安全配慮義務を果たして、裁判で負けない仕事をしよう!

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リスクマネジメント

皆さんは「安全配慮義務」という言葉は知っていますか?僕は事業所内で安全管理のリーダーという立場から、事業所の職員を対象に定期的に研修を行うのですが、最近になって安全配慮義務という言葉そのものをほとんどの人間が知らないという事実に驚愕しました。

なので、今日は介護業務に携わる全ての人が知っておきたい「安全配慮義務」について紹介します。

安全配慮義務とは?

まず介護事故が発生した場合に、事業者が問われる責任には大きく3つあります。

①行政上の責任

必要な設備を整えていなかった、適切な人員配置をしていなかった等の場合行政上の責任を問われます。

②刑事上の責任

例えば施設の職員が利用者に対して暴力を奮って怪我や死傷等させた場合が該当します。

③民事上の責任

利用者やその親族などから損害賠償を請求される場合です。

安全配慮義務は3つの責任のなかの、民事上の責任に該当します。

安全配慮義務の根拠ですが、それは民法第415条です。

(債務不履行による損害賠償)
民法415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも,同様とする。

これは債務不履行責任について書かれた条文です。どこにも安全配慮義務という言葉はありません。しかし

介護サービス利用契約上、事業者は利用者の生命や身体などの安全を確保して適切な介護サービスを提供する義務があります。この義務を「安全配慮義務」といいます。

そして、この安全配慮義務を果たせず介護事故が起きた時に、上記の債務不履行責任を負うことになります。

つまり介護サービスを提供する事業者にとって「債務=安全配慮義務」という事が法のルールとして適用されるということです。

どうすれば安全配慮義務を果たしたと言えるのか?

安全配慮義務を果たすためのポイントは2つあります。

①事前措置

事前の措置とは、介護事故の発生を防止するために必要な対応をやっているかどうかということです。具体的には事故防止の為の業務マニュアルの作成や職員研修の定期的な実施、各利用者ごとの特性を考慮した事故防止の為の対応をしながらケアをしていたかどうかということです。

②事後措置

事後措置とは介護事故が発生した後の対応が適切に行われたかどうかということです。事故発生後の医師や医療機関への連絡や受診、搬送の対応。怪我や体調不良の場合は応急処置などの対応、家族などへの連絡は適切に行われていたかどうかということです。

そして実際の裁判で争点になるのは、①の事前措置です。実際にどの程度事故の防止に誠実に努めたかということが事業者には問われます。

実際の裁判事例から考える

ショートステイや有料老人ホーム等の施設系で勤務している人は分かると思いますが、よくナースコール(以降NC)を歩いたりトイレに行くときは鳴らしてほしいと本人に伝えていても、実際には鳴らさず1人で歩いて転倒したという事故はよくあると思います。簡単に実際の裁判例から考えてみます。

事例①

AさんはXショートステイを利用。1回目に2泊3日利用済み。今回は2回目の利用。認知機能に問題はないが、歩行やトイレには見守りが必要な状態の為、本人にNC鳴らすよう伝え、本人もその旨を了解していた。

本人は日中TVのリモコンを取ってほしいなど、必要な時にNCを鳴らしてくれていた。日中トイレに行くときも同様であった。しかし夜間帯に廊下で転倒しているのを発見した時にはNCは鳴らさず1人で歩いてトイレに行こうとして転倒。Aさんは大腿部骨折の怪我を負い、その責任は見守りを怠ったXにあると家族から起訴される。

結果:Xに賠償責任はない

本人はNCを必要な時に鳴らす事ができる能力があることは明確であり、トイレに行くときもNCを鳴らして職員に見守りをしてもらうことを要求することができていた。この事実から事故の予見をすることは困難であり、Xに賠償責任はない。

 

事例②

BさんはZショートステイを利用。毎月定期的に利用しており、現在9ヶ月目。認知機能に問題はない。歩行やトイレには付き添い介助が必要な為、本人にNCを鳴らすよう伝えていた。

