嬉しいニュースが飛び込んできました。
2013年長野県の特養あずみの里で、准看護師がおやつを利用者に食事介助させている最中、おやつのドーナッツを誤嚥させて死亡させた事で、職員個人が業務上過失致死に問われるという前代未聞の事件。
この事件の詳細は誤嚥事故で准看護師個人に有罪判決 この裁判結果が与える影響とは?を参照ください。
7年前、長野県の特別養護老人ホームでドーナツを食べた入所者が死亡し、准看護師が業務上過失致死の罪に問われた裁判で、2審の東京高等裁判所は、罰金刑とした1審の有罪判決を取り消し、無罪を言い渡しました。
1審の長野地方裁判所松本支部では、罰金20万円の有罪判決を言い渡され、2審で被告側は改めて無罪を主張していました。
28日の2審の判決で、東京高等裁判所の大熊一之裁判長は「1審は被害者に対するドーナツによる窒息の危険性を具体的に検討すべきだったのにそれを見過ごしている」と指摘し、1審判決を取り消しました。
また、施設での食品の提供について「おやつなどの間食を含めて食事は人の健康や身体活動を維持するためだけでなく、精神的な満足感や安らぎを得るために重要だ。身体的なリスクに応じて幅広くさまざまな食べ物を取ることは、人にとって必要だ」と指摘しました。
そのうえで「おやつの形状が変更されていたことは准看護師の通常業務の中では容易に知ることができなかった。ドーナツで窒息する危険性や、死亡するとあらかじめ予測できる可能性は低く、ドーナツを提供したことが刑法上の注意義務に反するとは言えない」として無罪を言い渡しました。
引用:NHKニュース
まず率直に思ったのが、かなり介護現場の実情に配慮した常識的な判決が出てホッとしたということです。
これまでの介護事故などの裁判の判決結果を見ても、現場の実情を全く理解していないとしか思えない結果が多く出ていました。
「○○を確認する義務があった」
「○○をすることが可能だった」
「○○ができたはずなのに、注意を怠った」
こんな文言です。しかし多くの利用者を少ない職員でケアしているのが介護の実情です。
さらに経験やスキルも個人差が大きく、素人同然の人がいきなり現場で働いているような事業所も多いのが現実です。(そういった事は改善していく必要があるのは当然なのですが)
そのような中僕達に課されているのが「安全配慮義務」というものです。
しかしこれがかなり厳しい。極端な話、利用者が視界に入る位置に職員がいたなら「安全に配慮できたはずなのに怠った」と言われる可能性が高いのです。しかしそんな事、全ての職員が常に100%やることは不可能ですよね。
今回の判決はそんな現状を一定程度理解してもらった上で出された事を感じます。評価できるポイントは
・食べることを楽しむというQOLの観点から、過剰なリスク回避の食事提供はふさわしくないとした事
・そもそも利用者の死亡原因が誤嚥と結論づけた、検察の見解を疑問視している事