この記事はこんな人の役に立ちます
ケアマネとして介護と仕事の両立を支援する必要があるのは分かっている。
でも、何をどうしたらいいのか分からなくて困っている
「介護と仕事の両立」
昔から在宅で介護をしている人にとって永遠のテーマであり、大きな課題でもあります。
僕達ケアマネは、介護と仕事が両立できるよう昔からケアプランを作って支援してきました。
ただ、このテーマはここ最近さらに必要性が高くなっています。それは厚労省が「介護と仕事の両立」というテーマを、ケアマネの研修に組み込むなどからも分かります。
しかし、そうは言っても何をどうすればいいのか分からないと支援できないですよね。
そこで知っておきたいのが「介護休業制度」
この制度に介護者を繋げ、安心して仕事を休んでもらう体制を作る。それが僕達ケアマネがやるべき事です。
今回は安心して介護をしながらでも、安心して仕事を続けるための介護休業制度について紹介します。
介護休業制度とは?

その名の通り、介護を理由に仕事を休む為の制度です。特に覚えておきたいメニューが「介護休業」と「介護休暇」の二つです。
①介護休業
労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護する目的で、仕事を一定期間休める制度です。
介護休業における「要介護状態」とは?
当たり前ですが、対象家族が「要介護状態」と認められなければ申請はできません。では、具体的にどのような状態をもってして要介護状態と認められるのでしょうか?その判断基準となる資料がコチラです。

引用:厚生労働省「育児・介護ガイドブック」「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」より
一番分かりやすいのが、「要介護2」以上の認定を受けているという事です。
しかし介護度が要介護2より下だとしても、介護の手間が必要な人はたくさんいます。
そういった人達は上記の資料を参考に、対象にならないか確認してみましょう。
ただこの資料の内容ですが、基本的に要介護認定の判断基準とほぼ同じです。
その為直近の認定調査の結果を確認し、どの程度該当する状態があるか提示するとスムーズだと思います。
そして利用者の状態にもよりますが、区分変更申請をして要介護2以上の認定を取るほうがいい場合は区分変更申請を行うのが一番確実です。
対象となる家族
介護休業制度の対象家族がコチラです。
・配偶者 (事実婚を含む)
・父母
・子
・配偶者の父母
・祖父母
・兄弟姉妹
・孫
介護の対象で多いのが、自分の親や義理の親。配偶者や兄弟姉妹といったところですが、自分の子どもや祖父母、孫に対しても認められており、結構対象範囲が広いです。
どのくらい休めるの?
対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。
例えば一気に93日取得してもいいし、今回は30日だけ取得した後、違う時期にまた30日取得する等の方法も可能です。
正社員以外は利用できないのか?
このような福利厚生の制度は正社員以外では利用できない、もしくは制限があるものも多くあります。では介護休業制度に関してはどうなのでしょうか?
結論を先に言えば、正社員以外でも利用は可能です。ただし条件があります。それがコチラ
・日雇い労働者でない事
・取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
まず正社員なのか、それともパートやアルバイトなどの非正規かかなどの雇用形態は問わず、日雇い契約以外の従業員は利用が可能です。
問題は2つ目。これは例えば1年契約など、契約期間に定めがある場合の従業員に適用されるルールです。
例を挙げてみましょう
・1年契約のAさん。年度替わりに毎回更新しており、契約期間は4/1~翌年3/31
・8/1~93日介護休業したい(11/1まで休む事になる)
・介護休業取得して復帰した後も、契約を更新する予定がある
・半年契約のBさん。契約期間は3/1~8/31
・8/1~93日介護休業したい(11/1まで休む事になる)
・介護休業取得後に、契約を更新して職場に復帰する予定がない
なぜAさんは良くて、Bさんはダメなのか?それはこの制度があくまで仕事を辞めずに働きながら介護を続ける人をサポートする為の制度だからです。
Bさんの場合、介護休業制度取得後に職場に復帰しないのが明らかです。また仮に復職する場合でも取得日からカウントして6ヶ月以内に離職する事が明らかな場合も使う事ができません。(逆に言えば、取得日からカウントして6ヶ月以上継続的に働き続ける事が確定していれば使用できます)
この縛りに該当しなければ誰でも利用ができますが、会社が労使協定を結んでいる場合に以下の労働者に対して介護休業制度を使えないようにすることができます。
- 入社1年未満の労働者
- 申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
この辺りのルールは会社によって異なる為、一度就業規則を確認するか、よく分からない場合は会社の人事課などに確認してみましょう。
介護休業中のお給料はどうなるの?
