ケアマネが利用する頻度の多い制度の一つがこの「介護保険負担限度額認定」です。
介護保険施設(特養や老健、介護療養病床等の事。ショートステイも含む)にかかる費用で「食費、居住費」(昔はホテルコストといってました)は保険適用外の実費負担です。しかし、そのコストを軽減してくれる大変ありがたい制度がこれです。
しかしこの制度。ケアマネであっても正確に理解している人は少ないように感じます。その為「○○さんは年金結構あるので申請しても難しいと思います」と言ってしまし、本来は制度を利用できるにも関わらず利用していない人もいます。
なので、今日はこの制度について紹介したいと思います。
軽減を受けられる条件
①所得
住民税が非課税である事。まずこの意味が分かりにくいと思います。
住民税とは「都道府県民税」と「市町村民税」を合わせていう言葉です。皆さんも会社に雇われている方であれば給与から自動的に引かれていますし、自営業の方であれば直接市役所等で支払いをします。
そして住民税非課税世帯とは世帯全体の所得が少なく、結果的にこの住民税の支払いを控除されている人達の事です。ではどのような人達が住民税非課税世帯になるのでしょうか?
住民税の計算方法は所得割と均等割というものがあります。それを踏まえた上で参考になるのがこちらです。
■所得割が非課税になるケース
前の年の総所得金額等が次の項目の金額以下の場合
・控除対象配偶者や扶養親族がある場合
35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+32万円
・控除対象配偶者や扶養親族がいない場合
35万円■所得割と均等割が非課税になるケース
1.その年の1月1日現在、生活保護法による生活扶助を受けている場合
2.障がい者、未成年者、寡婦(夫)で、前年中の合計所得金額が125万円以下の場合(給与収入では204万4,000円未満の場合)
3.前の年の総所得金額等が次の項目の金額以下の場合
・控除対象配偶者や扶養親族がある場合
35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+21万円
・控除対象配偶者や扶養親族がいない場合
35万円引用:マイナビニュース ワーク&ライフ
ちなみに均等割で非課税になる基準は各自治体で異なりますので、それぞれ所属の地域に確認してください。
②預貯金の基準
平成27年度まではこの制度の対象者の選定は所得だけだったのですが、制度改正により最近は預貯金などの資産も選定の基準になりました。その預貯金の基準は
・配偶者がいる方 合計2,000万円以下
ローンなどの負債は預貯金等から差し引きます(借用書などの確認書類提出)なので、貯金が上記金額あっても、借金の返済中であればその分を引いた金額で計算することを知っておきましょう。
預貯金等の具体的な種類は下記の通りです。
・有価証券(株式・国際・地方債・社債など)
・金・銀・(積立購入を含む)など、購入先の口座残高によって直評価額が容易に把握できる貴金属
・投資信託・たんす預金(現金)
利用者の負担段階
第1段階
・世帯の全員が住民税非課税で老齢福祉年金受給者
・生活保護等の受給者
第2段階
・世帯の全員が住民税非課税で合計所得金額と公的年金等の収入額の合計が年間80万円以下の方
第3段階
・世帯全員が住民税非課税で上記2段階以外の方
第4段階
・上記以外の方(負担限度額なし)つまり、住民税が課税される世帯でありその程度の収入や資産の所有が認められるとこの段階になります。
そして、軽減を受けた結果がこれです。
段階は1~4となってますが、実際に軽減となるのは1~3段階の人達です。これが受けられるかどうかはものすごく大きく、施設や介護度になどの条件によっても異なりますが特養の1ヶ月あたりの支払いは平均的に3段階と4段階では約4割くらい安くなります。
知っていますか?特例措置
1~3段階に該当する為には大前提として世帯全員が住民税非課税世帯であることです。
ですが、そもそもそれが多くの人にはハードルが高いです。多くの場合収入は少ないが、非課税扱いになるほどではないからです。
「いい制度だけど、結局自分は使えない。申請しても無駄・・・」
そんな風に諦めてしまっている利用者や家族、ケアマネの人はいませんか?そんな人に見てほしいのがこの特例措置です
この特例措置は減額適用外の第4段階になった人でも、下記の要件を満たす場合は特別に第3段階と同じ減額を受けられるようになる制度です
対象要件
① 2 人以上の世帯の方(世帯分離している配偶者がいる場合も含む。)
② 施設に入所し、利用者負担第 4 段階の食費、居住費の負担をしている方
