次の介護保険改正の内容を話し合う、社会保障審議会・介護保険部会が3月24日に再開されました。
この会議で話し合われる内容で僕が特に注目している内容、それが
「軽度者(要支援1~要介護2)の訪問介護、通所介護、福祉用具(貸与、購入、住宅改修)を総合事業に完全移行するかどうか?」
これです。この議題に関しては以前から財務省がずっと要求を続けている案件です。
令和3年度の改正では、介護業界からの反発が強く完全移行は見送られました。
その代わり「各市町村が必要と認める場合は、軽度者でも総合事業のサービスが受けられる」というルールが追加されてしまったのです。財務省の真意は
今回はジャブで済ましてやるけど、次は渾身のストレートパンチを絶対喰らわせてやるからな
これです。ここまで踏み込んできたからには、次はかなりの確率で要介護2までの高齢者が総合事業に移行する可能性が高くなっています。
今回は軽度者が総合事業に完全移行してしまった場合の問題点などについて確認してみましょう。
軽度者の総合事業への完全移行の問題点
①独居や老夫婦の在宅生活が難しくなる
訪問介護が総合事業に移行すると、独居や老夫婦で生活している人達の在宅生活は難しくなる事が予想されます。
なぜなら独居や老夫婦世帯である程、訪問介護によるサポートが欠かせないからです。
・介護が必要なパートナーの介護を、足腰が弱った自分達だけではできない
②家族の介護負担が重くなる
通所介護が総合事業に移行すると、思ったように通所介護が利用できなくなる人が増える事が予想されます。
理由として料金などのコストの負担が重くなる事。そして総合事業を提供する事業所の数が少ない場合などは、キャパシティオーバーで利用できない可能性があるからです。
そうなるとどうなるか?一つ考えられるのが「家族の介護負担が重くなる事」です。
通所介護を利用する理由は様々ありますが、主な理由の一つにレスパイトケアがあります。
認知症もあるし、一人で家で過ごすわけにはいかないから、仕事の間はデイサービスを利用させてほしい
・仕事を辞めた結果、経済的に苦しくなる
・経済的負担と介護負担の両方が重くなり、虐待などの深刻な事例が増える
③福祉用具が使えない事で、転倒事故が増える
ケアマネを10年以上やっていて僕が実感した事があります。それは
「軽度者ほど、住環境整備が大切」
これです。理由はシンプルです。軽度者は自分で動ける行動範囲が重度者と比べて広いからです。
行動範囲が広いからこそ、本人が普段から移動する場所や範囲を把握し、段差の解消であったり、手すりなどに掴まりながら動いてもらう事で転倒を予防する事が大事になります。
高齢者は長年住み慣れた家であればある程、若い頃の感覚のまま「これくらい大丈夫でしょ」と考えてしまいます。しかし若い時のイメージ通り体が動かない。しかもつまずいて、バランスを崩した時も若い頃のように立て直したり受け身を取る事ができず、骨折などの大けがに繋がる転倒をしてしまう事が多くあります。
総合事業移行により、その大切な住環境整備が十分に行えなくなったら?今よりもたくさんの人が自宅で転倒・骨折をして入院。その結果、自宅で生活ができなくなり、施設入所希望者が今より急激に増加する恐れがあります。
現時点でできる事はあるのか?
まだ軽度者が総合事業に移行する事が決まったわけではありません。上手くいけば、次回の改正でもお流れになる可能性もあります。
しかし、悠長に構えていると本当に移行する事になった時どうしていいか分からずパニックになるだけです。そうならない為にも現時点でできる事をしておきましょう。
ケアマネとして、現時点でこのような事ができそうです。
・2024年4月~軽度者が総合事業に移行した場合のシュミレーションをしておく
・利用者や家族にも、情報提供を行い、そうなった場合について話し合う機会を作る
まず自分達の地域に現時点でどのような総合事業があるのか調べてみましょう。例えば訪問系サービスを提供している事業所はどのくらいあって、どのようなサービス内容を、どの程度の料金でやってくれるのか?といった事です。
そして最悪の場合を常に想定して準備するのが大切です。つまり「2024年から、軽度者は総合事業に移行する」という前提で動くという事です。
今自分達が支援しているケースであれば、どの程度の人達が該当するのか?そうなった場合、ケアプランの内容はどのようにするのか?
このような事について、ケアマネとして事業所全体でも考える必要があるし、利用者や家族にもその事を伝えて、どのようにするか?早めに考えておくといいでしょう。
まとめ
軽度者の総合事業への完全移行の問題点