少し前の記事ですが、4月23日の審議会で財務省が新たな提案を行ってきました。
ケアプランを作るプロセスで、複数の事業所のサービス内容と利用者負担の違いについて説明することをケアマネジャーに義務付けるべきだと主張した。
利用者が比較検討できる機会を必ず得られるようにすることが狙い。事業所どうしの競争がより活発になることでメリットが生じると見込んでいる。来月にもまとめる政府への提言に盛り込む方針だ。
居宅介護支援をめぐっては、2018年度の改定でも利用者に対する説明責任を重視したルールの厳格化が行われている。新たな契約を交わすにあたって、
○ 複数の事業所の紹介を求めることが可能であること
○ その事業所をケアプランに位置付けた理由を求めることが可能であること
の2点を伝えることが義務付けられ、これに違反するとペナルティで報酬が減算(運営基準減算)されることになった。
今回の財務省の提案は、さらにもう一歩踏み込んだ措置をとるよう注文するもの。「利用者側の求めによらずとも、複数の事業所のサービス内容と利用者負担について説明することを義務付けるべき」と訴えている。
引用:ケアマネタイムス
この点について、言いたいことがあるケアマネの人はたくさんいるはずです。僕もその一人ですが、今回はそもそもこんな事を義務付ける必要があるかどうかという点を考えてみたいと思います。
①そもそも義務化される前からケアマネがすでにやっている事
介護保険制度の基本理念に「自己決定の尊重」というものがあります。これにより、あくまで決定権は利用者自身にあり、ケアマネはその人が最善な自己決定ができるよう情報提供などの支援をすることになっています。
その為ニーズを聞いて、例えばデイサービスを利用するのが適切だと考えられるのであれば、複数の事業所の特徴や料金体系などの情報提供や説明は昔からやっていることです。その為、義務付けをすること自体が無意味です。
この義務付けには「どうせケアマネはそれをやってないんだろう」という財務省からのメッセージがハッキリと感じます。それに対して憤りを感じているケアマネの人が多いでしょうし、これまで真摯に仕事に向き合ってきた自分達への侮辱にも感じます。
このプロセスを丁寧に踏んでいれば「その事業所をケアプランに位置付けた理由を求めることが可能」という部分はそもそも必要ないはずです。何故なら利用者と一緒に作ったプランです。当然位置づけた理由は既に利用者自身が分かっているのですから不要なのです。
②必要な情報は「介護サービス情報公表システム」を活用すれば良いのでは?
財務省の狙いは「複数の事業所を比較検討する機会を作って、より安いサービスを利用者に選ばせる」これが目的です。
僕は質が高いサービスを受けるためには、相応の金額を支払うべきであり「安いサービス=良いサービス」ではないと考えています。その為安いが質の悪いサービスに誘導するような手法には反対です。
ただ、この質と料金の相関性を客観的に比較検討する為に存在するのが各都道府県で実施している「介護サービス情報公表システム」のはずです。
つまり、現在のICTが進歩し、誰でも必要な情報を簡単に入手できる時代になった事からケアマネに頼らずとも料金などの情報は簡単に知ることができるのです。ただ料金の部分などの情報は、もっと詳細に乗せるようにしたり、料金の昇降順に検索を並べ替えたり、口コミなどの情報とその評価レベルの公表も行う等、改善していく余地は多いのも事実です。
この情報公表システムがさらに使いやすいものになれば、利用者側から「自分で調べた結果このAとB2つの事業所がいいと思うのですが、ケアマネさんはどう思いますか?」と利用者側からアプローチしてくることも増えてくると思います。
その時僕達ケアマネが、システムにはないような情報を伝えたり、別の提案をしたりしながら最終的には一緒に決めていく形が良いと思います。つまり、事業所を決める時に一緒にスマホやタブレットで検索し、決定していくようなイメージです。
その為、僕達ケアマネだけに強い義務を課すのはおかしな話で、これをやるのであれば「国や都道府県、市町村は利用者が適切な事業所の選択ができるよう情報公表システムの改善、並びに普及を行う義務を果たさなければならない。義務を果たさない場合はペナルティを与える」くらいの文言を盛り込むべきではないでしょうか?
まとめ
財務省の複数事業所の利用者負担の説明をケアマネに義務化する点については
①すでにケアマネがやっている事を、義務化する意味はない
②「介護サービス情報公表システム」の活用と、もっと使いやすいシステムにすればそもそもケアマネに説明を義務化する必要は生じない
この2点から僕は必要性はないと考えます。何より義務化することで、「あのケアマネから説明を受けなかった」等と説明を受けたにも関わらず、クレーマー気質の利用者や家族から通報され、その結果罰則を受ける可能性があることを考えれば利用者の支援に萎縮してしまい、質の高い支援は困難になります。
そうなると、いちいちケアプランに新しい事業所を位置づける度に「説明を受けたことを証明する書類」にサインなどが必要になり、収入は増えないのにまた余計な業務負担が増加してしまう懸念があります。
本当にケアマネに質の高い仕事をしてもらいたいのであれば、このような縛り付けを強くするのではなく、ケアマネの業務負担の軽減策や報酬アップを国には検討してらもたいと思います。