入浴介助加算(Ⅰ)、研修要件の追加に物申す

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入浴介助加算(Ⅰ)、研修要件の追加に物申す ニュース

厚生労働省は10月26日、第229回社会保障審議会介護給付費分科会を開催しました。

令和6年度介護報酬改定も近いこの時期はより具体的な提案がなされます。そこで入浴介助加算(Ⅰ)についてこのような提案が行われました。

 

入浴介助加算(Ⅰ)について入浴介助の技術として求められる研修内容を算定要件に組み込む等、より適切な実施が行われるように見直してはどうか?

 

今回のお話をする前に、これまでの入浴介助加算の扱われ方について簡単に振り返ります。

これまで入浴介助加算は一つだけ。通所介護などを利用した利用者に対し、入浴介助をするたびに50単位を請求できるものでした。しかし2021年改正でこれが変更。

従来の入浴介助加算は(Ⅰ)という区分にされ、50単位から40単位に減額。代わりに(Ⅱ)という新しい入浴介助加算が作られ、これが55単位で以前より5単位だけアップ。

この入浴介助加算(Ⅱ)の意図を簡単にまとめるとこのようなものになります。

 

自宅で利用者が入浴できる事を目指す事業所だけに取らせてあげるよ

 

入浴介助加算(Ⅱ)について、より詳しく知りたい方はコチラをご参照ください。

 

しかしこの新しい入浴介助加算ですが、現状では取得率が非常に低い状況になっています。その算定率は

通所介護が12.2%、地域密着型通所介護が7.5%
(2022年8月審査時点)
全体の1割程度。つまり9割の事業所は単位数が減らされた状態で入浴介助を行っているのです。
そうであるにも関わらず、単位数はそのままに上記のような研修要件を新たに組み込む事が提案されました。
結論を先に申し上げると僕はこう考えました。
何てふざけた事を言ってるんだ、いい加減にしろ!
ではなぜ僕がこのように考えたのか?その理由について説明します。
※この記事を音声で聴きたい方はコチラからどうぞ

入浴介助加算(Ⅱ)の算定率が低い本当の理由

そもそもなぜ単位数の多い入浴介助加算(Ⅱ)の算定率がこんなに低いのか?会議ではこのような理由が最も多かったそうです。

 

利用者の居宅を訪問し評価・助言等を行う医師等の確保・連携が困難なので

現状は自宅を訪問する専門職種は医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員等の専門職が行う事とされています。

つまり介護福祉士などの国家資格のない介護職員が訪問できない。だから加算が算定できないという事です。

 

しかしこれは現実と異なります。恐らく偉い人にあまり睨まれたくない人達が表面的な事を言っているのか?もしくは現場の状況を分かっていない人がそれらしい理由をでっち上げたに過ぎないのです。

(Ⅱ)の算定率が上がらない理由、それはもっと根本的かつシンプルなものです。それが

利用者や家族から自宅で入浴させてほしいというニーズが無い

これが正解です。そもそも通所介護で入浴介助を受ける人のほとんどの理由がこれです。

 

自宅でお風呂に入る事ができる状態じゃないから、デイサービスで入れてあげてほしい

つまり利用者や家族は自宅での入浴など望んでいないのです。

それなのに「いやいや、私達の経営の為にも自宅で入浴できるようにしていきましょう」と言って納得が得られるか?得られるはずがない。むしろ迷惑行為ですらあるのです。

利用者や家族からすると、迷惑行為を受けたうえに余計にお金を請求される。一体誰が好き好んでそんな選択をするのでしょうか?そりゃ算定率が上がらないのも納得できます。

 

そもそもなぜ自宅での入浴を目指す必要があるのか?まるで「自宅で入浴する事が本人にとって最も良い事だ」と言わんばかりです。一体誰がそんな事を決めたのか?その根拠は何なのか?

