最近少しずつ聞くとが増えて、気になっているワードに「産業ケアマネ」というものがあります。
利用者の家族が今の仕事を無理なく続けていけるようにする − 。そうした視点も重視したケアプランを作れるケアマネジャーを育成すべきと提言。必要な知識を身に付けてもらうセミナーを開催するとともに、それを受講したケアマネを評価する仕組みを設けて推進すべきと求めた。今後、厚生労働省に具現化を働きかけていく方針だ。
取りまとめにあたった中央大学法科大学院の安念潤司教授は会合後の会見で、「医師には産業医がいる。これはその介護版。言わば『産業ケアマネ』とでも呼ぶべき人材を育成してはどうか」と述べた。加えて、「親などの介護をしながら働くというのはどういうことか。どんな働き方をすればうまくいくのか。そうしたことも十分に考慮して支援にあたれる人材がもっと増えればいいなと考えた」と語った。
「産業ケアマネ」はここ数年で関心が高まってきた概念。介護離職を減らす効果が見込めるとして、既に一部の企業などが実際に育成を始めている。多くの場合、仕事と介護を両立していくうえで役に立つ知見を研修などで深めたケアマネを指す。これから登場する機会が増える言葉になるかもしれない。
規制改革推進会議は今回の意見書に、介護休暇を時間単位で小刻みに取得できるようにすることも盛り込んだ。現行の制度では半日単位でしか取れない。ケアマネのモニタリングに同席して相談の機会を得られるなど、働きながら家族を介護する人にとってメリットが大きいとしている。
引用:JOINT 介護のニュースサイト
要は産業医のケアマネ版というのが一番理解が早いと思います。
そして、実際に試験的に導入している企業もあるようです。大手企業などで、介護事業も展開しているような会社が、自社のケアマネジャーに社員の介護相談や、場合によっては社員の親のケアマネジャーになってもらって支援をしてもらうようです。
僕はこの取り組み自体はとても興味深く、ケアマネジャーの活躍のフィールドが広がるという意味ではメリットも大きいと思います。何より社内事情に詳しいケアマネに相談できるのは、相談者としてもとても心強く、時短勤務や休暇取得などの言い出しづらい事も一緒に会社に申請できるという強みがあります。
一方ですぐに導入して、実際に使える制度になるためには解消しなければいけない課題も多いと感じます。
この産業ケアマネの制度の基本的な骨組みは、産業医と同様に企業が特定の居宅介護支援事業所と契約を交わし、その企業の産業ケアマネになってもらうというものです。
この時気になるのが
・報酬体系はどうなるのか?
(完全に居宅事業所と企業で自由に決めるのか?それとも国や都道府県、市町村などからもお金が出るのか?それ以外にも1回や1人の支援で幾らなのか、或いは月単位の包括報酬制度になるのか)
・契約した場合、社員の利用者の支援をする可能性がある為、受け入れ枠を空けておく必要がある。その空きを保持しておくための支払いなどはどうなる?
そして一番心配なのが「家族の御用聞きケアマネジメントにならないのか?」ということです。
この制度の一番の狙いは「社員が介護が原因で急な離職や休職などになることを防ぐ」これが最大の目的です。
その為契約した会社が求めているのは「社員=家族のニーズに応えるケアマネジメント」を産業ケアマネに求めているのであって、決して本人のニーズに応えてほしいなどとは思っていないことです。
ここで本人と家族の意向が大きく異なる場合どうするのか?本来のケアマネジメントは利用者の意思・意向を最大限尊重しつつ、家族を含めた周囲との調整をしていくことです。
つまり家族である社員の希望通りには必ずしもならず、結果として会社が求めているようなケアマネジメントにならない事も十分考えられます。
しかし、その結果をもって「あの事業所は金を支払っているのに、顧客である自分達のニーズに応えようとしない。不誠実だ」等と言って契約解除。そんな事が続くとするならば、産業ケアマネは「契約を継続するためには、利用者の意向より家族である社員の意向を優先しなくてはいけない」等というおかしな構図が生まれてしまう危険もあるのです。
その辺りの社会や企業の理解がないまま、この制度が進められると本来のケアマネジメントが大きく歪められてしまうことがとても心配です。
是非、国には産業ケアマネの導入にあたっては「ケアマネジメントはあくまで家族ではなく、利用者の為にある」ことを忘れずに進めてほしいと思います。