多くのケアマネを悩ませる業務に「サービス担当者会議」の開催があります。
この担当者会議が苦手な理由は
・どうやって進行したらいいのか分からない
・どんな事を話し合ったらいいのか分からない
上記のような悩みがあると思います。そして、ほとんどの悩みはタイトルにもある「○○」がはっきりしていないからなんです。それは
「目的」です
この目的がはっきりせず、なんとなく介護保険の更新だから、区分変更したからみたいな理由だけでやっていると、参加者から「これ何の会議なの??」ってなります。
なので、今回の記事では担当者会議を何の為にやるのか。どうやって上手く進行させたらいいのかを紹介します。
何のためにやるのか?
担当者会議の目的は「情報を共有し、他職種共同で援助している実感を持つ」というものがあります。具体的に言うと
①:どのような状態像を目指していくのかというイメージ
②:今後予測されるリスク
上記のような内容をテーマに話していくのが基本になる。
開催が義務化されているタイミング
①新規 ②更新 ③区分変更
上記3つの介護保険の要介護度が変わるタイミングは義務化されているが、その他にも状態の変化や目標の見直し時などに行います。
担当者会議の開催手順
日時の調整、決定
基本的には関係者全員に参加してもらえるように呼びかける。しかし関係者が多い場合全員が都合のつく日がなかなか決まらないこともあります。
その場合担当者会議の課題によって誰を優先的に参加してほしいかをハッキリさせ、その日時を中心に調整を行います。尚参加可能予定は一つではなく複数提示してもらったほうが調整はしやすいです。
医師の参加は難しい場合が多いため現実には意見照会になりやすいです。ただ参加してもらいやすい方法として訪問診療の時間に合わせる、病院の会議室で開催するなどがあります。この辺りは医師の性格にもよる為、考慮しながら参加を依頼しましょう。
場所の選択
ルール上利用者の自宅で開催しなければならないというものはないが、大きく分ければ下記の3つが考えられる
①利用者宅
最も開催頻度の多い場所。実際の支援、生活拠点である自宅で行うメリットとして例えばあまり自宅に訪れる機会の少ない担当者に実際に自宅の様子を直接見てもらうことで具体的な住環境改善などのイメージが共有しやすくなります。
また利用者、家族が他の場所と比較するとあまり緊張する事なく発言がしやすいのも特徴です。
一方で参加者の駐車スペースの確保が困難であったり、自宅が狭い場合は会議に十分なスペースが確保できない。また利用者、家族によってはあまり信頼関係が出来ていない人が家に入って来る事に抵抗がある人も居るため配慮が必要になります。
②サービス事業所
事業所にもよるが家が狭い人等は会議室など十分なスペースがある事業所で開催する事も選択肢になります。
メリットとしてサービス提供日に開催することで普段なかなか見られない利用者の運動の様子など見ることができる、駐車場の問題もない、等です。
注意点としてサービス提供日に開催する場合で利用者が参加する場合は時間帯によってはサービス提供が認められず、実績に影響が出る様な場合がある為あらかじめ確認してから行いましょう。
③病院、診療所
ここで開催する最大のメリットは医師の参加が確実に得られるということです。(事前にアポをとって了解を得ていることを前提)
一方で開催日時が医師の都合による為、かなり限定的な事と、ケースによっては利用者、家族が医師に気を遣いすぎてしまい自分の本音を喋れない状況も考えられます。
事前準備
できるだけ当日の担当者会議の開催目的、テーマをはっきりさせる為にも何について話しあうのか、テーマを相手に伝えるよう電話やFAXで伝えておくとよいでしょう。
特にメインで意見を述べてほしい担当者には「当日○○のことについて意見を述べてほしい為まとめておいてほしい」など事前の根回しを行うのが大事です。
準備資料
・ケアプラン原案
・当日用レジュメ
(以下必要に応じて)
・個別援助計画書
・主治医意見書
・服薬説明書
・(事前に本人、家族から了解を得ること前提に)リハビリしている写真や映像など
当日の会議運営
時間
開催時間は厳守。(自分が提示した日時なのだからある意味当然)自分が一番最初に来るくらいのつもりで10分前には開催場所に到着したいところです。