お金持ちの家であれば、素晴らしい環境で入浴がでできるかもしれません。しかし僕達庶民の自宅での浴室なんて、狭いし危ないし冬は寒いしで介護が必要な高齢者にとって最適な場所とは言えない事がほとんとです。

それに自宅での浴室が古くて汚いからという理由で、自宅で入浴せず銭湯や温泉などを利用している人だって大勢います。つまり自宅で入浴する事がその人にとっても必ず最良の選択ではないのです。

それよりは要介護の高齢者にとって安全で快適に入浴できる事が一番大事です。それができるのであれば場所など問わないはずです。まさに入浴介助加算(Ⅱ)は現場を知らない人間が適当に作った、実質の減算が目的だったような加算と言えます。

研修をやっても質の改善には繋がらない

「入浴介助をする職員が研修する事は大事でしょ」

このロジック、一見筋が通っているように見えます。しかしこれは僕達プロからするとただのミスリードです。

まず入浴介助というのは介護の基本中の基本です。

介護は「食事」「排泄」「入浴」の3つが身体介護の基本と言われています。

だからこそ介護福祉士は当然として、介護福祉士をもっていない職員であっても初任者研修を受講した人であれば最低限の知識やスキルは身に着いています。

当たり前ですよね。そもそもこの3つができない状態で介護の仕事なんてできるわけないのですから。料理人が切る、焼く、揚げるといった基本的なスキルが無い状態で仕事をしないのと同じです。

もちろんスキルの差は個人差があります。しかしそれは職場内の研修などで、介護福祉士の資格を持つリーダークラスの職員等が新人やスキルが未熟な人に教育すれば済む事です。

この提案でどの程度の内容の研修を考えているのか?現時点では不明ですが、外部研修などに数時間参加する程度の研修でスキルが向上する事はありません。入浴介助のスキル向上に一番役に立つのは、とにかく実地で繰り返し行う事です。

慣れないうちはバイザーの職員に見てもらいながら、一緒にやっていく。そして改善点についてフィードバックを受け、次に繋げていく。この地道な積み重ねでしか向上しません。

恐らく研修に参加してもほとんどの職員がこう思うでしょう

その程度の事は、知っていますけど

しかしこの研修参加に職員を出さないといけないのであれば、その分現場は人手不足に苦しむ事になります。

職員のスキルは向上しないわ、現場の人手不足を加速させるわ、誰の得にもなりません。それが今回の研修要件の追加が招く結果です。

入浴介助加算の単位数は少なすぎる

そして僕が以前から怒りを覚えていて、今回の提案でさらに怒りのゲージが上がりました。

その理由は入浴介助の単位数が少なすぎる問題です。

入浴介助加算(Ⅰ)の単位数は40単位/回。つまり入浴介助1回に対してたったの400円しか請求できないのです。

400円なんて今時近所の安い銭湯でももう少しかかりますよね。つまりお風呂を利用するだけでもそれ以上の料金が請求できるわけです。さらに加えて入浴介助というプロのサービスを受けるわけです。

これがたったの400円で買い叩かれている、その状況が放置され続けている。それが日本の介護保険制度の現状なのです。普通に考えてどんだけブラックなんだと思いませんか?

 

僕の個人的な考えとしては、入浴介助は1回3000~4000円は請求しても何もおかしくない。それだけ価値のあるサービスです。

想像してください。真夏の外気温が30度を超える暑さの中、体感温度で40度近くまで上昇した浴室で肉体的に非常に負荷のかかる入浴介助。それを2~3時間連続でやるのです。

さらに入浴中は事故の危険が高くなります。だからこそ入浴介助は肉体的な負担だけでなく、精神的な負担も高くなります。

さらに入浴中に排尿や排便を失禁してしまう人がいればその片付けもしなければいけないし、特定のシャンプーやボディソープを使いたい人がいればそれも間違えないようにしないといけない。補聴器を使っている人がいればそれを外して入浴する事と、終わった後に確実に装着しているかの確認。褥瘡などの処置が必要な人がいれば、入浴の忙しい時にタイミングよく行わないといけない・・・etc

どうでしょう。これだけのサービスが1回400円。控えめに言ってふざけているとしか言いようが無いのは僕だけでしょうか?

例えば入浴料として銭湯並みに500円程度。それに介助のサービス代金として3000円~4000円。合計すると4000円前後は請求してもおかしくないでしょう。

つまり、入浴介助加算(Ⅰ)であっても現在の10倍。400単位/回に報酬アップ

これが今国が議論すべき点であり、それもせずに研修要件追加云々なんてのは的外れなのです。

 

僕は今働いている人が一人でも多く、自分達の意見を上げる事が大事だと思っています。そうしなければ国は図に乗っていつまでも介護業界で働く人達を安く買い叩く事を続けます。

それをさせない為に改めて言います。

 

研修要件の追加?ふざけるな!そんな話はまずは加算を10倍に上げてからだろ!

 

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