身体拘束はなぜしてはいけないのか? 4つの損失について知っておこう

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介護拒否への対応は「対話」ができていない事が問題だった リスクマネジメント

平成30年度の改正で基準が見直しされた「身体拘束廃止未実施減算」

この基準の中に職員に対して、身体拘束を廃止する為の研修をしなければならず、新入職員に対しては速やかに研修をすることが要件の一つになりました。

そこで、僕が事業所の新入職員に対してこの身体拘束を行わないケアをする為の研修を担当しています。

この時期にはありがたいことに高卒などの、若くてフレッシュないわゆる「新卒採用者」も入ってくるのですが、年度替わりの時期に転職をする「中途採用者」もいて、この時期にやる研修は仕事のキャリアから年齢層まで幅広い方を対象にさせてもらっています。

そこで僕はこの研修で一番最初に参加者に質問することがあります。

「なんで、身体拘束はしてはいけないのですか?」

それに対して多くの人はこう答えます。

「利用者さんの尊厳や人権を無視した行為だからです」

もちろんそうです。さらに聞きます。「他にはしてはいけない理由はありますか?」

するとほとんどの参加者が、これ以上の答えが出てこないのです。この研修はもう何度もさせてもらっているのですが、それなりのキャリアのある介護福祉士の人ですら身体拘束に関してあまり理解が深くないことに少し驚きを感じてしまいます。

なので、今回は改めて身体拘束によって発生する4つの損失と発生のメカニズムについて書かせてもらおうと思います。

 

身体拘束による5つの損失

損失①利用者への身体と心の損失

まず、この記事を読んでくれている皆さんにも想像してもらいたいのですが、何もない部屋に、ベッドに手足を動けないように縛り付けられて「そこでずっとじっとしていてください」と言われひとりぼっちにされる。

・・・どうでしょうか?どんな気持ちになりましたか?

僕なら「なんだこれは、ふざけるな!」と怒るだろうし、「誰かー助けてくださいー」と助けを呼びます。しかしそれでも助けが来なければ、強い絶望感から無気力な状態になってしまうと思います。

普通の人でもこのような反応をするのです。しかし、多くの施設や病院などで身体拘束されている人が上記のような反応をしたらどう捉えますか?

「また大声で喚いている。認知症が進行しているな」「他の人に迷惑だから、医師にお願いして眠剤や向精神薬を出してもらうようにお願いしよう」

多くの場合、あまり深く考えられずにこんな風に対応されてしまうのです。これは想像力が欠如した、恐ろしい行為とも言えます。

その為、まずは身体拘束をされた人の状況を自分事としてイメージするという事がとても大切だと思います。そのイメージがちゃんと持てれば身体拘束をされた利用者に起きる損失・悪影響は簡単に想像ができるはずです。

まず無気力になることから、心理的にはうつや認知症の進行。せん妄などの周辺症状が出ている場合は症状の悪化。活気は低下し、何かを意欲的に頑張ってみようとも思わなくなります。

その状況では当然食欲も低下します。食欲が低下するから、体力が低下し、体力が低下するからリハビリなどの運動も当然できません。運動ができないからフレイルや廃用症候群が進行し、寝て過ごす時間が増えます。そうなると後は寝たきり状態になるのにそれほど時間はかからないでしょう。

このように、利用者に与える身体・心理的損失は大きいと言えます。

②家族に与える心理的負担、信用失墜の損失

一例ですが、施設側が家族に対してこんな説明をします。

「○○さんは、認知症が進行していて抑制しないとうちでは適切なケアができません。なので、この同意書(身体拘束に家族が同意するという趣旨の書類)にサインをしてください。同意できない場合は入所継続できないので、別の施設を探してください」

このような場合において、すぐに他が見つからない場合は同意せざるを得ません。そしてそうなると同意というよりは「身体拘束に同意することを強要する行為」に等しいと思います。そしてこのような流れで身体拘束を認めてしまった家族はどんな気持ちになるでしょうか?

とても悲しく辛い気持ちになることが想像できると思います。そして本人への罪悪感や、施設や事業所への不信感に繋がります。

ちなみに、誤解している事業所が多いのでここで書くのですが

「家族に同意を得たから、堂々と身体拘束をしてもいい」

このように考えて、家族の同意書を免罪符に身体拘束を正当化している所がありますが、全く間違った考えです。

「家族の同意を得ることにより、身体拘束が正当化される」等という法令文書はどこにも存在しません。家族の同意を得ても、身体拘束が合法化されることはないのでしっかり認識しておきましょう。この事をちゃんと理解していれば

「こちらではなく、家族が身体拘束を希望したので、同意書にサインもらって身体拘束しています」等という理由が通らないことも分かりますよね。

③職員のモチベーション低下という損失

身体拘束が利用者や家族に与える弊害をきちんと理解しているレベルの高い職員ほど、そのようなケアを平気でやってしまう事業所で働くモチベーションは低下するでしょう。その結果何が起きるのか?

・質の高い職員の、業務レベルが下がってしまう

・質の高い職員は辞めてしまう

・質の低い職員ばかり残って、さらに業務レベルが下がっていく

・人手不足が進行して、さらに業務レベルが下がっていく

まさに「負のスパイラル」です。身体拘束は事業所全体の職員のレベル低下や、職場環境まで悪化させる可能性が高いのです。

④社会的信用を失うという損失

①~③までのことが身体拘束により発生すれば、最後には事業所の社会的信用が驚くほど下がります。

今はSNSが普及し、口コミなどの情報は一昔前よりも何倍も早く広がります。

「あの施設は入居者にひどいケアをしていると有名だ」

「噂では虐待も日常茶飯事らしい」

悪い噂ほど広まるのが早いものです。そして、その噂の信憑性が高まればそんな事業所にはお客さんも、職員も集まりません。その結果待ち受けているのは施設や事業所の閉鎖という最悪のシナリオです。

社会的信用を失うというのはそれほどに恐ろしい結果に繋がるのです。

 

まとめ

身体拘束をすることによって発生する損失には

①利用者への身体と心の損失

②家族に与える心理的負担、信用失墜の損失

③職員のモチベーション低下という損失

④社会的信用を失うという損失

この4つがあります。たった一つの身体拘束が事業所の閉鎖まで繋がる可能性があり、それくらい恐ろしく重大な行為が身体拘束なのだという意識をもって、介護・看護職だけでなく、僕達ケアマネも含め全ての専門職が理解しながら仕事をする必要があります。

新入職員には、そういった事をしっかり伝えていけるよう研修実施を頑張っていきたいと思います。

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