厚生労働省がケアマネ不足を解消する方法の一つとして、ケアマネ試験に必要な実務経験。
現在5年以上が原則のところを3年に短縮する案を社会保障審議会に提出する事が判明しました。
ケアマネジャー受験資格、実務経験3年に引き下げ 厚労省検討
もし通れば早ければ次期2027年介護保険改正から、この内容が適用される可能性が出てきました。
介護支援専門員(ケアマネジャー)の受験要件として、現在は「実務経験5年以上(かつ900日以上)」が求められています。
この動きの背景には何があるのでしょうか?
そして、もし実際に導入されたら、現場や受験者にどんな影響が予測されるか?
この記事では、制度見直しの背景と、想定されるメリット・デメリットを整理してみます。
なぜ今「3年短縮案」が出てきたのか?
① ケアマネ人材の減少と高齢化
全国のケアマネ登録者数は、2018年度の約18.9万人をピークに減少傾向にあります。
一方で、要介護認定者数は増え続けており、「ケアマネの量の確保」と「質の維持」の両立という非常に難しい課題に対して待った無しの対応が求められる状況になっています。
ただまずは質より量です。当たり前の話ですが、やる人がいなければ教育以前の問題だからです。その為の短縮と思われます。
② 受験ハードルの高さ
現行の「実務経験5年」という要件は、若手職員や他職種の人がケアマネを目指す際の大きな壁になっています。
「受験できるようになるまで時間がかかりすぎる」
「キャリアアップが遠すぎる」
という声は少なくありません。
このため、「3年程度でも十分に実務経験を積めるのではないか?」という意見が出てきたようです。
③ 制度・業務環境の変化
近年は、ケアマネジメント支援ツールのICT化や地域包括ケア体制の進展、「適切なケアマネジメント手法」などにの開発により、ケアマネ業務の在り方が少しずつ変化しています。
かつての「5年経験がないと難しい仕事」という前提が、時代にそぐわなくなってきている面もあります。
3年短縮のメリット
① 参入障壁が下がり、人材確保が行いやすくなる
実務経験年数が短くなれば、若手や他職種からの参入が増える可能性があります。
「5年待たないと受験できない」という心理的ハードルが下がり、早期にキャリアアップを目指す人が増えるでしょう。
これにより、将来的なケアマネ不足の緩和が期待できます。
② 若手・他職種の流入が進み、業界が活性化する
経験3年でも、現場で利用者対応・チーム連携を経験してきた人材は少なくありません。
医療職、リハ職、福祉用具専門相談員など、多様なバックグラウンドを持つ人がケアマネになれば、現場に新しい視点や専門性が加わります。
③ 制度のスピード対応力が高まる
在宅介護・地域包括ケアの推進など、現場ニーズが年々変化していく中で、柔軟に人材を供給できる体制が整いやすくなります。
制度的にも、時代のスピードに合わせやすくなるという利点があります。
短縮のデメリット
① 経験不足による支援の質低下
実務経験が短い分、利用者・家族・関係機関との調整経験やトラブル対応など、現場での「引き出し」が少ないまま受験・登録する人が増える可能性があります。
判断力や応用力の不足が、ケアプランの質低下や様々なトラブルにつながる事が増える可能性があります。
② 現場からの信頼低下
ケアマネはチームの司令塔として、医療・介護・行政と連携する重要な役割を担います。
そのため、現場では「一定の経験を積んだ人でないと信頼しにくい」という意識も根強く、経験年数短縮が現場の不安材料になる可能性があります。
たとえば介護系の高校を卒業して介護福祉士を取得して18歳から働き始める。3年の実務経験を積んで受験できるなら最年少で21歳のケアマネジャーなんて人材も今後出てくる可能性があります。
現在の業界でこのような若いケアマネをチームが信頼して機能するか?個人的にはかなり不安が拭えないと思います。
③ フォローアップ体制の不足
要件を緩和するだけでは、質の担保は難しいでしょう。
短縮された分、実務研修・OJT・スーパーバイズ制度の充実が不可欠です。
それが追いつかないまま人数だけ増えると、「質の劣化」と批判され「やはり5年程度は必要だ」と制度が逆戻りしかねない状況になるでしょう。
今後の課題:量と質の両立をどう図るか?
要件短縮は、あくまで「入口を広げる」ための施策です。
重要なのは、そこから先の育成・支援体制をどう整えるかです。
・実務研修や継続教育の充実
・ケースの難易度に応じた担当件数の調整
・ケアマネ業務負荷や報酬体系の見直し
こうした仕組みとセットで導入しなければ、「短縮=質の低下」という誤解を招きかねません。
まとめ
ケアマネの実務経験要件を5年から3年に短縮する動きは、介護現場の人材不足という現実を前に、制度を現実的に見直す流れの一つといえます。
ただし、制度を変えることがゴールではなく、
「ケアマネとして活躍できる人をどう育てるか」が本質です。
入口を広げるだけでなく、その先でしっかり支える仕組みづくりが、これからの介護業界に求められているのではないでしょうか。
私自身、現場で働く人間としてケアマネの役割は年々難しくなっていると感じます。
だからこそ、経験年数よりも「いかに学び続ける姿勢を支えるか?」が問われる時代なのかもしれません。
制度改正をきっかけに、より多くの人がケアマネの仕事に関心を持ち、質の高い支援を提供できるようになることを期待しています。