今月15日、厚労省から居宅の管理者を主任ケアマネとする要件を延長する方針を発表した。
経過措置の延長は、2021年3月31日の時点で主任ケアマネ以外が管理者を担っている事業所のみが対象。その管理者が管理者を担い続けていく場合に限り、2026年度まで6年間にわたって厳格化が猶予される。
厚労省提案資料抜粋
「令和3年3月31日時点で主任ケアマネジャーでない者が管理者の事業所は、当該管理者が管理者である限り、管理者が主任ケアマネジャーとする要件の適用を令和9年3月31日まで猶予することとしてはどうか。結果として、令和3年4月1日以降に新たに管理者となる者は、いずれの事業所であっても主任ケアマネジャーであることが求められることとなる」老健局の担当者は延長を6年間としたことについて、「2020年度から新たに管理者となった人でも、5年間の実務経験を積んで主任ケアマネ研修を受けられる期間を確保するため」と説明した。
厚労省は今回、どうしてもやむを得ない理由で主任ケアマネを配置できない事業所への救済措置を用意する意向も示した。その理由と「改善計画書」を届け出ることを条件として、1年間だけ厳格化を猶予する決まりを新たに設けてはどうかという。
厚労省が提案した具体策の文言は以下の通り。「猶予期間が1年間では短い」との不満の声が出たため、ここは修正される可能性が残った。
厚労省提案資料抜粋
「令和3年4月1日以降、不測の事態により、主任ケアマネジャーを管理者とできなくなってしまった事業所については、当該事業所がその理由と「改善計画書(仮称)」を保険者に届け出た場合は、管理者が主任ケアマネジャーとする要件の適用を1年間猶予することとしてはどうか」
上記の「不測の事態」の解釈について、厚労省は主任ケアマネが急に辞めてしまった場合などを想定している。老健局の担当者は、来年以降に通知やQ&Aなどでできるだけ明確にしたいと話した。
厚労省はこのほか、「特別地域居宅介護支援加算」、あるいは「中山間地域等における小規模事業所加算」を取得している事業所に限り、主任ケアマネではない管理者を特に期限なく認めていく案も示した。
引用:JOINT 介護のニュースサイトより
ちょっとまとめるとこんな感じの内容です。
・管理者要件を2021年4月1日から、2026年度の最大6年まで延期を認める。ただし、この要件は現在管理者の人間が辞めずに仕事を続け、将来的に主任ケアマネを取得することが見込める場合
・その理由は2020年度から新米ケアマネが一人ケアマネ&管理者になってしまう場合等を想定
・2021年4月1日以降、新たに管理者になる人間に関しては主任ケアマネであることが必要。ただし急に主任ケアマネが辞めてしまった場合など「不測の事態」が発生した時は、改善計画書を保険者に提出することで1年の猶予を設ける。(1年という期間は変更になる可能性あり)
・「特別地域居宅介護支援加算」「中山間地域等における小規模事業所加算」などを取得している田舎の僻地で事業をしている事業所に関しては、そもそも管理者が無期限に主任ケアマネでなくても良いという特例(現時点ではそうなるかは未定)
基本的には「2021年4月からは、管理者は主任ケアマネだ」というスタンスに変わりはありませんが、理論的にどうしても間に合わない場合は、主任ケアマネが取得できる期限までは猶予を認める。
また2021年4月以降でも、主任ケアマネが急に辞めたりして代わりの人材がすぐ見つからない場合も1年くらいは大目にみてあげますよ、というのが今回の内容です。
これで実際2021年4月までに、現任の管理者がどう頑張っても主任ケアマネの取得が困難だった事業所は時間的猶予はできました。
ただし、その人が本当に主任ケアマネを取得するまで頑張って働き続けてくれるかどうかは分かりません。急に「もう無理です。辞めさせてください」と言い出す可能性はあるため、そうなった時に大きく計画が狂うことになります。
比較的大規模の居宅事業所で主任ケアマネが複数いる所であれば、その辺りのリスクヘッジができますが、小規模の所だと厳しい事が予想されます。
今後予想されるのは、今よりも主任ケアマネの研修規模を拡大し、なるべく大勢の人が受講して主任ケアマネになれるような動きが加速すると思います。そうなると結果的にどの事業所も上記のリスクヘッジ目的で「5年以上の実務経験者は全員受けさせる」というのがスタンダードになる可能性があります。
そうなった場合、結果的に名ばかり管理職ならぬ「名ばかり主任ケアマネ」が大量生産されて、「主任ケアマネ=5年以上のケアマネ実務経験があることを証明するだけの資格」に成り下がるかもしれません。
今後厚労省等が考えなければいけないのは、研修の規模の拡大もしつつ、いかにして主任ケアマネの質を担保していくかということです。しかし、現状でそれができるかどうかは個人的には疑問が残ります。
今後この件は動向を引き続き見守っていこうと思います。