先日こういうツイートをしました。
介護業界では、なんとなく風船バレーや塗り絵等のレクを高齢者がよくやらされているが、今すぐ改善が必要だと思う🤔
何の為にやるかも大切だが、「利用者がどんな事をやりたいのか」をリサーチもせずにやっても、職員の自己満足にしかならない😅
利用者がやりたい事やれてる時は表情が違います😊😊— カワジロー (@kawajiro8888) December 23, 2019
この高齢者レクの問題に関しては、masa様もブログで苦言を呈しています。
行事って誰の為?何の為?
その中から一部抜粋すると、このように書かれています。
高齢者を対象にするサービス事業のお客様はすべて大人である。そのことを忘れているかのような行事が企画されていないだろうか。認知症のために子供のような言動をとる方がいるとしても、その方々の背中には、その方々の歩んだ人生が積み重なっており、その方々を大切に思う家族の思いが乗っかっている。
そのような方々に対して、チーチーパッパの行事を繰り返して、高齢者やその家族の尊厳を損ない、思いを打ち壊していないかということを考えてほしい。
特養やグループホームでは、クリスマスパーティーと称して、利用者に紙で作った先っぽがとんがった帽子をかぶらせて、ジングルベルを唄わせているところがある。
世間一般的に見ると、それは異常な光景だ。一般家庭で高齢者がクリスマスにそんな紙で作った帽子をかぶってクリスマスソングを歌うなんてことはあり得ない。そんな文化や生活習慣があるわけでもないのに、介護事業者の中では、その異常な光景が当たり前のように作られている。
介護業務を長くやっていると、レクリエーションを業務の中の優先順位として低くなる所が多く、結果としてマンネリで何の目的もなくなんとなく風前バレーや塗り絵をさせたりする介護事業所が多いです。
しかし、そんな感覚でやるレクであればmasa様が言われる通り、利用者の尊厳を傷つけるだけで、利用者への利益のない「百害あって一利なし」のサービスです。
今回は高齢者にとって、本当に必要なレクリエーションとはどういうものかについて考えてみます。
レクリエーションとは?
✔主として自由時間に行われる自発的,創造的な人間活動をいう。楽しみとして行われるもので,実益性をもたない活動とされるが,レジャーと異なり,個人の健康を害したり,反社会的とみなされたりする活動は含まれない。スポーツ,音楽,手芸,工芸,文芸,自然探求,演劇,舞踊,社交的行事などさまざまな活動がある。
引用:ブリタニカ国際大百科事典より
✔仕事・勉学などの肉体的・精神的疲労をいやし、元気を回復するために休養をとったり娯楽を行ったりすること。また、その休養や娯楽。
引用:デジタル大辞泉
レクリエーションとは一言で言えば、「様々な活動を通して、肉体的・精神的な披露を癒やし、活力を得る為の行為」と言えます。
逆に言えば、幾らレクリエーションと称した活動を行っていても、結果的に活動に参加した人がこれらの効果を得られない場合はレクリエーションと言えないということです。
レクリエーションによる効果
①脳や身体機能を活性化させる
クイズなど頭を使った遊びや、言葉を使ったゲーム、折り紙などの指先を使った遊びをすることで脳が活性化し、認知症の予防あるいは、その進行を食い止めることが期待できます。
また高齢により身体機能が衰えているとはいえ、まったく体を動かさなければ筋力は衰える一方です。
レクリエーションでの軽い運動や脳トレは、高齢者の脳機能・身体機能の低下の予防に効果があります。
②社会的交流の促進
高齢になり、体力や身体機能が衰えると自然と外出の機会が少なくなります。その結果、人との関わりが減りそれが引き金となって引きこもりやうつ病になってしまうこともあります。認知症の原因のひとつとして、他者とのコミュニケーションの減少も要因としてあります。
デイサービスや老人ホームでのレクリエーションは、社会生活や他者との交流・繋がりの楽しさを再度感じてもらいながら、コミュニケーションの量を増やすことで、脳の活性化も期待できます。
③高齢者のQOLとADLの向上
