皆さんの職場では有休はちゃんと取れていますか?
「忙しくて取る暇がない」
「職場の雰囲気的が有休を取りにくい感じになっている」
「上司がいちいち有休取る理由聞いてきて取りづらい」
これまではこんな感じで僕達の業界だけでなく、日本の企業があまり有休を社員に与えることに積極的ではありませんでした。しかし働き改革によって、今年の4月から有休を年10日以上取得できる従業員は有休の取得が1年に5日間以上取得させなければいけないルールが労働基準法に新しくできました。
しかもこのルール。守らなければいかなる理由があろうと罰則があります。なので会社側はこれまでのように「従業員が取らないと言ってるから、取らせなくていいでしょ~」みたいな逃げは通用しなくなりました。
このルール。特に部下がいる管理職クラスの人はよく知っておいてほしいと思います。自分自身もですが、きちんと部下に有休を取らせていないと後で大変な事になります。
なので、今日は新しくできた、「有休5日取得義務」について解説していきます。
有休取得の対象者とは?
基本的には「勤続半年以上」「勤務日の80%以上勤務」という2つの条件を満たした人に与えられます。これは法律で決まっているので「うちは有休制度はありません」等というブラック企業的言い分は通用しません。
またパートタイムの従業員にもあります。ただし正社員とは取得できる日数などに違いがあります。
まずは自分の部署の従業員が対象になっているかどうか確認をしましょう。
1年間とはいつからいつまでをいうのか
まずルールの原則です。
「平成31年4月1日以降の付与基準日において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者」
です。ちょっと分かりにくいので例を出します。
(例)平成31年4月1日に入社したAさん。真面目に勤務し、令和元年10月1日から年10日間の有休を取得する権利が発生。
Aさんの付与基準日は10月1日からですので、令和2年の9月30日までの5日間は有休を与えなければなりません。
ちなみに会社の独自ルールで、有休を入社日から与えているのであれば付与基準日は入社日になります。
皆がバラバラでは管理しにくい場合は付与基準日を統一する
この原則ルールだと、対象者一人一人の1年間の期間がバラバラで管理が大変です。その為付与基準日を統一するのがオススメで厚生労働省もそのやり方を推奨しています。
例えばですが、年度単位で統一した場合。全員4/1~来年の3/31までに5日取得すれば良いとします。付与基準日は法律で定められたタイミングより遅くならないのであれば早めることは問題ありません。
対象者全員が計画的に有休が取得できるよう、計画表等を作成し、確実な取得ができるようにするのがベストです。
基本は従業員の希望日に取得させる
5日取らせないといけないのが分かったので、会社側がさっさと日程を決めて消化させたい。こう考える人達がいるかもしれませんが、まずは対象になっている従業員の希望日に取れるようにしなければなりません。
しかし、自ら取ろうとしない人に限っては会社側から時季指定をして5日間取得させることができます。例えばこのような場合に時季指定可能です。
・基準日から一定期間が経過したタイミング(半年後など)で年次有給休暇の請求・取得日数が5日未満となっている労働者に対して、使用者から時季指定をする
・過去の実績を見て年次有給休暇の取得日数が著しく少ない労働者に対しては、労働者が年間を通じて計画的に年次有給休暇を取得できるよう基準日に使用者から時季指定をする
ただし時季指定する場合もあくまで従業員の希望を汲むように努力しなければなりません。
これ、一人一人アプローチするのは大変です。そこで有休の計画的付与制度。通称「計画年休」という制度を利用することも有効と思われます。詳しいことは割愛しますが、会社が予め有休を消化する日程を決めておく制度です。(例えばお盆や年末年始、GW等の時季に有休を設定し、長期間の休みが取れるようにしておく等の利用ができます)
ちなみに1時間など時間単位の取得はこの年5日ルールでは有休を消化したとカウントされません。ただし半日有休はカウント可能です。
5日取得できないとどんな罰則があるのか
この有休5日取得は労働基準法の義務として、会社側に守らないと厳しい罰則があります。それは
労働基準法違反として、従業員一人に対して30万円以下の罰金
が課せられます。例えば従業員10人が取得できなければ、支払う罰金は最大300万円です。これかなり痛いですね。
「まあ、うちは金あるしそれくらいなら払えるわ~」等とタカをくくるわけにもいきません。何故なら罰金刑というのは刑法上の刑事罰の一種。分かりやすく言えば犯罪して罰せられたのと同じです。
そのような事業所が労働基準監督署の改善命令に対して、改善の兆しが見られないようであれば介護保険事業所の指定取り消しになってもおかしくありません。(これ、社労士の人が言っていることなので間違いないと思います)
金を払うだけでは収まらず、事業の撤退にまで繋がるリスクがあるということは肝に命じておきましょう。
まとめ
有休5日取得義務は
・正社員、パートタイム含めて勤続半年、勤務率80%以上の人が対象
・付与基準日(有休取得できる権利が発生した日)から1年以内に取得する必要がある
・付与基準日は、法律のルールより遅くならないのなら全員統一にして、管理しやすくしてもいい
・基本は従業員の好きな時季で取らせないといけないが、取れそうにない場合は会社側が時季指定できる
・罰則は従業員一人あたり30万円以下の罰金
ちなみに、本来ある公休を取らせずに、代わりに有休を5日消化させてトータルで何も休みが増えていないというのはダメです。またこのルールができたのをきっかけに、例えばこれまでは祝日も休みにしていたのを、いきなり祝日は勤務日とするような変更もダメです。
あくまで有休の取得を推進するのがこの新ルールの狙いです。このルールによってこれまでの業務を効率よくできるように見直すきっかけになるでしょうし、従業員が有休を取りやすくなってリフレッシュできることで、結果的に質の高い業務ができたり、離職率が低下することで業績がアップすることも考えられます。
逆にこの機会を活かせないような事業所は、これから淘汰されるということです。管理職クラスの人はその事をよく理解して適切な事業運営に努めていきましょう。