③ 全ての世帯員及び配偶者の公的年金収入等の収入金額と年金以外の合計所得金額(長期譲渡所得又は短期譲渡所得の特別控除の適用がある場合には、控除すべき金額を控除して得た額)の合計額から、利用者負担、食費及び居住費の年額見込みの合計額を除いた額が 80 万円以下になること
※世帯:施設入居にあたり、配偶者と別世帯になった場合でも、世帯の年間収入は
従前の世帯構成員の収入で計算します。
※施設の利用者負担:施設介護サービス費の自己負担額+食費+部屋代
(高額介護サービス費の支給が見込める場合はその額を控除します。)
④ 全ての世帯員及び配偶者について預貯金(現金、預貯金、有価証券等)の額が 450万円以下であること
⑤ 全ての世帯員及び配偶者について、居住用家屋、日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと
⑥ 全ての世帯員及び配偶者について介護保険料を滞納していないこと(注意事項)
・短期入所(ショートステイ)利用の方は対象外です
・施設とは、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、地域密着
型介護老人福祉施設です。
主な条件は
・第4段階で入所している人にかかる年間費用を世帯の年間所得から引くと所得が80万円以下になる
・売却などによって活用できる資産もなく、預貯金等の資産額が450万円以下であること
です。条件を全て満たす必要がありますが、この条件であれば該当する可能性のある人は増えます。
例えばですが、ユニット型の特養に入った場合。月額約15万円かかったとします。その場合年間の施設にかかる費用は
15万円 ✕ 12ヶ月 = 約180万円
母親と息子の世帯。2人共年金暮らし。自営業であった為年金収入が少なく、2人合わせても年金の年収は約250万円。貯金は数十万円程しかない。活用できる資産もなし。
このケースで母親が上記の負担がある特養に入所したら、世帯の年収は約70万円。この特例措置に該当するというわけです。
こんな感じのケースは以外とあります。諦めてしまっている場合でも、この特例措置を紹介し、一度申請してみるといいでしょう。
申請方法
利用者が住んでいる各市町村に申請を行います。その時必要になるのは
・介護保険負担限度額認定申請書
・認印
・介護保険証等の本人確認書類(市町村によってはマイナンバーカードの確認が求められる場合あり)
・年金、有価証券、投資、定期預金、その他高額介護サービス費等が還付される口座の通帳(必要箇所をコピー提出求められます)
大体こんな感じですが市町村ごとに違いがありますので、詳しくはそれぞれの市町村に確認してください。大体のところはHPに必要な書類や手続方法が記されています。
余談ですが、平成27年度の改正からこの銀行の通帳のコピーの提出が必要になりました。それまではケアマネが気軽に申請を代行していた事も多かったのですが、さすがに利用者や家族の大事な通帳を預かることはできませんし、そんなことしてしまったらリスクが大きすぎます。
なので、原則は本人や家族に直接申請をしてもらってください。どうしてもそれが難しい場合は委任状などを使用して代行することもできます。しかし紛失した場合や認知症などの影響で「あのケアマネが私の通帳を持っていってお金を盗った」等言われてトラブルに巻き込まれる可能性があります。
ケアマネ自らがやる場合は預り証などを用意し、申請して返却後は預り証に返却証明欄も作っておき相手にサインをしてもらいましょう。このくらいしておかないと後でトラブルに巻き込まれた時に自らの身を守ることができません。
認知症の人の場合はこのような書類があってもトラブルになりやすいので、ケアマネがやらないほうが無難です。家族などの身内で申請ができないのなら成年後見人の申立てが必要だと思います。
ちなみにこの制度の適用期間は負担限度額認定の有効期間は、原則として申請日の属する月の初日から毎年7月31日までです
つまり一度申請が通っても毎年7月頃には更新の申請が必要です。忘れていて減額が適用されなかったという人もいますのでケアマネからも確認をしましょう。
まとめ
今日は介護保険施設の食費、居住費の負担を軽減する介護保険負担限度額認定について紹介しました。
特に特例措置(要件を満たせば第4段階から第3段階になる)については知らない方もいますので、是非ケアマネから情報提供をしてもらいたいと思います。
「特養に入れてあげたいけど、お金がないから無理・・・」そんな風に思っている人の助けになってくれれば幸いです。
参考になったという方はコメントよろしくお願いします。