先日21日に厚労省がパワハラに該当しない事例というのを示しました。
厚生労働省は21日、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)を防止するために企業に求める指針の素案を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に示した。パワハラの定義や該当する場合・しない場合の例などを示したが、委員からは疑問や指摘が相次ぎ、日本労働弁護団は「パワハラの定義を矮小(わいしょう)化している」と抜本的修正を求める声明を出した。
20年4月から大企業に適用されるパワハラ防止関連法では、職場におけるパワハラを(1)優越的な関係を背景とした言動で(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより(3)労働者の就業環境が害されるもの――と定義し、企業に対策を求める。厚労省の指針はこれを踏まえ、職場での判断基準を示すのが目的だ。
審議では委員から「パワハラ認定するための定義が狭いのではないか」といった指摘や、定義への疑問の声が相次いだ。
日本労働弁護団は同日記者会見し、素案の抜本的修正を求める声明を発表した。「実効的なパワハラ防止策となっていないばかりか、むしろパワハラの範囲を矮小化し、労働者の救済を阻害する」などと主張した。
引用元:日本経済新聞
そして今回厚労省が発表したパワハラに該当しない例がこれです。
僕達ケアマネジャーも人によって違いはあると思いますが、管理者の人であれば部下や後輩の指導。また部署の垣根を超えて、新卒や中途採用の新人などに対しても業務上の教育や指導をしている人もいるでしょう。
そうでなくても、居宅のケアマネなどは、サービス事業所にとっては未だに「利用者さんを紹介してくれるお得意さん」のように捉えている事業所は多くあります。そうなると相手にとって「自分達より優越的な立場にある」と映っていれば、その言動次第ではパワハラされたと相手が捉える可能性もあります。
つまり、このパワハラ含めて、全てのハラスメント問題にケアマネだからといって無関係ではなく、いつでも自分が加害者にも被害者にもなる可能性はあると認識することが重要です。
さて、今回の厚労省の発表ですが、こんなものをわざわざ国が示す必要があったのかどうかが疑問です。
普通に素直に捉えれば、どれも該当しないのは当たり前の内容です。しかし、一方でどれも曖昧な定義になっていることが問題です。この発表はパワハラ被害者を救済したり予防するよりも、これをブラック企業などが逆手にとって、この内容を根拠に「パワハラに該当しない」と主張することのほうが遥かに考えられる可能性であり問題だと思います。
厚労省の狙いは、具体的な線引きを示す事でパワハラなのかどうか白黒つける基準を設けたかったのだと思います。しかしここがタイトルでも示した根本的な勘違いです。
パワハラに限らずハラスメントというのは「相手がハラスメントだと感じれば、それはハラスメントである」という事です。
「そんな事言われたら、部下や後輩に何も言えないじゃないか」と主張する人がいますが、これもよくある勘違いです。
部下や後輩等、必要な相手に時に厳しい指導や教育は必要です。しかし、それを行う前に相手との信頼関係がきちんと築かれているかどうかが大事なのです。
皆さんも全くリスペクトもできない、信頼関係もほぼ0の上司に「なんでこんな事をしたんだ。なぜ事前に相談や報告をしなかった」等と叱責されたらどうでしょう。
上司の指導に心から反省し、次の仕事にこの失敗を活かそう。厳しい指導をしてくれた上司に感謝の気持ちを抱いたりしますか?恐らく全く違いますよね。
大抵は怖くて何も言えず、ただ相手の説教が終わるのを待っている。或いは心の中で「あんたに相談しても何もしてくれないだろう」と相手へのイライラや怒りの感情を感じるのではないでしょうか?
逆に普段からコミュニケーションが取れていて、信頼関係が築けている場合は厳しい指導をしたとしても相手はそれをハラスメントだと捉えたりしません。
ただし指導する時の注意点があります。それは端的に、「何がいけなかったのか」を相手に伝え、自分が感情的にならずに指導することです。その為自分が怒りで冷静でない時は、少し冷静になってから時間をとり、他の第3者がいない場所で必要な指導を行うことです。
指導が終わった後には必ず「厳しい事を言ったけど、君に期待しているんだ。次は頼むよ」と相手を自分もリスペクトしている事を伝えましょう。終わりよければ全てよしではないですが、最後このような一言があるかないかだけで、相手の印象が大きく変わります。
つまりハラスメントにならないためには
相手へのリスペクトを常に持つ事
常日頃から信頼関係を築く事
指導する時は感情的にならず、端的に相手に必要なことを伝える
これができていれば、相手が「○○さんにパワハラされた」と訴えられることはないです。
厚労省にはこんな無意味な例を示すのではなく、パワハラにならない為に何が必要なのかといった事を示してほしいものです。