ケアマネジャーの苦手項目のトップ3くらいには、常に君臨しているのがこの「医療連携」ではないだろうか?
実際のところ福祉系職種からケアマネジャーになった人のほとんどは、突っ込んだ医療の知識なんて持ち合わせていなくて
「なんだか医療って難しそうだし、医療職って気難しい人が多そうで怖い」
こんな気持ちになる人が多いだろうし、その気持ちは分かります。僕も福祉系職種からケアマネになりましたから(笑)
昔は医療連携しようとして病院に行っても「こっちはお前に用なんかないわ!!」くらいの勢いで相手にされない事もありました😂
しかし、法改正の度に医療と介護の連携の強化が謳われ、連携することによる加算が医療側・介護側双方につくようになってきた背景もあって以前よりも医療側が積極的に連携をとってくれるようになってきました。
しかし、そうはいってもケアマネにとって未だにハードルが高いのがこの医療連携だと思います。
そこで今回の記事では、医療との連携の基本的なポイントをご紹介してみます。
医療連携の基本的なポイント
①全ての利用者に医療の連携は必要
医療との連携は医師が訪問看護の必要性を認めたから必要、などというものではありません。
要介護認定を受けた人には「主治医意見書」が必ずあります。つまり介護保険の利用者は全員何らかの医療ニーズを抱えているという考え方です。
利用者の既往歴、治療中の病気、受診している病院と診療科、治療内容、薬情報、予測される経過などを知ることなしに医療面のケアマネジメントはできないです。
支援を開始したばかりの利用者は一度主治医意見書を作成してくれた主治医に担当のケアマネになったことの挨拶に訪れ、今後の療養上の注意点を教えてもらう等、そういったことから連携を開始するのがお勧めです。
②リスクマネジメントの必要性から
全ての利用者に医療ニーズがあるのなら、全ての利用者に医療的リスクが存在すると考えることができます。
逆に言えばその医療的リスクをきちんと知らずに支援を行うことは最悪利用者の命を脅かしかねない無謀なことなのです。
医療面のリスクマネジメントのポイントとして
・食事(食べてはいけないもの。反対に積極的摂取が望まれるもの)
・ケアの内容(やってはいけないケア、やらなくてはいけないケア)
・ケア提供時における判断基準(入浴時の血圧、外出可能な時間など)
・現在服用している薬の情報。その中でも服用をきちんとできなければいけない薬
・本人の健康観察上のポイント(顔色、呼吸、足取りなど)
・急変時の対処法
上記のように複数存在します。全ての利用者に全項目があてはまるわけではないですが、こういった事を押さえながらケアマネジメントを展開することで有効なリスク対策ができます
③顔が見える関係の重要性
電話で医療機関に入院中の患者の情報を聞こうとしたら「個人情報なのでお答えできません」と言われる。
ケアマネは「必要な情報を何で教えてくれないんだ。これだから医療職はやりにくい・・・」など考え不満を抱く。
ケアマネからすると理不尽なように思えますが、医療従事者にもまた「守秘義務」が存在します。
昨今の個人情報の取り扱いの重要性が増々叫ばれる中、挨拶すら対面で交わした事のない相手に患者の大切な情報を教えられないのは当然の対応なのです。(逆にペラペラ喋ってしまう医療機関のほうが、個人情報の取扱いが適切にできていないとも言えます)
「相手が情報を教えてくれない」ことを嘆く前に「相手に情報を教えてもらえるだけの信頼関係が築けているか」の振り返りが必要です。
この場合一度も会ったことのない相手であれば直接訪問して自己紹介をし、まずは自分から情報提供するなどのアクションを起こしてください。
④医療職に対しては「意見を仰ぐ」
「先生、今度訪問看護を入れることにしたので指示書をお願いします」
「訪問看護師さんは服薬確認と浣腸をお願いします」
「訪問リハのPTさんは週2回下肢筋力のリハビリをお願いします」
こんな風に仕切り魔的なケアマネさんいませんか??
