2018年改正で新たにできた加算で「ターミナルケアマネジメント加算」があります。
在宅で末期がんの利用者を支援するケアマネに対して、その取組みを評価する加算ですが、まだまだ取得している事業所は少ないようです。今日はそんなターミナルケアマネジメント加算について紹介します。
ターミナルケアマネジメント加算の取得要件
400単位/月
(仮に最後に訪問したのが10月の末で、死亡したのが11月のはじめだったとしたら11月が算定月になる)
・死亡診断を目的に医療機関に搬送されても、24時間以内に死亡診断が出れば算定可能
取得要件
①末期の悪性腫瘍の患者であり、在宅で死亡すること
対象はあくまでも末期ガンの方のみが対象です。
僕達ケアマネは在宅での看取りケアもやりますが、老衰や難病などの方はこの加算の対象外となります。この対象範囲が限定されすぎているのが、この加算の取得が進みにくい要因の一つと考えられます。
②ターミナルケアマネジメント加算について、利用者または家族から同意を得ること
③24時間連絡できる体制を確保し、かつ必要に応じて居宅介護支援を提供できる体制を整備している事
24時間連絡体制が要件の一つになっていることからも、この加算を取るためには特定事業所加算の取得をしている事業所が加算取得することが想定されています。
④死亡日および死亡日前14日以内に利用者の居宅を訪問し、利用者の心身の状況などを記録し、主治医及び居宅サービス計画に位置づけた居宅サービス事業者に連絡調整すること
これがこの加算の算定要件で最も重要かつ、ハードルの高い部分です。
死亡日14日に2日以上の訪問が必要です。つまりペース的には週1くらいでの訪問が必要になります。
ただこの部分が僕は大変疑問で、頻回なケアマネの訪問が必要かどうかはケース・バイ・ケースだからです。
老老介護で看取りをしているようなケースであれば頻回な訪問は有効になります。しかし主介護者が元看護師だったり、そうでなくても多くの家族の協力が得られていて、最期の時間はなるべく家族だけの時間をゆっくり送りたい人もいます。
その場合ケアマネを含め、専門職種の訪問が無駄に多すぎることがかえって最期の時期のQOLを損なう可能性もあります。この辺りは加算の要件だからと無意味な訪問をするのではなく、ケアマネとして必要な頻度の訪問をするという判断が求められます。
訪問したら利用者の状況の記録を残すのは当然なので、この点は問題ないでしょう。連絡・調整について1番スムーズなのが訪問診療や訪問看護、訪問介護などのサービス提供のタイミングに合わせてケアマネが行くのが良いでしょう。その際に必要な情報共有や調整を行い、それを記録に残しておけば問題ありません。
また主治医が末期がんで、状態変化による日常生活への支障が1ヶ月以内に起きると判断した場合を条件に、ケアマネジメントプロセスの簡素化。ここでは担当者会議の開催をスキップしても構わないルールになっています。
ただし、看取りケアに必要な情報共有はケアマネとして行うことは必要です。ケースによりますが、もう余命1週間程度等と予想されている場合はのんびり担当者会議をやっている場合でない事を想定したルールです。
担当者会議がまだできる場合ならやったほうがよいでしょう。
ターミナルケアマネジメント加算がキーとなる特定事業所加算(Ⅳ)
125単位/月
ターミナルケアマネジメント加算を取得している事業所は、特定事業所加算(Ⅳ)の取得を検討したいところです。この加算の特徴は単独での取得はできず、あくまで特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得している事業所が要件を満たした場合の上乗せ加算になります。
要件は厳しいですが、取得できれば収益面でかなり大きな加算になります。
取得要件
①退院・退所加算を算定し、その医療機関との連携回数が年間35回以上あること
この連携回数ですが、単純に連携した回数でカウントOKです。例えばカンファレンスして3回連携した場合、加算の算定自体は1回ですが、ここでは3回連携したことになります。
毎回3回取得する前提なら、年間10回退院・退所連携すれば良いのですが、毎回2回だと18回必要で意外とこの部分のハードルも高いように感じます。そもそも利用者がそんなに入院するかどうかも含めて考えると、毎年要件を満たせるかどうかは難しいかもしれません。
②ターミナルケアマネジメント加算を5回以上取得している事
1回取るだけでもなかなか大変な加算を年間5回。先程も述べたように加算の性質上、無理して取得するような加算でもありません。
これができるのは法人の母体が、積極的に地域で訪問診療や往診で在宅の看取りケアを行っている医療法人系の併設居宅だと考えられます。通常の居宅だと要件をクリアするのは難しいでしょう。
この要件もそもそも毎年5人以上もの末期がん患者が、在宅で看取りケアしてほしいという依頼があるかどうかも分からないことから、必ず要件を満たすのは難しいです。
まとめ
どちらも取得ハードルの高い加算で、普通の居宅では難しいと思います。そもそも末期がんに限定しているのが疑問です。末期がん以外の利用者の在宅での看取りは多くのケアマネが行っており、その手間や負担が末期がんの人とそれほど差があるわけではありません。
今後はターミナルケアマネジメント加算の要件変更が期待されます。末期がんに限らず看取り対象者全員に算定できるようになれば、在宅で最期を迎えるようになる方が増えるのではないかと思います。