今回は居宅のケアマネ、特に管理者をやっている人には絶対に知っておいてほしい減算
特定事業所集中減算
これについて紹介します。
基本ルール
対象期間に同一法人の事業所の利用割合が80%を超過した場合に、全員の居宅介護支援費を200点減算する。減算期間は半年
対象サービス
訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与
判定期間
前期:前年度 3月 1 日から当年度 8 月末日(減算適用期間:当年度 10 月 1 日から 3月31日まで)
後期:前年度 9 月 1 日から当年度 2 月末日(減算適用期間:次年度 4 月 1 日から 9月30日まで)
判定は半年単位になり、減算期間もそれに合わせて半年となります。その為、単月で見た時に集中割合が80%を超えていても、半年トータルで超えていなければセーフです。なので定期的に集中割合を確認し、必要に応じて修正していくという運営が必要になります。
逆に途中で改善できたとしても、一度減算の適用となれば半年は強制的に200単位の減算です。例えば毎月約100人分の居宅介護支援費を請求している事業所であれば
2000円×100=200.000円/月の減算
さらに、これが半年なので200.000円×6=1.200.000円
なんと半年で120万円もの収入ダウンです。これは痛すぎる・・・😖
独立型の事業所だったら、確実にボーナス払えないですね。なのでなんとしても減算は喰らわないようしないといけません。
計算方法
基本はそのサービスの実績があったサービス計画数を分母として、その内同一法人のサービス利用数が分子となりそれが紹介割合になります。ここでは集中率という言葉で統一します。
例:半年の適用期間の通所介護の計画数(利用実績)が、事業所全体で300あったとします。その内同一法人の利用実績が250だった場合は
250/300=0.83333・・・ (約83%)
こんな感じです。しかしもう少し具体的に見ていきましょう。
同一法人の考え方は?
これはそのまま素直に考えたとおりになります。例えばA、B、C、D、E5つの通所介護事業所を利用しています。ここでは分かりやすく、5つトータルで100の利用実績でそれぞれ20ずつです。
このままだとそれぞれの集中率は20%ですが、例えばA、B、Cが「スマイル法人」という法人が運営しており、D、Eはまた別々の法人が経営している場合スマイル法人の集中率は60%という具合になります。
一人の利用者が複数の事業所を利用している場合は?
まず考え方の整理ですが、分母はあくまでも計画数。つまりそのサービスの利用のあった利用者人数です。
そして、分子は同一法人のサービス利用数です。その為一人の利用者がA、Bと法人の異なる利用実績があった場合はそれぞれを1とカウントします。
しかし、そのA、Bが同一法人である場合はカウントはA・B2つで1とします。
なんかややこしい感じですよね。ちょっと分かりやすくしてみます。
3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
通所介護の計画数 | 35 | 37 | 33 | 31 | 39 | 35 | 210 |
デイサービスAの利用数 | 25 | 28 | 24 | 22 | 27 | 25 | 151 |
デイサービスBの利用数 | 15 | 10 | 8 | 8 | 10 | 8 | 59 |
デイサービスC利用数 | 5 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 12 |
まずこの中で一番通所介護の利用計画数の多いのがデイサービスAです。その為通所介護の部分で減算になるかどうかは、このデイサービスAの集中率が8割を超えないことが条件になります。
デイサービスAの集中率 151/210=0.719・・・約0.72
集中率は72%ということでセーフです。
ところで、4月に注目してみると計画数が37に対してA・B・C3つのデイサービスの利用トータルは28+10+1=39で計画数を超える数字になっています。
これは先程述べた一人の利用者が複数事業所を利用している場合があるからです。しかし、同一法人であった場合は仮に一人が3つのデイサービスを利用していたとしてもカウントは1になるということです。
どうでしょうか?分かってしまえば、それ程計算自体は難しくないと思います。
減算が免除になる正当な理由
対象サービスの集中率が80%を超えると減算になりますが、それを免除できるルールも存在します。
(例)訪問介護事業所として4事業所、通所介護事業所として10事業所が所在する地域の場合。紹介率最高法人である訪問介護事業者に対して、減算は適用されないが、紹介率最高法人である通所介護事業者に対して、減算は適用される。
② 特別地域居宅介護支援加算を受けている事業者である場合
③ 判定期間の1月当たりの平均居宅サービス計画件数が20件以下であるなど事業所が小規模である場合
④ 判定期間の1月当たりの居宅サービス計画のうち、それぞれのサービスが位置付けられた計画件数が1月当たり平均10件以下であるなど、サービスの利用が少数である場合
(例)訪問介護が位置付けられた計画件数が1月当たり平均5件、通所介護が位置付けられた計画件数が1月当たり平均20件の場合は、紹介率最高法人である訪問介護事業者に対して、減算は適用されないが、紹介率最高法人である通所介護事業者に対して、減算は適用される
⑤ サービスの質が高いことによる利用者の希望を勘案した場合などにより特定の事業者に集中していると認められる場合
(例)利用者から質が高いことを理由に当該サービスを利用したい旨の理由書の提出を受けている場合であって、地域ケア会議等に当該利用者の居宅サービス計画を提出し、支援内容についての意見・助言を受けているもの
⑥ その他正当な理由と都道府県知事(指定都市及び中核市においては、指定都市又は中核市の市長)が認めた場合
簡単にまとめると
こんな感じです。要するに人口が少ない小規模の市町村でサービス事業所が少なかったり、独立型の一人ケアマネ事業所であまり多くの利用者の支援をしていない。またそもそもあまり対象サービスを利用していない場合などが減算が免除になり正当な理由です。
個人的には⑤⑥を免除理由にするのはハードルが高いと感じます。例えば地域にあまり事業所がないが、ある1箇所の事業所だけがダントツで設備、人材の質、取り組み等が優れているような場合になら該当する可能性があります。
(例えばですが、通所介護事業所でPT等の専門職が常勤専従で配置されていて、専門的なアセスメント、プランニング、評価による質の高い機能訓練を実施している。通所介護事業所としては珍しくSTが配置されており、質の高い口腔機能訓練を行ってくれている等)
このようにそこが地域内で他事業所より優れていることを客観的に示せるような根拠がないと難しいです。それなりの規模で、事業所数も多い場合はやはり1箇所に集中する事自体が不自然であると判断される可能性は高いです。
手続きはどうすれば?
これは減算に該当したかどうかで異なります。
①該当しなかった場合
半年間の集中率の状況を表にまとめて保存しておいてください。つまり、「減算でなかった証拠」を残しておくということです。
②該当した場合
それぞれの集中率を計算した表を各都道府県に提出することになります。
前期:9月15日まで
後期:3月15日まで
大体この期日内に提出することになります。ただ計算表などは、最近はほとんどの介護ソフトで自分でやらなくても自動で作成してくれますので、それでも構わないこともありますので、確認をしてみてください。
集中減算の書類の保存期間についても各都道府県で確認しておく必要があります。大体2~5年くらいの保存義務を設けているところが多いようです。
まとめ
特定事業所集中減算で覚えておいてほしいことは
基本ルール
適用期間
(減算適用期間:当年度 10 月 1 日から 3月31日まで)
・後期:前年度 9 月 1 日から当年度 2 月末日
(減算適用期間:次年度 4 月 1 日から 9月30日まで)
これらのポイントを抑えておいてください。
管理者じゃないケアマネも「今うちの事業所は対象サービスの集中状況どうなっているのか?」というのは常に頭に入れながら、ケアマネジメントしていくことは大切です。
際どい状況にあるサービスなどは管理者と相談しながらやっていく必要がありますので是非覚えておきましょう。