Bさんはトイレに行く時、NCを鳴らしたり鳴らさなかったりすることがこれまでも長期間続いており、職員はその度にBさんにNCを鳴らすよう説明していた。Z事業所には1人で動いた時に知らせてくれるセンサーマットの在庫があったが、Bに対して使用する検討はされていなかった。

夜間帯に1人でトイレに行こうとして、廊下で倒れている本人を発見。病院を受診した結果、脳出血を起こしており入院。1年半後に亡くなられる。

Bさんの死亡はZに責任があるとして、遺族が損害賠償を求め起訴する。

結果:Zに賠償責任あり。

これまでの経過からBが1人で歩いてトイレに行く危険をZは予見することができていた。また事故防止に有効とされるセンサーマットの使用検討もされていない。さらにNCを押すように本人にする説明も、それだけでは効果がないことが明白であり、効果のない声掛けを繰り返しても安全配慮義務を果たしたと言えない。

 

この2つの事例の違いですが、事故の予見が事業者に可能であったかどうかです。

事例1の場合は利用期間も短く、またそれまでにNCを用事があれば押せていた事から事故の予見が困難でした。

しかし事例2に関しては9ヶ月間の利用中に何度もNCを押さずにトイレへの移動をしていた事から、1人で動いて転倒することは十分に予見できたと客観的に判断できます。またセンサーマットの使用検討もされていない等、事前措置としての予防対策も不十分と判断されました。

事前措置が十分なされていければ裁判に負けてしまいます。逆に十分な事前措置がなされていれば、事例2の場合でも賠償責任を問われず、勝訴していた可能性もあります。

記録の重要性

どれほどきちんとした事前措置や事後措置をしていたとしても、裁判になった場合その判断は記録のみです。つまり記録に残っていなければやっていないのと同じになります。

そのため5W1Hを中心にポイントを押さえた記録をきちんと残しましょう。

この時自分達が有利になるよう虚偽の記載や、記録をした後に書き換えることは絶対に止めましょう。実際に調べていくうちに虚偽記載と思われる箇所が発見された事で、他の証明記録に関しても信憑性が落ちて裁判結果が不利になることがあります。

記録において大事なことは「事実を誠実に残す」事です。日々の仕事を誠実にやってそれを記録に残していれば裁判で不利になる確率を減らせます。基本的な事ですがとても大事です。

そもそも訴えられないようにしよう

ここまで裁判で負けない為のポイントを書きましたが、1番重要なのはそもそも訴えられないようすることです。その為に重要なのは利用者や家族との信頼関係を、普段からいかに築くかということです。

どれほど頑張ってやっていても、事故は起きるときには起きますし、対応が完璧でないことも多くあります。しかし信頼関係がきちんと築けていれば「不十分な点は確かにあったと思うが、いつも一生懸命やってくれている。謝罪もしてくれたし、これ以上事を大きくするのはやめよう」等、相手が穏便に応じてくれる可能性が高くなります。

信頼関係は一朝一夕には築けませんが、普段から密なコミュニケーションをとることが大事です。ちょっとしたことでも報告し、また利用者や家族の近況を尋ねるなど対話を多く重ねることです。そうやってコツコツと関係を築いていくことが、ある意味訴えられるリスクを減らすリスクマネジメントにも繋がるのです。

まとめ

①安全配慮義務=民法の債務不履行責任

②安全配慮義務を果たすためには「事前措置」「事後措置」の2つが重要。特に事故を防止するための事前措置をしっかりやることが重要

③記録が残っていなければ、どれだけ対応していてもやっていないのと同じ。事実をきちんと誠実に残すことが大事

④そもそも訴えられないように、利用者や家族との信頼関係を普段から作っておく

裁判で負けない仕事というのは、利用者や家族を敵対視するものではなく、どちらにとっても安心して仕事と生活を送れるwinwinな関係ができることに繋がります。質の高い業務をしていく上でも重要な知識になりますので知っておいて損はありません。

是非、皆さんの事業所のリスクマネジメントに役立ててもらいたいと思います。

 

 

 

 

 

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