知らないとケアマネできない疾患シリーズ。「生活支援がわかる ケアマネジャーの医療知識」から今回は近年増え続けている在宅酸素療法(HOT)でおなじみの疾患「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について紹介します。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?
息をするときに空気の通り道となる気管支や肺に障害が起きて、呼吸がしにくくなる肺の「生活習慣病」で、呼吸器疾患の中で単独で要介護状態になる疾患です。
以前は「肺気腫」と「慢性気管支炎」に分けられていた病気をまとめてCOPDと呼ぶようになりました。
原因
COPDの原因の90%がタバコです。タバコの煙に含まれる有害物質を長期間吸入することにより発症します。重度喫煙者の約20%が発症すると言われています。日本のCOPDの患者は40歳以上で発症率が高く、その数は約530万人。高齢になるほど発症の頻度が高くなります。
診断
まずは簡単な診断基準です。
・タバコ喫煙歴:喫煙指数(1日の本数✕喫煙年数)が600以上
・断続的、継続的に咳または痰がある
・労作時に常に呼吸困難の自覚がある
・安静時に呼吸困難がない
・症状の発現年齢が60歳以上
・胸部X線・CT検査で異常が確認される
・スパイロ検査による異常発見
スパイロ検査とは、スパイロメーターという測定器械を使い、肺活量と息を吐いた時の空気の通り具合を調べます。検査方法は、測定用のマウスピースをくわえた状態で、いっぱいに吸った息をできるだけ速く吐きだすという簡便なものです。
努力肺活量(FVC):息を思いきり吸ったあとに強く吐き出した息の最大量
1秒量(FEV1):最初の1秒間に吐き出せる量
1秒量を努力肺活量で割った「1秒率(FEV1%)」が70%未満であると、COPDと診断されます。
症状
主な症状は労作時の呼吸困難感です。また慢性の咳と痰も特徴です。進行性であり、治療を行っても正常には戻りません。
COPDの病気のステージが以下です。
Ⅰ期:1秒量80%以上(軽度)
Ⅱ期:1秒量50%以上80%未満(中等度)
Ⅲ期:1秒量30%以上50%未満(高度)
Ⅳ期:1秒量30%未満(きわめて高度)
病態は不可逆であり、進行すると労作時の呼吸困難が強くなりSpO2(血中酸素濃度)が低下し、90%以下に低下した状態を「呼吸不全」と呼び、酸素を十分に取り込めなくなった状態です。
この呼吸不全が安静時にも持続している状態を「慢性呼吸不全」といい、呼吸不全の重症度判定にもちいられるのがHugh-Jones分類です。
風邪やインフルエンザなどにかかると、それが原因となって病状が急激に悪化することがあります。重症化すると、呼吸困難、喘息のような発作、痰の量が増える、肺炎などの症状が出ます。
いったん重症化すると治療によって症状が改善したとしても、呼吸機能は以前よりも低下してしまいます。感染症の流行期には手洗い・うがいの習慣、インフルエンザワクチンの予防接種を受けるなど予防策を打って、これら感染症にかからないように注意することが大切です。
治療
治療は労作時呼吸の軽減を図りつつ、肺機能の低下をできるだけ抑える事が目的になります。
①禁煙
症状の緩和、病気の進行を遅らせる
②薬物治療
症状の鎮静、肺機能低下の抑制
③栄養状態の改善
全身状態の改善に伴い、予後にプラスの作用
④リハビリテーション
四肢筋力、呼吸筋を増強し、労作時呼吸困難を改善
⑤在宅酸素療法(HOT)
慢性呼吸不全の治療として重要
まず禁煙と薬物治療が重要です。COPD患者の1秒量は健常者の2倍の早さで低下します。つまり放っておくと呼吸機能が通常の2倍の速度で低下しますが、適切な治療によりそれを遅らせることができるのです。
また在宅酸素療法はCOPD患者の生命予後とQOLの改善に効果を発揮します。在宅酸素療法は保険適用で治療が受けられ、その利用患者は14万人を超えると言われています。この酸素の管理をいかに適切にするかも、患者の生活を支える上で大切になります。
次回は今回紹介したCOPDの特徴を理解した上でのケアマネジメントポイントを紹介します。
参考書籍