介護休業中に仕事を休んでいる間、給料は会社側に支払う義務はありません。
そうですよね。幾ら最大93日、つまり約3ヶ月休めるといっても、その間収入が途絶えるのでは安心して休む事はできません。
その期間は会社からの給料の支払いはありませんが、雇用保険から介護休業給付金という形でお金を受け取る事ができます。その金額がコチラ
ザックリですが、休業する前の自分の給料を日当計算して、1日あたりの金額の67%がもらえる計算です。
例えばですが月25万円の給料をもらっている人が30日休んだ場合はこのようになります。
8300(1日あたりの給料額)×30×0.67=約167、000円
ただしこれはあくまでも簡単な計算です。実際には給付上限もあるうえ、他の給付や給料が一部支払われる場合など、その人の状況によって異なる為、詳しい金額が知りたい場合は最寄りのハローワークに一度確認してみるのが良いでしょう。
またこの介護休業給付金、留意しておきたいポイントがあります。
・給付金をもらえるのは、介護休業が終わった後申請してから
・対象となる、被介護者1人につき1回
お金をもらえるのは、あくまでも休業期間が終わって申請してからになります。
つまり休んでいる間にはお金は入ってこないのです。その為3ヶ月休む場合は、最低でも3ヶ月分の給料に相当する貯金がないと厳しいという事です。
また給付金は、被介護者1人につき1回です。これは介護休業制度が一人につき最大93日までしか使えないルールとリンクしてます。
逆に言えば、父親で介護休業して給付金を受け取った後、今度は母親の介護もする事になった。その時は母親の介護休業という事で再度休み&給付金をもらう事ができます。
また最大93日を分割して使う事もできる為、給付金も同じように93日の範囲で分割して受け取る事もできるので覚えておきましょう。
利用までの手続きについて
介護休業を取得したい場合は、働いている会社に対して介護休業をする2週間前までに書類を提出する必要があります。一般的には「介護休業申請書」等の書類が必要です。
会社によっては対象家族が本当に要介護状態なのかどうか証明する為の書類(健康診断書、介護保険被保険者証など)が求められる場合があります。
また介護休業給付金の申請をする場合は、以下のような書類の提出が必要になります。
- 被保険者が事業主に提出した介護休業申出書
- 介護対象家族の方の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類(住民票記載事項証明書等)
- 介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類
- 介護休業期間中に介護休業期間を対象として支払われた賃金が確認できる書類(賃金台帳等)
②介護休暇
介護休暇制度と、介護休業制度の一番の違いは休める期間です。
介護休業は比較的長期間休みが必要な場合を想定していますが、介護休暇に関しては1日や半日単位など、ちょっとした用事で休みが必要な場合を想定しています。
休みが取れる期間
・対象家族が1人の場合は、年5日まで
・対象家族が2人以上の場合は、年10日まで(3人以上いても10日まで)
・1日または時間単位で取得可能
※時間単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者について、時間単位での取得を除外する労使協定を締結している場合、対象の労働者は1日単位でのみ取得可能。
介護休業と比較すると、取得できる期間が短い事が分かります。
使用が想定される状況としては以下のようなものが考えられます。
・病院受診の付き添い
・担当者会議などの出席が必要
・平日休めない人が、役所などの手続きに行かなければならない
どんな人が利用できるのか?
