「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」について解説

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「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」について解説 社会資源

この記事はこんな人の役に立ちます

認知症などで、意思決定が自分でできない人に対しては家族の意向が中心になっている。
それではダメな事は分かっているけど、どのようにすればいいのか分からなくて困っている。
ケアマネジャーとして一番大事な事、それは
「本人の意思決定を最大限尊重し、本人の意向を反映したケアプランを作る事」
しかし現実はどうでしょう?僕も含めてですが、本人の意向をちゃんと尊重し、ケアプランを作っていると胸を張って言えるケアマネは少ないのではないでしょうか?
その最大の理由が
高齢で認知症等により、自分で意思決定できなくなった人に対してどう支援していいか分からない
これです。だからこそ一番手軽なキーパーソンである家族に尋ねて、本人の代わりに決めてもらう。
その結果、本人ではなく家族の意向100%のプランの出来上がり。
しかし、そんな状況が良いわけありません。でもどうしていいか分からない。
そんな状況を変える為の参考になりそうなガイドラインが2020年に作られました。それがコチラ
このガイドライン(以下「意思決定ガイドライン」)は本人の意思決定のサポートの仕方が分からないケアマネにも大変参考になる内容になっています。しかし内容がなかなか分かり辛いものになっています。
そこでこの記事では、このガイドラインについて重要なポイントをギュッとまとめて解説していきます。

意思決定ガイドラインの基本的な考え方

意思決定ガイドラインの基本的な考え方

まずは意思決定ガイドラインの基本的な考え方がコチラです。
①意思決定支援は後見人等が単独で行うものではなくチームで行うという前提に立っていること
②後見人の役割はチーム編成やチーム機能のチェック等が主であり常に後見人が意思決定支援の主導的・中心的立場にあるわけではないこと
③何人であっても意思決定能力は「ある」という前提に立っており、結果的に意思確認ができない場合でもそれは本人の能力の限界というよりは、意思を引き出す支援者(後見人等の含まれる)側の限界ととらえていること
④代行決定は本人の意思がどうしても引き出せずまた意思推定すらできない場合の最後の手段であること
⑤代行決定を行う場面でも本人にとっての利益を最大限に考えること
※福祉職だけでなく、法律の専門家など、多様な専門職による連携
これでもちょっと分かりにくいですよね。端的に表現すればこうです。
・本人の意思決定はチームでサポートする
・本人の意思決定の支援は、本人に決定する能力がある前提で行う
・本人以外の第三者による代行決定は最終手段
これまではケアマネがアセスメントして、本人に意思決定できるかどうか判断。難しい場合は家族へ相談したり、成年後見制度などの社会資源に繋ぐなどのサポートを行っていました。
しかしこのガイドラインでは、このようなやり方は明確に否定されています。
「意思決定ができない場合は、法律の専門職も含めたチームでサポートする」
これが新しい考え方です。これまでのように安易に第3者に代行決定を依頼するのではなく、本人が自らの意思で自分の事を自分で決められる事を最大限サポートする。
それがこのガイドラインで示されました。

5つのアセスメントシートを使って、本人の意思決定をサポートする

5つのアセスメントシートを使って、本人の意思決定をサポートする

そうは言っても、具体的にどうやってサポートするの?

 

意思決定をチームでサポートする事は分かっても、その具体的なやり方が分からなければ実行できません。

 

そこでこのガイドラインでは、本人の意思決定をより具体的な中身に落とし込む為のツールとして、独自のアセスメントシートが提供されています。それがコチラです。

【様式1】個別課題発生時における意思決定支援のためのアセスメントシート

【様式2】個別課題発生時における意思決定能力のアセスメントシート

【様式3】意思推定に基づく代行決定に関するアセスメントシート

【様式4】本人にとって見過ごすことができない重大な影響に関するアセスメントシート

【様式5】本人にとっての最善の利益に基づく代行決定に関するアセスメントシート

これらのアセスメントシートを使う事で、このような意思決定の為に必要な具体的な中身が明確になってきます。

・どのような環境条件であれば、本人が安心して意思決定が可能になるのか?
・支援チームメンバーのそれぞれ担当する役割
・本人の具体的な意向や希望
・本人が可能な事と、サポートを必要とする事の整理
・第3者が代行決定する場合、選択肢のメリット・デメリットをチームで共有できる
このアセスメントシートですが、本人の意思決定をサポートするのに必要な内容がつまっています。
普段自分達が使っているアセスメントシートをバージンアップさせるのにも、参考資料としても使えそうです。

ケアマネとして何をしていく必要があるのか?

ケアマネとして何をしていく必要があるのか?

意思決定ガイドラインを読み込みんだ後、ケアマネとしてどのように支援に生かしていけば良いのでしょうか?

僕は以下のような事からまず取り組む必要があると考えました。

・本人の事は本人が自分で決めるという、原点に立ち返る
・本人だけでは十分に意思決定できない場合、どういった支援が必要なのか、アセスメントを深め、チームで検討していく
・本人が意思決定が難しく、第3者の代行決定になる場合も、安易に家族などに決めてもらうのではなく、本人の意思を丁寧に汲み取る努力を怠らない
僕はこの意思決定ガイドラインを読んだ後、今まで十分に本人の意思決定を支援できていなかったと深く反省しました。
高齢者は認知症などで、自分で十分に意思決定できない人が多いです。
そうでなくとも、精神的な廃用の進行等から「特にないです」「何でもいいです」のような意思表示しかできない人も多く、そのような場合は家族に代わりに本人の意向を確認して、それをケアプランに反映させることが多かったです。
その結果、振り返ってみると本人より家族の意向が反映されたケアプランの方が多くなってきました。
「一体誰の為のケアプランを自分は作っているんだ・・・」
忙しい事を理由に、意思決定が難しそうな人は安易な対応になっていました。しかしそれは本当の支援ではありません。
とは言え、現実的にいきなり大きく方法を変える事も難しいです。
まずは自分自身のマインドを変え、本人の意思決定をチームでサポートしていく。その大切さをチームのメンバー含めた周囲に伝えていく。そういったできる事から少しずつ始める必要があると思います。

まとめ

意思決定ガイドラインのポイント

・本人の意思決定はチームでサポートする
・本人の意思決定の支援は、本人に決定する能力がある前提で行う
・本人以外の第三者による代行決定は最終手段
・具体的なサポートについては、ガイドラインの5つのアセスメントシートを活用する
当たり前の事ですが、本人の事は本人が決める。
それが難しいなら福祉や法律の専門家を含めたチームでサポートする。
そんな当たり前の事を当たり前にやっていく。その為に必要な事が意思決定ガイドラインには書かれていました。
まずは内容を軽く読んでいただき、少しでもできそうなことから始める人が増える事を願っています。

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