この記事で紹介した統合失調症のケアマネジメントをどのようにすれば良いかについて今回は解説します。
統合失調症のケアマネジメントポイント
ポイント①通院・服薬の重要性
統合失調症は病院での治療を受けない限り、安定した社会生活を送ることはできません。しかし統合失調症は昔は「精神分裂病」と呼ばれていた時代もあり、社会的な偏見が未だにある病気です。そのため家族などの周囲も病気を受け入れることができず、「怠けているだけ」「疲れが溜まっているだけ。少し休めば元気になる」等と病院受診を拒むこともあります。
そのため、まずは統合失調症が脳の病気であることを説明し、状況を改善させる為には医療機関での薬物治療は必要不可欠であることを粘り強く説明する必要があります。
ケアマネだけで難しいときは、PSW等の専門職にも協力が仰げないか検討してみましょう。
ポイント②受容的コミュニケーション
統合失調症の症状の特性上、感情の波が激しく日によって言うことが異なったりする為、本人との信頼関係を構築することに難しさを感じやすいと思います。しかし本人の言葉に振り回されるのではなく、受容的な態度で接しまずは否定せずに話を聞くことで徐々に信頼関係が築かれやすくなります。
一方で症状の進行などが明らかであるにも関わらず、薬が飲めていなかったり病院に行きたがらない場合は現実的な対応ができるよう対応する事も必要になります。
ポイント③介護者のサポートは多面的に
統合失調症の症状は家族(介護者)にとって分かりづらい面があります。分からない事が不安やストレスを高めてしまいます。情報提供はたくさんしたい気持ちも湧きますが、心に余裕がない状態では言っても相手に届きません。まずは家族が困っている内容と関連が強いものから情報提供し、支援できるようにしましょう。
また介護者のレスパイトケアは、ショートステイ等の介護サービス、訪問看護等の医療ケア、さらに家族会等多面的に行うことが有効です。
ポイント④各種の制度を活用する
統合失調症は精神疾患の一つです。そのため介護保険以外の様々な制度が活用できます。
「精神障害者保健福祉手帳」「自立支援医療制度」「障害福祉サービス」「障害年金」「成年後見制度」等です。これらの制度は主に経済的な負担を軽減してくれます。統合失調症は長期的なケアになるため、それに伴う経済的な心配は本人・家族共に強くそれが原因で治療を拒んでしまっては元も子もありません。その時々に応じて情報提供できるよう、事前に自己学習しておきましょう。
ポイント⑤生活能力の改善策として
統合失調症に罹患すると、日常生活の様々な事に支障が出てきます。これらの課題に対して生活能力を高めるために小規模作業所や精神障害者訓練施設などの利用をすることも効果的です。家族との同居が難しい場合はグループホームなどもあります。一つの選択肢として考えておくと良いでしょう。
ポイント⑥入院はできるだけ短期間
統合失調症の急性期への対応は入院治療が多くなります。しかし入院治療では集団管理が優先される結果、個別の支援が手薄になり、適切な治療ができなかった結果入院期間が長期化し、在宅復帰が困難になることがあります。
そのため入院初日から医療機関と連携し、いつ頃退院を目指すのか。在宅で生活するためにはどのような体制や支援が必要で、その為には何をしなければならないのか。こういった退院計画を考えておく必要があります。
ポイント⑦再発を見逃さない
統合失調症は再発に気づき辛いという面があります。再発率は高く、特に発症初期の5~10年間はそのリスクは高くなります。再発を繰り返すと予後も悪くなりがちです。再発の兆候を知って、早期に対応できるようにしなければなりません。
再発の兆候
・朝起きられない。昼夜逆転し、不眠になる
・そわそわ歩き回り、落ち着きがなくなる
・発症時の体験など、心的外傷体験を語る
・食欲不振を訴える
・イライラして攻撃的になる
・ひきこもりになる
・コミュニケーション能力が低下する
・作業所やデイケアの利用を突然やめてしまう
・うつっぽくなり、ぼんやり考え込んだりする
・落ち込んでいたかと思うと、突然活発になるなど躁鬱の症状が出ている
・被害妄想、すねたり、不満を言う
まとめ
統合失調症の押さえておきたいケアマネジメントポイントは
①通院と服薬が重要
②本人との信頼関係を築くには「受容的コミュニケーション」
③介護者のサポートは多面的に
④支援は各種制度を活用する
⑤生活能力を改善させる目的で作業所、訓練施設、グループホーム等を利用する
⑥入院はできるだけ短期間で済むよう、医療機関と連携する
⑦再発リスクが高い為、兆候を知って予防する
ケアマネも認知症などと比べると、統合失調症は表向き罹患している人が少ないためどう対応してよいのかが分からない人が多いです。統合失調症を疑うような症状が出ている場合は、一度医療機関での受診を検討してみてください。
適切な治療やケアをすれば落ち着いて生活することも可能です。是非参考にしてみてください。
参考書籍