介護休業と同じように、正社員でなくても利用ができます。ただし以下の条件に該当する人は労使協定で対象外にすることができるとされてます。
・入社6ヶ月未満
・1週間の所定労働日数が2日以下
入社したばかりの新人、もしくは新人じゃないけど週2日以下しか出勤しない人は使えないという事です。
ただし1日の勤務時間の制約などは無いので、例えば1日3時間など短時間しか働かなくても、週3日以上出勤するようなら使えるという事になります。
利用する為の手続きについて
介護休暇も介護休業同様、書類などの提出が必要と思いがちです。
しかし介護休暇のほうは緩めで、取得する当日の申請。何なら口頭での申し出であっても、法律上はOKとなっています。
これは介護休暇の性質上、病院の受診など突発的な介護への対応に使用する事が想定されている為と思われます。
ただし、就業規則などで介護休暇であっても、書類の提出や申し出の期限なども定められている場合もあるため、会社の社内規定の内容などを確認する必要があります。
休暇を取った場合のお給料はどうなるのか?
介護休業同様、介護休暇も取得した場合は会社側に給料を支払う義務はありません。
では、介護休業同様、雇用保険などから支払いがあるのか?その答えは「制度での支払いも無し」です。
つまり、介護休暇を取得した場合、単純に休んで分だけお給料は少なくなります。
ただ会社によっては、福利厚生の一環で支払いが行われる可能性があるため、こちらもそのようなサポートが無いのか確認してみるのが良いでしょう。
③短時間勤務などの措置
会社は介護休業を申し出た従業員に対して、介護を必要とする期間や回数に配慮して適切な対応が求められています。そのため、介護休業とは別に以下の内容のいずれか1つ以上の制度を設ける必要があります。
- 所定労働の短縮(短時間勤務)
- フレックスタイム制度
- 始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ
- 介護サービス費用の助成など
対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上利用できるようにすることが義務付けられており、会社側はこれを守れなければならないようになっています。
④残業などの長時間勤務の制限
家族を介護する従業員から申し出があった場合、会社は以下の取り組みをしなければならない事になっています。
・所定外労働の制限
・時間外労働の制限
・深夜業の制限
簡単に言えば残業や休日出勤、または夜勤などの労働をさせてはいけないという事です。(ただし「事業の正常な運営を妨げる場合を除き、させてはならない」という条件はあります)
要介護状態の対象家族がいる従業員は、介護終了までの間は何度でも時間外労働や深夜労働の制限を請求することができます。つまり、介護が終わるまでの間、実質これらの労働を免除してもらえるという事です。
まとめ
介護休業制度の内容
①介護休業制度
(対象家族一人につき、93日まで休む事ができる)
②介護休暇制度
(対象家族一人につき年5日、二人以上の場合は年10日休める。時間単位での取得も可能
③短時間勤務などの措置
④残業などの長時間勤務の制限
この介護休業制度、実際にどのように使うのが良いのか?
例えば一人暮らしの利用者が突然入院しなければいけなくなり、今後は在宅での一人暮らしは困難になった。キーパーソンの長女は県外にいる為、今後の生活をどうするか決めなければいけない。
このような場合は、介護休業制度を利用。ある程度まとまった期間休みを取る事で、家族としても必要な対応が行いやすくなります。
逆に病院受診の付き添いや、カンファレンスへの参加、役所への手続きなど、ちょっとした介護に関する用事の時には介護休暇を利用するのが良いでしょう。
ただ、これらの制度は休みを取得した分だけ収入が多少下がる事になります。介護休業制度にしても、支払いが休業後になるうえ、金額も70%以下など厳しい印象があります。
誰もが気軽に使える制度ではなく、まだ課題も多い印象があります。それでも人によっては十分選択肢になると考えられます。まずはケアマネが制度への理解を深め、情報提供できるようにはしておきたいですね。
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