにかく謝って早く終わらせようとしない
②対応はスピーディーに
③全職員が組織の代表という意識で対応する
④苦情対応はふさわしい場所で対応する
⑤感情をコントロールし、聴くことに集中する
⑥難しい案件は複数で対応
⑧前例を作らない
苦情対応は今回紹介した基本的なコツをまず押さえておくことが重要です。基本があって、初めて応用的な対応も行えます。是非身に付けてもらえたらと思います。
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