現在多くのサービス業でCS(顧客満足度)を高める為に「接遇」に力を入れている所が増えています。
それはある意味当然です。サービス業における商品というのは、まさしく人が行うサービスそのもので、それが低品質であれば価値のない商品です。価値のない商品なんて誰も買いませんよね?
介護サービスもサービス業の一つであることから、当然接遇レベルを向上させ、サービスの品質を高めてこそ価値ある商品ができ、その商品にお客さんが満足することで利益に繋がるのです。
しかし。介護業界というのは、他のサービス業と比較するとあまりにも接遇レベルが低すぎます。他のサービス業なら絶対に許されないNGワードで溢れています。
今日は介護業界の人達が当たり前に使っているけど一般的にはNGなワードと、なぜNGワードを使っては行けないかについて紹介します。
介護業界のNGワード例
①タメ口
NGワード以前の問題なんですが、これが多すぎます。
「食事済んだら、トイレに行っといてね」
「寝る前に着替えなきゃダメだよ」
これ、家族が本人に言っているんじゃなくて職員が利用者に言っているんです。自分がホテルに宿泊する時、スタッフからこのような言葉遣いされたらどう思うか?という事を考えれば、許されるものではないことが分かると思います。
②あだ名やちゃん付けで呼ぶ
これもよくあるNGワードです。「◯◯ちゃん」や例えば太郎さんを「タロっち」みたいに呼ぶ行為です。
利用者の家族の前で使わなければ大丈夫と何故かタカを括っている人が多いですが、サービスステーションなどで職員同士のやり取りなどは普通に家族は聞こえています。
③赤ちゃん言葉
これもよくあるNGワードです。
「はい、あ~んして」
「頑張って歩けたね~、良かったね~」
こんな言葉が許されるのは、プライベートで赤ちゃんの世話を無償でしている時だけです。報酬が発生するサービス提供時にこんな言葉が出てしまうのは感覚が麻痺している証拠です。
④命令口調
これも本当に多くて困ります。
「早くして」
「立たないで、ここにいて」
「座って」
「寝る前に、先に歯磨きしておいて」
そもそも、サービス業においてお客さんに命令するなんてあり得ないですよね?一体どこのレストランに、お客さんに上から目線で命令するスタッフがいますか?いませんよね。
⑤ちょっと待って
これも日常的によく使われるNGワードです。トイレに行きたいと訴える人に対して、対応できない時に使ってしまいがちです。
これは、ちょっと待っての「ちょっと」がどの程度なのかは人によって異なるため、言われた方は不安になるのです。
この言葉はちょっとの部分を例えば「5~10分ほどお待ちいただけませんか?」と変えるだけでかなり印象が良くなります。
NGワードをなぜ使ってはいけないのか?
では何故NGワードを使ってはいけないのでしょうか?
「売り上げが落ちて困るから?」
確かにそれもあるのですが、実はNGワードが引き金で重大なリスクを引き起こす事に繋がる事が分かっています。
①職員のレベル低下→職場全体のレベル低下
まずこのようなNGワードを使う事が日常化してしまうと、「自分の方が利用者より偉い」ととんでもない勘違いをし出す職員が増えてきます。
「類は友を呼ぶ」とはよく言ったもので、低レベルな職場からは優れた人材は自然と離れてしまい、結果低レベルな職員だけが残ってしまいます。
低レベルな集団には低レベルな業務(サービス提供)しか行なえなくなります。
②利用者の状態悪化
職場が低レベル化した結果、利用者の状態変化に気づけない。もしくは気づいたとしても何もしようとしない事が常態化していきます。
利用者の立場からしても、失礼極まりない言葉を日常的に使われる事で自尊心は極限まで低下してしまいます。そうなると意欲が低下しADL低下や体調不良、認知症の悪化といった状態の悪化を招きます。
③苦情の増加
利用者の状態悪化が加速度的に進めば、当然家族などからの苦情が多くなります。
「この施設に入ってから、表情がものすごく暗くなった」
「職員から、乱暴な扱いを受けていると本人が言っている」
こういった苦情に対して、低レベルな職場ではきちんとした説明や対応は不可能です。それがますます不信感を高め、最悪は訴訟問題にも発展しかねない状況になります。
④職員が高齢者虐待を行うようになる
利用者の状態悪化に加えて、家族からの苦情が増える等ストレスフルな状況になってくると職場で何が起きるのか?
それは今社会問題にもなっている「虐待」です。
このような低レベルな職場では、職員一人一人に対してのストレスの緩和措置を考えたり、ストレスへの耐性を高める為のセルフケアなどの研修もまともに行われません。
そして行き着く先が虐待です。しかし今の世の中虐待はすぐに明るみになります。ニュースなどの報道で世間の多くの人が知ることになる可能性もあるのです。
虐待の加害者として個人の名前が出て、傷害罪等で起訴されれば執行猶予になったとしても当面社会でまともに働く事は不可能です。
⑤社会的信用を失い、事業閉鎖
虐待が明るみになってしまえば、虐待を行った加害職員もそうですが、それ以上にダメージを受けるのが事業所です。
一度大きな虐待がニュースなどで報道されてしまうと社会的信用を大きく損ねてしまいます。そうなるともうこれまでのように事業を継続するのは困難です。
当たり前ですよね。一体誰がそんな事業所に、決して安くないお金を支払って自分の家族を入れようと言うのでしょうか?また現在利用している人達だって「次は自分達が虐待されるのか?」と不安になって、別の事業所に替わりたいと思うのが普通です。
そうなると待っている結末は一つ。事業所の閉鎖、倒産です。
まとめ
介護のNGワードには
①タメ口
②あだ名やちゃん付けで呼ぶ
③赤ちゃん言葉
④命令口調
⑤ちょっと待って
NGワードを使っていはいけない理由は
・職員のレベル低下→職場全体のレベル低下
↓
・利用者の状態悪化
↓
・苦情の増加
↓
・ストレスフルになった職員が虐待を行うようになる
↓
・社会的信用を失い、事業所閉鎖
職員のNGワードの使用常態化は、最終的には事業所の閉鎖にまで繋がるというリスクが潜んでいます。これ、決して大げさではなく、虐待が事件化して閉鎖した事業所のほとんどが同じようなプロセスを辿っています。
リスク回避という点からも、NGワードの使用という小さなリスクの芽を摘むという事も大事です。特に部下や後輩を指導している人は、まずNGワードを何故使ってはいけないのかを、しっかり説明した上で指導してもらいたいと思います。