また会議を行う時間もあらかじめ時間配分を考えておきましょう。
雰囲気作り
会議が成功するにはその場の雰囲気作りが重要です。担当者会議にあまり慣れていない新規の利用者、家族などはそもそもこれから何が行われるのかもよく分からずとても緊張しています。
会議の開始前に天気や季節に関連した話し、世論、利用者に関心のある物事などを話題にし参加者がある程度リラックスした雰囲気が作れるようにすることも大事です。
その為にもケアマネジャーがあまり緊張しすぎると雰囲気も堅いものになってしまいやすいのです。経験が浅いうちはスーパーバイザー的立場のケアマネに一緒に参加してもらうなど工夫してみましょう。
司会、書記役
担当者会議運営中にケアマネジャーに求められるのが会議の司会役。しかしそれと同時に後で会議録も作成しなければならない為、書記としての業務も行う必要があります。
司会をしながら書記もできるのなら良いが、難しい場合は誰かオブザーバーの形で書記役に入ってもらうと司会進行に専念できます。
担当者会議の進行
①開催宣言と予定終了時刻の周知
まず初めに参加者全員に担当者会議に参加してくれた事に対して謝辞を述べます。(例:本日はお忙しいなかお集まりいただきありがとうございます。等)
その後会議の予定終了時刻を告げ、予定時間内に終了できるように参加者に協力を求めます。その為にも会議の時刻はあらかじめ参加者に伝えておきましょう。
②参加者の紹介
何度も同じメンバーで開催しており互いに面識がある場合はこの手順は飛ばしても構いません。そうではなく新規でほとんどお互いに面識のない場合、或いは新しく導入するサービスがある場合その担当者は他の担当者と面識がない為紹介をします。
紹介は自己紹介でもケアマネジャーが紹介しても構わないと思います。
紹介の順番としてはまず司会のケアマネジャーが自己紹介(本日司会進行役を務めさせていただく○○さんの担当ケアマネジャーの△△です。等)をし、次に利用者、家族、その後サービス担当者の順番で進めるのが一般的です。
③開催の目的をハッキリ伝える
更新、新規、区分変更、新しいサービスの導入・・・等様々な理由があると思われる。それを簡潔に伝える
④現状と課題(問題点:議論してもらいたい点)を簡単に紹介
できれば上記の内容をA4のレジュメ1枚にまとめておく。会議録に検討内容まで書いて配布しても良いでしょう。
(例)
・「○○さんは最近・・・でご家族の負担が増えている。また・・・が理由で転倒のリスクがある」
・「○○さんの今後の課題として・・・などがあると思います」
・「その点を踏まえて皆様のご意見を伺いたいと思います」
⑤順番を踏まえた発言を促す
基本は利用者→家族→サービス担当者の順に発言を促していく。支援の主役は利用者本人、準主役は家族である為ある程度希望や考えを好きに言ってもらってください。
限られた時間の中でその自由な発言が実は今までサービス担当者が気がつかなかったその人の一面を知る事になり結果としてよりより支援が出来る可能性が高くなります。
利用者、家族の意見をもとにサービス担当者に現在の状態、今後予測されるリスクや対策について専門的な視点から議論してもらい結論へとつないでいきます。
尚医師が参加する場合は新規の時は一番最初に今の病状と今後の予後、予測を説明してもらいます。その情報を前提に話を進めると実際的なケアの方法がまとまりやすいです。
しかし一方で医師の発言は利用者を含め全ての参加者に与える影響が大きい。つまり医師の意見に反する発言ができなくなる可能性が高いです。それらの事も考慮しながら新規の時以外は逆に一番最後に発言してもらうほうがより活発な議論になりやすいので、ケースバイケースで柔軟に対応しましょう。
⑥時間があれば④、⑤について発言を促す
具体的なケアの方法(例:いつどのような福祉用具を利用するか、排泄介助はいつどこで誰が行うか等)意見の調整が必要な事項など、司会役のケアマネジャーが必要な事業所に意見を求めるようにします。
⑦まとめと今後残された課題について話をする
一通り議論が終了した地点で今日の議論の結論について簡潔に、しかしポイントはしっかり押さえて述べる。しかし現実的には全ての問題点と解決策を決定しまとめるのは無理な事。