「私はケアマネなんだから、ある程度仕切らないといけないでしょう!!」と考える人がいるかもしれません。
しかし考えてほしいのは、このようなアプローチの仕方で医療職がチームのなかで適切に機能すると思います?ということです。
結論を言えばこれでは難しいです。仮に看護師出身のケアマネでも全ての医療領域において高い専門性を発揮できるわけではないし、現場を少し離れれば、現在の最先端の医療の常識についていけなくなるのが普通の世界です。
なので、コツとしては医療職に対しては相手の意見を仰ぎ、どうしていくべきかを議論しながら支援の方向性を決めていくといいです。
(例:「今後○○という理由で訪問看護師さんに支援をお願いしようと考えているのですが先生はどうお考えになりますか?」「○○のような状況にあるのですが、訪問看護師さんはどのような支援が必要だと思いますか?」など)
そうすることで医療職が専門性をより発揮してくれやすくなります。
ただ勘違いしてはいけないのは「意見を仰ぐ」のと「何でも医療職の言うとおりにする」のは違うということです。
聞くべきところは耳を傾け、それでは難しい、或いは利用者の思いと大きく逆行するような場合はきちんとケアマネとして相手に意見を伝えることも重要になります。
⑤相手がしてほしいことをする
連携の最も基本的な考えに「相手がしてほしいことをして、してほしくないことはしない」ということです。
医師、看護師等と連絡を取る際時間帯は何時頃、どのような方法(電話、FAX、メールなど)が良いのかは事前に確認しておきましょう。医師に直接聞きにくい場合は事務所の人やMSWに確認するのもいいと思います。
また連絡を取り合う際は相手の貴重な時間をもらっているという事を意識してください。
いざ電話が繋がっても何を言おうとしたのか分からなくなってしまう、或いは要点がまとまっていない会話をする等。
これではお互いに貴重な時間を無駄にしてしまい、相手に「連携する価値のないケアマネ」と悪い印象を与えてしまいます。
連絡する際は事前にメモ用紙などに要点を整理して何を聞くのかまとめておくとスムーズなやり取りができます。
後覚えておきたいことなのですが、疾患の基本的な知識などは敢えて聞く必要はあまりないと思います。
それらの知識は今の時代本やインターネットでも入手できます。医師や看護師に聞かなくても分かるようなことであれば自分で学習するという姿勢も持ってください。ただ自己学習を全力でやった結果、分からない事は聞いてもいいと思います。
⑥アポなし訪問は迷惑
これは何なのかと言うと事前にアポイントを取らず利用者の受診に同行し、医師と直接やり取りをしようとすることです。
実際診察室へ同行し、利用者と一緒に医師の話を聞いたり、場合によっては利用者の意思を代弁したりするのは有意義な連携にはなります。
しかし、やり方を知らなければいけません。受診に同行したいと思う場合は事前に次回の受診予定を把握し、受付などに同行させてもらいたいことを先方の医療機関に伝える配慮とマナーが必要です。
また受診当日も外来の受付に「事前にお伝えした通りですが、本日ケアマネとして○○さんの診察に同行してもよろしいですか?」と確認をとってください。(事前にアポを取っていても、当日外来スタッフ等がその事を把握していないことは実際多いです)
診察の内容によっては本人、家族以外に話せないこともあります。その為常に相手に断れる余地を残しておくことが大事です。
⑦連携したいと思わせる
「連携」特に医療職との連携は簡単に言えば「お互いに有益な情報交換をし合う事」です。
この事を踏まえてまずは医師や看護師の欲しい情報をこちらから提供してみてください。
医師の欲しい情報として
・自宅での生活の様子
・自分が処方した薬をきちんと飲めているか。副作用はないか。
・どんな介護サービスをどのような予定で利用しているのか。
・家族は現状をどのように考えているのか、等家族状況。
これらはあくまで一例ですが、上記のようなことを知りたいと考えている医師は多いため積極的に情報提供してください。そうすることで医師からも、ケアマネとして必要な情報を得やすくなります。
⑧世の中の動きに敏感になる
介護保険制度が目まぐるしく変化しているように医療職の置かれている状況も目まぐるしく変化しています。
現在の医療業界は報酬の締め付けが厳しくなってきていることに加えて、昔からずっとある医師、看護師不足にどこも悩まされており現場はとても忙しく、厳しい環境にあります。そういった相手の置かれている状況を理解し、配慮ある関わりができればおのずと信頼関係が築きやすくなります。
まとめ
様々な基本ポイントがありますが、医療連携から逃げないで向き合っていく為には「医療との連携は全ての利用者に必須。私は利用者の事を支えたい。だから苦手でも頑張って連携する」
この事を常に頭に入れながら医療との関わりを続けることで、徐々にスムーズな連携ができるようになると思います。是非参考にしてみてください。