少し古い記事ですが、このようなニュースがありました。
家族からのハラスメント、最も多いのはケア
一部抜粋して見てみると
7月26日の社会保障審議会介護保険部会で議題となったのは「介護人材の確保」。そのためには介護職員が長く働き続けられる労働条件や職場環境の整備が必須であるとし、対応方策を議論するために、日本介護支援専門員協会副会長の濱田委員など計25名の有識者が集まった。
介護人材の離職防止、定着促進の取組のひとつとして、今年3月に「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を作成。全国2,155事業所、1万人を超える職員への調査をもとに作成したもので、介護現場におけるハラスメントの定義や、事業所が具体的に取り組むべきことなどが明確にされた。
調査によると、ハラスメントを受けたことがある職員の割合が最も高いのは、家族等からの場合は居宅介護支援事業所の30%、利用者からの場合は介護老人福祉施設の71%となっている。居宅介護支援におけるハラスメントの内容としては、精神的暴力が最も多かった。
引用:ケアマネタイムス
この調査結果から、ケアマネが最もハラスメントを受ける相手は利用者の家族。そしてハラスメント内容で最も多かったのが精神的暴力ということです。
ケアマネが家族からどのようなハラスメントを受けているのか
実際どのようなハラスメントを受けているのか。僕の周囲にいるケアマネにも話を聞いた結果、こんな内容が多かったです。
・認定結果が更新の時に下がる(例:要介護3→要介護2)とケアマネのせいだと責められる
・必要もないのに、何度も電話を繰り返しかけてきて他の業務ができない。電話に出ないと「何故出ない」と怒られる
・現行の制度のルール上できないことを何度説明しても納得せず、自分の要求を無理やり押し通そうとしてくる
・女性の場合、セクハラと思われる言動を相手が行ってくる
他にもたくさんあり、全部挙げているとキリがないくらいです。僕もセクハラ以外は上記に挙げた事は経験しました。また個人的な事ですが僕は20代でケアマネになりました。その時よく家族等から言われたのが
「あなたみたいな若い男性に何ができるんですか?」
この言葉を言われる度にとても辛かったのを覚えています。そして当時何が辛いのかよく分かっていませんでした。しかし今は何故辛かったのか理解できます。それは
若い=年齢 男性=性別という個人の努力ではどうにもできない事を責められる
これです。僕自身がケアマネとしての能力が足りなくて、利用者や家族に十分な支援ができない事。努力が足りていないことを責められるのであれば、自分自身の頑張りで改善できる可能性があります。しかし年齢や性別に関する事を責められてもどうしようもありません。これは差別というハラスメントに該当するのかなと思います。
家族からのハラスメントにどう対応したらいいか
これはケアマネに限らないと思いますが、個人で対応しようとしないことです。
まずは職場にどのようなハラスメントを受けているのか相談しましょう。きちんとした事業所であれば、上司等の上位の立場にある人が、相手方と話し合いを行うことになります。
「そんな事して、相手がかえって逆上して余計に嫌がらせが強くなったらどうするんですか」
こんな心配をしてしまう気持ちは分かります。そこで、そうなった場合どう組織として対応するのかも確認しましょう。
多くの事業所が契約時に職員に対する嫌がらせなどの信用失墜行為を行った場合、契約解除になる可能性があると明記されています。(ただ説明していない事業所も多いかもしれません)今回注意喚起したにも関わらず再度同様の行為をした場合は契約解除になることを相手に伝えると効果が期待できます。
そこまで言ってしまうと、「そんな事言うんだったら、こっちから契約解除してやる」と言われるかもしれませんが、それを恐れる必要はないと思います。縁がなかったと思って支援契約を終了したので良いでしょう。きちんとした質の高い支援をしていれば、一時的に業績が下がっても必ずよいクライエントとまた契約ができます。それは僕自身も経験してきたことなので、間違いはないと思います。
職場がきちんとした対応をしない場合は外部の労働組合組織「ユニオン」に加入し、相談するのも一つの方法です。多くの職場内にある労働組合は実質の機能を失っていることがほとんどで、相手方との交渉などが期待できません。加入にかかるお金も少額な所が多いので活用してみるとよいでしょう。
これからは利用者や家族へのモラル教育も必要
介護保険制度が始まってもうすぐ20年です。そして我々ケアマネは利用者や家族の為にも日々粘り強く、苦労をしながら支援を行ってきました。
しかし、そろそろ利用する側が一方的に有利な状況を改めるべき時が来たように思います。
つまり、これまでは何か不利益なことがあると全てケアマネやサービス事業者が悪いとされてくることが多かったのが介護保険事業の実態です。しかし、その内容を見ていくと利用する側の利用者や家族に、制度を正しく利用するモラルが欠けていることもあります。
「自分は客だ。客は神様なのだから、どんな要求をしてもいいだろう」
「あのケアマネは全く私の言うとおりにしてくれない。もうクビにしようかしら」
僕達ケアマネは、このような言動に対しても「なぜそのような言動をするのか」という背景を真摯に考え、信頼関係を築けるように関わりながらアセスメントを繰り返しやっています。そのような横暴な態度に対しても受容しつつ、適切な支援に結びつける方法を日々模索しているのです。
そして、場合によってはそのような言動をさせてしまうのは自分自身がケアマネとして能力不足だからと、自分を責めてしまう心優しい真面目な人もいます。そして残念な事に、そのような人がケアマネを辞めていった現実も僕はたくさん見てきました。
本来クライエントである利用者や家族とケアマネは立場は対等です。その為お互いの信頼関係を築く義務は双方にあり、決してケアマネだけにあるわけではありません。利用する側にも「頑張ってケアマネと信頼関係を築こう」という意識が必要です。
その為には、行政なども協力して介護保険のパンフレットと一緒に「ケアマネとの付き合い方」などのパンフレットも作って渡すなど啓発活動も必要と思います。
まとめ
今回はケアマネが利用者の家族から受けているハラスメントについて書いてみました。このような情報発信を機にケアマネの権利や人権が守られるになれば、それはとても良いことです。
一方、ケアマネが権利意識が強くなりすぎて利用者や家族に対して「そのような態度であるなら、ハラスメント認定を申請して契約解除の可能性もある」みたいな脅し行為で相手をコントロールすることがないような制度設計は必要です。
利用者も、家族も、ケアマネも。皆が気持ちよく付き合えるような、そんな時代になってもらいたいですね。