「目標とする状態像と予測されるリスクを共有し、他職種共同で援助する実感を持つ」
この事を念頭に置きながら、課題に対し今後取り組んでいく内容について発言することになる。同時に残された課題についていつ頃までに解決を目指すのかも伝えます。
⑧担当者会議の約束事項を決める
例えば
・よりよくする為の議論ができるよう「前向きな発言」を尊重する。 ・ また他職種の集まりでもある為なるべく専門用語を使わず、誰にでも分かる雰囲気を作る。
・利用者、家族に対しては共感的な態度を示していく事も重要。例えば利用者、家族の発言に大きく相槌を打つなど。
これはタブー
・感情的に相手を非難する
・他の参加者を見下す、或いは上から目線の態度
・会議を仕切りすぎ、意にそぐわない発言を阻止しようとする
・熱心なあまり時間を気にしない発言
⑨会議録の送付
会議録の配布は義務ではありませんが、全員が改めて会議での共通認識を持つためにも、担当者会議終了後できるだけ速やかに会議録を作成して可能なら翌日には参加者全員に送付することをお勧めします。
時間をかけてきれいにまとまった会議録を作成するより、ポイントを押さえていれば文章などの表現が多少きれいでなくても構わないと思います。
送付する時は会議に参加してくれたお礼も伝えておきましょう。(好感度がアップし、次からも参加してもらいやすくなります)
担当者会議のメリット
担当者会議には多くのメリットがあり、それぞれに期待できる効果がある
ケアチーム全体
・ケアプランに対して専門的な意見が反映される
・様々な情報が共有できる
・目標やリスクが明確になる
・メンバーがそれぞれの役割を確認できる
・利用者、家族、サービス担当者等が一体感を味わえる
・利用者中心のチームであることが確認できる
利用者
・「これだけの人に支えられている」という感動を味わえる
・これからの生活がイメージできる
・ケアマネジャーと一緒に作ったケアプランを実行しようという意欲が高まる
・参加メンバーに自分の気持ちを話すことができる
・サービスについて質問したり、要望を述べることができる
・会議という公の場で家族の気持ちや自分に寄せる思いを聞く事ができる
・家族を含めたチームメンバーに感謝の気持ちを伝えることができる
家族
・家族が感じる孤立感や孤独感を軽減できる
・これからの介護生活がイメージできる
・参加メンバーに介護の苦労、不安、心配事などを話すことができる
・サービスについて質問したり、要望を述べたりすることができる
・会議という公の場で本人に対する気持ちを話すことができる
・出席者が本人に敬意を払って接しているのを見て、本人の尊厳を見直す機会となる
・感謝の気持ちを伝えることができる
サービス担当者
・利用者の心身状況、利用者の表情、利用者と家族の関係、家族介護力、家屋の状況などを目の当たりにすることで、利用者への理解が深まる
・自分とは異なる職種の専門的な意見を聞く事ができる
・他の事業所のサービス内容がわかる
・自分達の専門性が確認できる
・利用者、家族、ケアマネなどに要望を直接話すことができる
・サービス担当者間の連携が深まる
ケアマネジャー
・専門的な意見を得て、ケアプランの質が高まる
・様々な職種の専門的な見方が学べる
・地域の社会資源を知る事ができる
・発言などにより、まだ見ぬ利用者や家族の力が発見できる
・ケアマネジャーだけでは打開できない局面を突破できる
・利用者や家族にケアマネジャーの役割を知ってもらえる
・2回目以降はモニタリングの場となる
・ケアマネジャーをいちいち介することのない担当者同士の相互交流が生まれこれからの支援が楽になる
・相互交流はチームの成長に欠かせないものであり、成長したチームはケアマネジャーにとって掛け替えのない財産となる
まとめ
いかがでしょうか?担当者会議は「何の為にやるか」「どうやって進行させるか」これらの事を事前にはっきりさせ、準備しておけば不安もなく堂々と進行ができます。
さらにクライエント含め、多くの参加者が「参加して良かった」と思ってもらえるようになります。そうなるとケアマネとしても嬉しいものです。
是非、目的と準備をしっかりして担当者会議を行ってみてください。