今年もいよいよケアマネ試験の日が近づいてきました。(今年は10月13日)そしてケアマネ試験の受験者数が発表されましたが、あまり大幅な回復はなかったようです。
都道府県からの報告が集まってきている。東京都や大阪府、北海道など受験者数の多い18都道府県の今年度の受験予定者数(*)は計3万3869人。昨年度の受験者数より2730人(8.8%)多い微増となっている。
受験予定者数を多い順にみると、東京都が4077人で433人増、大阪府が3484人で513人増、北海道が3053人で164人増、神奈川県が2585人で288人増、兵庫県が2575人で436人増。この順位は昨年度の実績と変わらない。大阪府や兵庫県は伸び幅が大きかった。
このほか、福岡県や埼玉県、広島県、京都府などでそれぞれ100人から200人程度増えていた。一方で更に減少したところもある。宮城県は1329人で12人減、青森県は977人で128人減、熊本県は1113人で6人減だった。
ケアマネ試験をめぐっては昨年度、受験者数が非常に大きく減少して関係者にショックを与えた経緯がある。一昨年度が13万1432人、昨年度が4万9312人。一気に62.5%も減る衝撃の結果だった。
またこの受験者数の減少によって、受講費用も全国的に上がっているようです。
千葉県では8700円から1万4400円へ、愛知県と埼玉県では8700円から1万3800円へ、神奈川県では8790円から1万3800円へ、それぞれ5000円を超える大幅増となっている。受験者数の激減で1人あたりの経費が上がってしまったことが要因。
このほか、宮城県は8400円から1万2800円へ4400円増、広島県は8800円から1万2800円へ4000円増、東京都は9200円から1万2800円へ3600円増となっている。
※記事引用元:ケアマネタイムスより
改めてものすごい数の受験者数の減少だなと思います。なんせ13万人から一気に4万人ですからね。そしてこの数字が今年も回復しなかったところを見ると、現状のままであればこの数字が減ることはあっても増えることはなさそうです。
受験者数が減った要因ですが、様々な記事などを見て多いのは以下のような内容です。
①受験資格にヘルパー2級を除外して、受験するハードルが上がった事
②受講費用が高騰した事
③求められる役割や責任、研修も多いのに処遇が良くないこと
僕はこの受験者数の減少でもっとも深刻な要因は③だと思っています。
まず①ですが、ヘルパー2級以上が受験できた最後の第20回(平成29年)では合格者のなかの15.9%が「相談援助業務従事者、介護等業務従事者」でした。次の21回で相談援助業務従事者の割合が全体の2.7%であった事を考えると約13%がヘルパー2級以上の実務経験で受験資格を満たしていたことになります。
そう考えると多いようですが、実際にこの人達がケアマネとして働くことは少ないと感じています。具体的なエビテンスはありませんが、少なくとも僕の周りでは国家資格なしでケアマネとして働いている人はほとんどいません。つまり、将来的なケアマネの数を担保する為に受験資格のハードルが高くなったことはさして影響はありません。
②に関してですが、記事ではセンセーショナルに取り上げられていますが、全然払えないような金額ではありません。むしろこれまで安いくらいでしたし、国家資格ならもっと費用はかかります。それにケアマネ試験は職場が受験費用やそれに必要な試験や研修などサポートしてくれることも多く、これが受講者の減った理由ではないと思います。
やはり③が最も深刻です。ケアマネ試験の難易度は徐々に上がっており、去年に関してはなんと合格率10.1%です。これは介護系の業界でもっとも合格率の低い資格になっています。
ただ、難易度がそこまで高いとは思いません。しっかり勉強すれば多くの人が合格できるはずですが、合格の為には少なくとも試験までの半年くらいは仕事以外の時間、休日も含めて毎日1~2時間くらいは勉強にあてるくらいの覚悟が必要です。
しかし問題はここからです。それだけ苦労して取得しても責任ばかりが重く安月給。現状は介護福祉士として働いたほうが給料も良い。こんな状況で果たしてケアマネを目指す人がどれだけいるというのでしょうか?
もちろん、そんな損得勘定は抜きにしてケアマネを目指す志が高い人もいます。でも全体で見ればそんな人は少数派です。本来苦労してでもケアマネ試験に合格しようと思うのは、それに見合うメリットがあったからです。
国の意図として、明らかにケアマネの数を減らしにかかっています。それでも良いと考える根拠がケアプランのAI化でしょう。しかし断言できますが、AIによってケアプラン作成にかかるケアマネの業務の負担を軽減したり効率化は図れても、最終的にケアマネなしではまともなケアプラン等できるはずがありません。
ケアプランは家の設計図とは違います。生きている人間に対して行うものです。機械には分からない微妙な思いや感情。それを汲み取りながら作って初めて質の高いケアプランになるのです。
ケアマネがいない状態でのケアプランとはスマホなどに質問事項を入力していって、そこで示されたケアプランに従う。それが嫌だと言っても、機械の判断基準から外れるような内容であれば却下され、それでも従わなければ不適切な態度の被保険者であると、サービス利用に制限がかけられたり罰金を徴収される等が起きかねません。
そんな環境で受ける介護サービスにどれほどの意味があるのでしょうか?しかしこのままだと確実にケアマネの数が減ってしまいそうです。そうならない為にも、僕達一人一人がケアマネの価値を発信していき、自分達の未来は自分達で守るくらいの考えが必要かもしれません。