お金に困った人を助ける「生活福祉資金貸付制度」を解説します

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お金に困った人を助ける「生活福祉資金貸付制度」を解説します 社会資源

この記事はこんな人の役に立ちます

社協がお金を貸す「生活福祉資金貸付制度」
聞いたことはあるけど、ややこしくてどういう制度なのかよく分からなくて困っている
僕達ケアマネが人の生活を支える上で切っても切り離せないのが「お金」の問題です。
幾らキレイゴトを言っても、お金がなければ人の生活は成り立ちません。その為お金に関する制度等の知識を深めることは必須のスキルなのですが、これが苦手なケアマネは多いです。
しかし!ここは考え方を変えましょう。
お金に関する知識を身につける事ができれば、支援の幅が広がり良い仕事ができるうえ、ケアマネを辞めた後も自分自身の人生において絶対に役に立つのです。
今回はそんなお金に関する制度の中でも、あまり知られていませんが、コロナで日本中が経済的に苦しい今だからこそ知っておいてほしい「生活福祉資金貸付制度」について紹介します。

生活福祉資金貸付制度とは?

生活福祉資金貸付制度とは?

この制度の実施主体は各市町村の社会福祉協議会です。

対象は経済的に困窮している世帯が対象です。

「低所得世帯」
「障害者世帯」
「高齢者世帯」

これらの世帯を対象に、お金を貸す制度です。あくまで「貸付」ですのでもらえるわけではなく、ちゃんと返す必要があるので家や車のローンにイメージは近いです。

貸付けの種類には大きく4つあります

「総合支援資金」
「福祉資金」
「教育支援資金」
「不動産担保型生活資金」

ではそれぞれの資金の内容について見ていきましょう。

総合支援資金

失業などにより収入が減少し、生計の維持ができなくなった世帯に対して、生活の立て直しの為に貸し付けられる制度。

種類として「生活支援費」「住居入居費」「一時生活再建費」の3種類

3種類に共通する貸付条件

償還期限

据え置き期間終了後10年以内

貸付利子

・保証人あり:無利子

・保証人なし:年1.5%

保証人:原則必要だが、保証人なくても貸付を受けることはできる

①生活支援費

生活再建までの間に必要な生活費用を借りる事ができる

貸付限度額

(二人以上)月20万円以内
(単身)  月15万円以内
貸付期間

原則3月(最長12月)

据え置き期間

最終貸付日から6ヶ月以内

※据え置き期間とは、通常の元本+利息分の月々の返済ではなく、利息分だけ返済したので良い期間の事

②住宅入居費

敷金、礼金等住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用を借りる事ができる

貸付限度額

40万円以内

据え置き期間

貸付けの日(生活支援費とあわせて貸し付けている場合は、生活支援費の最終貸付日)から6月以内

③一時生活再建費

生活を再建するために一時的に必要かつ日常生活費で賄うことが困難である費用を借りる事ができる。例えば
・就職・転職を前提とした技能習得に要する経費
 ・滞納している公共料金等の立て替え費用
 ・債務整理をするために必要な経費  等

貸付限度額

60万円以内

据え置き期間

貸付けの日(生活支援費とあわせて貸し付けている場合は、生活支援費の最終貸付日)から6月以内

福祉資金

①福祉費

この福祉費ですが、福祉という名目がついているせいなのか相当広範囲の使用用途が認められています。以下が福祉費で認められる範囲です。

・生業を営むために必要な経費
・技能習得に必要な経費及びその期間中の生計を維持するために
 必要な経費
・住宅の増改築、補修等及び公営住宅の譲り受けに必要な経費
・福祉用具等の購入に必要な経費
・障害者用の自動車の購入に必要な経費
・中国残留邦人等に係る国民年金保険料の追納に必要な経費
・負傷又は疾病の療養に必要な経費及びその療養期間中の生計を
 維持するために必要な経費
・介護サービス、障害者サービス等を受けるのに必要な経費及び
 その期間中の生計を維持するために必要な経費
・災害を受けたことにより臨時に必要となる経費
・冠婚葬祭に必要な経費
・住居の移転等、給排水設備等の設置に必要な経費
・就職、技能習得等の支度に必要な経費
・その他日常生活上一時的に必要な経費

貸付限度額

トータル580万円以内

据え置き期間

貸付けの日(分割による交付の場合には最終貸付日)から6月以内

償還期限

据置期間経過後20年以内

貸付利子

・保証人あり:無利子

・保証人なし:年1.5%

保証人:原則必要だが、保証人なくても貸付を受けることはできる

 

ただし使用用途毎にそれぞれ条件が異なります。詳細は

福祉費対象経費の上限目安額等

厚労省のHPに詳しく書かれていますのでこちらをご参照ください。

②緊急小口資金

緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に貸し付ける少額の費用。予想外のちょっとした出費が該当します。

