知らないとケアマネできない疾患。「生活支援がわかる ケアマネジャーの医療知識」から今日は「統合失調症」について紹介します。
統合失調症とは?
統合失調症は、幻覚や妄想といった精神病症状や意欲・自発性の低下などの機能低下、認知機能低下などを主症状とする精神疾患です。主に思春期から青年期にかけて発症しやすい傾向にあります。
男女比は概ね1:1ですが、女性は閉経期に好発するなどの特徴があります。発症は100人に1人と言われ、決して珍しい病気ではありません。しかしあまり知られていないため、高齢者が発症すると認知症と混合されて適切な治療が遅れた結果重症化してしまうこともあります。
原因
はっきりした原因は不明ですが、脳機能に何らかの障害が起こり発症することは分かっています。
その障害により「ドパミン」が過剰に分泌され、その結果幻覚や幻聴などの症状が出現すると考えられています。ただそれ以外の神経伝達物質の働きにも異常が生じています。
社会情勢の不安定化であったり、職場などの人間関係が起因となる強いストレスが統合失調症の発症の引き金になるとも言われています。
一方WHOによると、一般的な発症率は100人に一人。つまり1%ですが、親や兄弟姉妹に発症した人がいると発症率は10%と10倍にもなるというデータもあります。また一卵性双生児の一人が発症すると、もう一人の発症率は約50%。こういった事から統合失調症の人と遺伝的関係に近い人は発症率が高くなると考えられています。
症状
①陽性症状
幻覚、幻聴、被害妄想、混乱等。特に幻聴と妄想は急性期に多い代表的な症状です。
また不眠、洞察力の欠如や支離滅裂な会話などの思考障害、激しく興奮するなど
②陰性症状
意欲低下、集中力の欠落、無関心、疲れやすい、引きこもり等。自信や意欲をなくし集中力も続かなくなるため、仕事をしていた人であれば続けるのは困難になります。こうした症状は普通の人でも見られるため「疲れているんだろう」「最近やる気がないな」等と見過ごされがちです。
症状が進むと引きこもりがちになり、何事にも関心が無くなり無感情な状態になります。そうかと思うと急に興奮し出す等感情のバランスが悪い状態になります。
③認知障害
記憶力、整理能力、計画能力が著しく低下し、注意力散漫、抽象的に考える能力や問題解決能力の欠如等が出現します。例えば単語の意味は理解できるが文章全体の意味は理解できない、意思決定が必要な仕事や複雑な作業ができない、協調性が取れない等です。これらの症状が友人や家族等の周囲とトラブルの原因になります。
治療
①薬物療法
統合失調症の最も基本であり重要なのが薬物療法です。急性期症状を軽減しながら、症状が治まった後は再発を予防することを目的に行います。
抗精神薬には従来型抗精神薬(セレネース、インプロメン、フルメジン等)と非定形抗精神薬(リスパダール等)があります。非定形抗精神薬は従来型と比較すると副作用が少ない上に、複数の症状に効果があるため第一選択薬として推奨されています。しかし症状のモニタリングは不可欠でその時々の症状に応じた処方や調整が必要です。
②リハビリテーション・心理療法
症状が落ち着いたらリハビリと心理療法によるケアを開始します。在宅からケアをする場合は精神科の病院がやっているデイケアなどに通いながら、「SST」という社会生活を送る上で必要となる生活技能訓練というものを受けます。
他にも心の状態を安定させる為の精神療法や、家族の力で問題に向き合う家族療法も有効です。
予後
統合失調症は完治が容易でない病気です。再発と治療を繰り返しやすいことを知っておく必要があります。せっかく状態が落ち着いていても再発すればまた一からやり直しです。そういうことが多くなると、患者は自分の病気に立ち向かう気力が徐々に無くなっていく悪循環になります。
再発をする主な要因は薬物療法を止めてしまうことにあります。調子が良くなると多くの人が「もういいでしょう」となって薬を飲むのを止めてしまうのですが、これが再発の要因です。
そのため基本的な事は薬を続けながら、規則正しい生活を送り、他人とも関わりながらQOLを高めていけるような生活を継続することです。また病気の引き金になるような強いストレスを避ける事も大切になります。
まとめ
①統合失調症は100人に1人の割合で発症。家族に患者がいると発症率が10%と高くなる
②原因は不明だが、ドパミンなどの神経伝達物質が過剰になることで起きている
③症状は「陽性症状」「陰性症状」「認知障害」がある
④治療は薬物療法を基本にリハビリや心理療法を行う
⑤予後として再発を繰り返しやすい。継続的な薬物療法やQOLの向上が必要
次回は統合失調症のケアマネジメントポイントについて解説します。
参考書籍