「アセスメントやモニタリングの大切さは嫌って程分かるが、そもそもコミュニケーションが苦手なんですが。こんなんでは、ケアマネやる資格ないのでは・・・」
こんな風に思ったりするケアマネの人はいませんか?これに対しては
「正しい技術を身につければ、ケアマネに必要なコミュニケーション能力は誰でも必ずマスターできる」
と僕は考えています。
逆に「私は人と話すの得意だし、友達も多いからクライエントと話すのも全然大丈夫」みたいな人のほうがヤバかったりします。
その理由は僕達ケアマネジャーがクライエントと接する時に求められるコミュニケーションの技術は、日常やっているものとは異なり
専門職として、クライエントとの信頼関係を構築する等、日常的なものとは目的が異なる為
です。その為、きちんとした技術を身に着けず普段やっている感じで接していると「馴れ馴れしいやつだ」等と相手を不快にさせて、良好な関係が築けない事になります。
今回紹介するのは、僕が尊敬し書籍などからたくさんの事を学ばせてもらった岩間信之先生の著書「対人援助の為の相談面接技術」から内容を紹介させてもらいます。
ケアマネに必須の相談面接技術が分かりやすく紹介されている名書です。これ1冊読んで、その内容が実践できるだけで別人のようにケアマネレベルが跳ね上がります!
非言語コミュニケーション
その名の通り「言葉を発さないコミュニケーション」の技術。言葉を発さないのに意思表示ができるのと思うかもしれませんが、僕達は日常相手の表情やしぐさなどから、相手の感情を「こういう意味かな」と自然に考えています。
アイコンタクト
そのままだが、適度に相手と視線を合わせる技法。
期待できる効果として、「あなたの話をしてもいいんですよ」とリラックスしてもらったり、話すことを促す事ができます。
ただし、視線の合わせ過ぎには注意。外国人はずっと視線を外さないのが標準だそうですが、僕達日本人は見つめられ過ぎると「なんか怖い」と不快感を与えてしまいます。
うなずきと相づち
うなずきは相手の話にうなずく事。相づちは「うんうん」等声を発する違いがあります。
うなずきは「最小限のはげまし」の技法で、相手に話すことを促す事が期待できます。
相づちはそれに加えてケアマネジャーが「今重要なポイントだな」と判断した時に使うことで、クライエントが自分の問題に焦点を当てやすくなる効果があります。
こう書くと「じゃあ、相づちのほうが有能そうだからずっと相づちでいいんじゃない」と思うかもしれません。
ただ、ケアマネジャーが話を聞くのに30分~60分くらい面接をすることは多い。その間ずっと相づちをしていたらこちらも疲労してくるし、結局どこが重要なポイントなのか分からなくなってしまうため、うなずきと組み合わせてメリハリをつけるほうがいいです。
沈黙
よく「話すことが無くなってシーンとして、気まずい雰囲気になる」とこの沈黙を嫌がるケアマネジャーが多いです。
しかし、この沈黙は是非意図的に使えるようになってほしいです。実はクライエントは自分で話をしながら、同時に自分の話を頭の中で整理していってます。
これまでずっと頭の中で考え続けた事も、他人に喋ってみると「あれ、なんかここはおかしいな・・・」等と矛盾している事に気づいたりして沈黙してしまう事があるんです。
そのような時は無理に話を促そうとせずに、あえて待ってクライエントに自分で問題点を整理する時間を作ってほしい。
「でもどのくらい待てばいいんですか?あまり長いと気まずい・・・」とも思います。
絶対的な秒数などはありませんが、僕の経験から大体15~20秒くらいが妥当ではないかと思います。
オープンクエスチョン・クローズドクエスチョン
この両者の違いは「はい・いいえ」で答えられるのがクローズド。
「○○についてどう思いますか?」等クライエントに自由に答えてもらえる質問がオープン。
たまに「クローズドクエスチョンはあまり使わないほうがいい」みたいな事を聞くことがありますがそんな事はありません。特徴とデメリットをしっかり理解したうえで、必要なポイントには使っていけば良いと思います。
クローズドクエスチョンの特徴は
・ピンポイントでの情報収集を行うことができる
・連発すると、ケアマネ主導の面接になりやすい
・続くと相手に圧迫感を与えて不快な思いをさせてしまう
です。一方オープンクエスチョンはクライエントが自由に話ができる為、自分の思いを話しやすいですが、あまり話し上手でない人や、人見知りが強い人などにいきなり好きに話してくださいと言っても難しい面があります。
コツは「最初何点かクローズドクエスチョンで会話をしてから、相手が話をすることに慣れ始めた段階でオープンクエスチョンに繋げる」
このコンビネーションが、相手にスムーズに話をしてもらうのにとても有効なので覚えてほしいと思います。
繰り返し・要約・解釈
繰り返しは相手が言っている事をそのままオウム返しのように繰り返す技法。
(クライエント)「私は生まれは東京なんです」
(ケアマネ)「東京の生まれなんですか」
効果として話をしっかり聞いていると感じてもらえることと、自分の言った言葉を相手が話すことで、話の内容を整理し気づきを得る機会を作れる事です。
要約は繰り返しに似ていますが、クライエントの話が長くなってくると単純な繰り返しは難しくなります。そこで
「○○だったから、その時△△という事をしたのですね」
とポイントを押さえてクライエントが話した内容をある程度まとめて返します。
効果として的確に内容をまとめて伝えることで、クライエント自身が気づけていなかった問題の気付きなどを自分で行うことが期待できます。
解釈は要約のさらに一つレベルが上の技法です。
話の内容を「原因→結果」の因果関係にまとめて相手に伝える技法です。
「お話をお伺いした感じだと、〇〇という事が起きたから、その時△△という事をした。その結果◇◇になったということでしょうか?」
これができると、これまで問題の構図やメカニズムが理解できていなかったクライエントに問題を的確に整理し、解決に向けて大きな前進を促す効果が期待できます。
ただし、ケアマネが相手の話を聞きながら、同時に理論的に内容を頭の中で整理するというマルチタスク的で高度な技術で難易度は高めです。
さらに解釈の結果をクライエントが「それは違う」と感じた時に押し付けがましい言い方になってしまうと「専門家気取りで、何も分かっていないのに分かったような事を言って・・・」等相手を不快にさせてしまう可能性もある。
その為、伝え方としては「こんな風に私は思ったのですが、いかがでしょうか?」等配慮した表現にしたい
まとめ
今回は書籍の中から僕が実践でもよく使っていて、とても効果的な技法を紹介させてもらいました。
正しい面接技術を使って、ケアマネジャーとしてクライエントとよい関係を気づくこと、自分達の力で問題を解決していく「エンパワメント」な支援ができるよう参考にしてもらえると嬉しいです。