脳機能や身体機能が活性化し、他者とのコミュニケーションも増えていくと、自然と毎日の生活の質も向上していきます。その結果QOLの向上が期待できます。これからの介護ではQOLの向上は非常に重要な考えであり、無視できない部分です。
また一方で、身体機能の向上を目指すリハビリテーションの意味も含めたレクリエーションは、ADLを高めることも期待できます。
高齢者に行うレクリエーションの種類
①主に全身を動かすレクリエーション
全身を動かすため、最も運動効果が高いのが特徴で、ADLの改善も期待できます。片麻痺等がある場合でも職員が一定のサポートをすることで参加可能な事が多いです。
全身を使うため、普段行わない動作から転倒などのリスクがあるため、事前にリスク把握をしてから実施する必要はあります。
主なものとして
- 風船バレー
- フルーツバスケット
- ラジオ体操
- お手玉
- 輪投げ
- ボール運び
等があります。
②主に頭を使うレクリエーション
頭を使うレクリエーションとして
- 将棋、以後、オセロなどのボードゲーム
- しりとり
- 間違いさがし
- クイズ
- クロスワードパズル
等があります。身体機能の低下した人でも楽しむ事ができるのが特徴です。
頭を使うので認知機能の低下予防も期待できますし、他者と行うゲームであればコミュニケーションの機会もできることで、他者交流の機会も作る事ができます。
③音楽や体操等の集団レクリエーション
一緒に歌を歌う、楽器で音を奏でる、体操をするなどです。
他者と集団で同じ音楽を奏でたりする行為は、脳科学の世界でも心地良さを感じる事が分かっており心身両面に非常に高い効果が期待できます。好きなアーティストのライブに行った事がある人であれば、その事が自身の体験として理解できると思います。
また集団で行うことで、自然と他者交流の機会ができ社会参加をエンパワメントすることもできます。
レクリエーションは効果優先ではなく、利用者のニーズが一番大事
ここまでレクリエーションによって期待できる効果をまとめましたが、「そんなん分かってるわ」という人も多いでしょう。ではなぜ、利用者が無表情につまらなさそうにレクリエーションをしているのでしょうか?
それはツイートにも書きましたが、利用者が「やりたくない事をやらされているから」です。
幾ら素晴らしい効果が期待できると言われるレクリエーションであったとしても、やりたくないと思っている人に無理やりやらせても効果はないどころか、ストレスになるだけで意味がありません。
風船バレーがやりたい人にやってもらうのは良いですが、やりたくない人には無意味です。
何がやりたいのかきちんとアセスメントしてリサーチを行い、できるだけやりたいことに近いモノを提供する事が必要です。
「そんな事言ってたら、一人一人やりたいことが違うんだから無理でしょ」と反論する人もいるでしょうが、これから選ばれて生き残る事業所になるためには、きちんと一人一人のやりたいことを把握し、提供できるようなサービスでないと価値は生まれません。
今後は僕個人の予想としては、全員一律で同じ内容のレクを廃止し、それぞれがやりたい事を提供しながら、嗜好の近い人達に対してグループでレクサービスを提供していくような流れが強まると思います。
そうでなければ、レクリエーションによって得られるメリットや効果など期待できません。
まとめ
レクリエーションに期待できる効果は
・脳や身体機能を活性化させる
・社会的交流の促進
・高齢者のQOLとADLの向上
しかしこれらの効果を本当に得るためには、利用者のニーズを把握し、やりたいレクリエーションを提供する必要がある
行事やレクをやるために「今日は入浴介助できません」等と平気で言う施設がありますが、本末転倒です。
これはレストランで客に「水は提供できない代わりに、帰りにガムをサービスします」と言っているくらいおかしな事です。
介護事業所は介護サービスを提供するのが本来のミッションです。基本サービスをちゃんと提供するうえで、今回紹介したような質の高いレクサービスを提供することで、はじめて価値あるサービスと認めてもらえます。
高齢者のレクリエーションのネタに困っている時に重宝する本がありますので、参考にしてみてください。