クライエントとの信頼関係を構築し、スムーズな面接をしていく上で覚えたい技法に「ペーシング」というものがあります。
これはどういうものかというと、僕達人間は、自分と似た部分の多い人に親近感を覚えて仲良くなりたいと思いやすいですよね?
実際自分の友人などの多くは「自分と馬が合う」から付き合っているというケース多くないですか?
これは心理学的に言うと「類似性の法則」というものに影響を受けています。この類似性の法則を応用した技法が「ペーシングなのです」
今回はペーシング技法のポイントをご紹介します。
①相手の仕草や表情を真似してみる
あくまで、あくまでさり気なくやることが条件ですが相手の仕草や表情を真似してみてください。
例えば相手が腕を組んだら自分も腕を組んでみる。口元を触ったら、自分も同じようにしてみる。
笑う時に口を大きく開けるのであれば、自分も同じようにしてみる。
これは心理学的には「ミラーリング」と言って、相手に安心感を与える効果が期待できます。
②相手の「声」に対してペーシングする
会話をしているのだから当然相手の「声」があります。この声に対して先程のミラーリングのように、相手と同じような声に自分が合わせていきます。
具体的には
・トーン(高い声、低い声)
・テンポ(速い、遅い)
・ボリューム(大きい、小さい)
・リズム(話の展開速度)
例えばゆっくり、低い声で話す人にはそのように。速く、高い声でせっかちな感じで話す人には、やや速いテンポで会話を進める等です。
単純な事ですが、相手とペースを合わせるだけでクライエントはあなたに対して不快感どころか、「この人と話していると気持ちいい」という感覚すら感じはじめ自分から積極的に様々な事を語ってくれるようになります。
③相手の言語レベルをペーシングする
これはどういうことかと言うと以下のような言語のレベルも同じように合わせていきます。
・敬語レベル(丁寧な言葉遣いがいいのか、ややくだけた感じがよいのか)
・会話の難易度(誰にでも分かるような言葉と言い方が良いのか。専門用語等、難しい言葉や、法律の話など難しい内容の会話を好むのか)
・感情レベル(冷静に話したほうが良いのか、相手の感情にフォーカスしたほうが良いのか)
クライエントには様々な人がいます。ものすごく丁寧な言葉づかいを好む人は「かしこまりました」「承知しました」
しかし、大らかな感じの言葉遣いの人は「分かりました」のほうがしっくり来るという感じです。
会話の難易度もそうです。例えば介護保険制度の説明をするときでも簡単に分かりやすい表現で言ったほうが良いことのほうが多いです。
しかし、逆に高学歴で社会的地位の高い人などに、子どもでも分かるような説明では「バカにしているのか」と不快感を抱く為、「公的制度の一つで、医療保険制度と異なり認定申請後、介護度を取得することで初めて利用可能になります」くらいの言い方のほうがいいです。
感情レベルはその時々のクライエントの感情状態で使い分ければ良いと思います。ただ覚えておきたいのは、クライエントが感情的になったからといってケアマネも一緒にその感情に引きずられてはいけないということです。
相手の感情レベルがどうあれ、常に冷静な状態を保つことを心がけてください。
まとめ
今回は面接技法の中でも、特に効果的なペーシングについて紹介させていただきました。
よくこの業界では「お年寄りにはゆっくり、はっきり、大きな声で話しましょう」と言われます。
それは間違いではないかもしれないが、正確には「耳が聞こえ辛く、反応速度が低下している人には」という条件があって初めて成り立つノウハウであり、そうでない人には場合によっては相手に不快感すら与えます。
そしてペーシングの技法を知らないが為に、多くのケアマネが全てのクライエントに対して上記のような対応をしようとするため「バカにして」と相手を不快にしている可能性があります。
しかし、このペーシングを習得できればそのようなコミュニケーションのズレを修正してクライエントと円滑な関係を築きやすくなる為、是非覚えてみてください。