貸付限度額

10万円以内

据え置き期間

貸付けの日から2月以内

償還期限

据置期間経過後12月以内

貸付利子

無利子

保証人

不要

教育支援資金

主に若者が学校に通ったり、入学するのに必要なお金を借りる事ができます。

「教育支援費」「就学支援費」の2種類です。

2つに共通する貸付条件

据え置き期間

卒業後6月以内

償還期限

据置期間経過後20年以内

貸付利子

無利子

保証人

不要。ただし世帯内で連帯借受人が必要

①教育支援費

低所得世帯に属する者が高等学校、大学又は高等専門学校に修学するために必要な経費を借りる事ができる。

貸付限度額

<高校>月3.5万円以内
<高専>月6万円以内
<短大>月6万円以内
<大学>月6.5万円以内
※特に必要と認める場合は、上記各上限額の1.5倍まで貸付可能

②就学支援費

低所得世帯に属する者が高等学校、大学又は高等専門学校への入学に際し必要な経費を借りる事ができる。

貸付限度額

50万円以内

不動産担保型生活資金

多分この資金が最も意味が分からないという人が多いと思います。

これは通称「リバースモーゲージ」と言って聞いたことがある人もいるかもしれません。

簡単に説明するとこの制度、こんな感じです。

Aさんは80歳。現在の状態だと大体90歳くらいまで生きると予想されます。
Aさんは一戸建てのマイホームを持っていて、現在の不動産評価価格が1000万円だったとします。お金を貸す側は、このマイホーム(不動産)を担保にお金を貸すということです。
具体的に言うと、だいたい評価価格の7割が貸付のマックスになる為
1000万円×70%=700万円
700万円÷10年(余命)=70万円
これが年間貸せるお金になります。そこから一月単位の数字を弾き出すと
70万円÷12ヶ月=5.833・・・

一月で約5万円ほどお金を借りる事ができます。そしてAさんが死んだら相続人が不動産を売却して貸した人にお金を渡す。そうやって元本を回収するという仕組みです。

この仕組みは貸す側からするとAさんが想定したよりも早く亡くなると得になります。逆にAさんが想定したよりも長く生きてしまうと担保割れが生じてしまいます。

他にも金利の上昇や、不動産価格の下落等担保割れのリスクがあり、担保割れが生じると融資は打ち切り。それによって発生した負担は利用者がが背負う事になっています。

非常に複雑な制度であるため、金融知識に自信がない場合はそういった事に詳しい人のアドバイスをもらいながら提案は慎重に進める事をオススメします。

①不動産担保型生活資金

低所得の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金

貸付限度額

・土地の評価額の70%程度
・月30万円以内
・貸付期間(借受人の死亡時までの期間又は貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間)

据え置き期間

契約終了後3月以内

償還期限

据置期間終了時

貸付利子

年3%、又は長期プライムレートのいずれか低い利率

保証人

必要。推定相続人の中から選任

②要保護世帯向け不動産担保型生活資金

要保護の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金

貸付限度額

・土地及び建物の評価額の70%程度(集合住宅の場合は50%)
・生活扶助額の1.5倍以内
・貸付期間(借受人の死亡時までの期間又は貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間)

据え置き期間

契約終了後3月以内

償還期限

据置期間終了時

貸付利子

年3%、又は長期プライムレートのいずれか低い利率

保証人

不要

コロナウイルスによる生活福祉資金貸付制度における特例貸付

コロナウイルスによる生活福祉資金貸付制度における特例貸付

この制度は先程紹介したように、基本的には低所得世帯を対象とした制度でした。

しかし今回のコロナウイルスの影響で普通に生活できていた人も、休業や失業状態に突然なって生活が苦しくなっている人がたくさんいます。そんな人達の少しでも助けになるよう今回特例での貸付ができるようになりました。

まず福祉資金に分類される「緊急小口資金」です。それでも足りない場合に総合支援資金から「生活支援費」を借りる事ができます。

①緊急小口資金(コロナ特例)

貸付対象

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生活維持のための生活費を必要とする世帯。
他道府県社会福祉協議会で今回の特例貸付を既に受けている世帯は対象外。

基本的な条件として休業したことで、収入が減った方が対象になります。

貸付上限額

20万円以内

以下に該当する世帯であれば貸付限度額をマックスの20万円にできます。
・世帯に新型コロナウイルス感染症の罹患者等がいるとき
・世帯に要介護者がいるとき
・4人以上の世帯
・世帯に新型コロナウイルス感染症拡大防止策のため、臨時休校した学校等に通う子の世話をすることが必要となった労働者がいるとき
・世帯にかぜ症状等新型コロナウイルスに感染した恐れのある小学校等に通う子の世話を行うことが必要となった労働者がいるとき
・世帯に個人事業主等がいること等のため、収入減少により生活費が不足するとき
・上記以外で、休業等による収入減少等で生活費の貸付が必要なとき

据置期間 

1年以内
返済期間 

2年以内(24回以内)
連帯保証人 

不要
利子

無利子

②生活支援費(コロナ特例)

貸付対象

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、収入の減少や失業等により生計維持が困難となり、生活再建までの生活費を必要とする世帯が対象。
他道府県社会福祉協議会で今回の特例貸付を既に受けている世帯は対象外。
緊急小口資金【特例貸付】と同じ時期に貸付けることはできません(緊急小口資金を利用した後に、収入減が続く場合や失業等となった場合に、総合支援資金を申請することはOK)

貸付上限額

(単身世帯)月15万円以内
(複数世帯)月20万円以内
貸付期間

原則3か月以内
据置期間

1年以内
返済期間 

10年以内(120回以内)
連帯保証人 

不要
利子 

無利子

まとめ

今回は生活福祉資金貸付制度について紹介させてもらいました。

給付金と違ってあくまで貸付ですのでいずれは返さないといけないものではありますが、当面の急場を凌ぐ為の一つの選択肢にもなります。

この制度の良い所は保証人がなくても借りれることや、利息がない場合が多く、さらに返済の猶予期間も長いということです。普通に銀行や消費者金融でお金を借りた場合はこんな緩い条件で借りることはできません。

さらに相談次第では返済が免除になる場合もあります。もちろん全力で返済する為の努力は必要なので、それをやっても難しい場合や病気などが原因で返済の為のお金を作れない等の理由が該当すると考えられます。

 

今回紹介したような介護保険以外のお金に関する制度を勉強する場合にオススメの本がこちらです。

介護業界で精力的に仕事をしている行政書士の人が著者。

ありそうな事例毎に制度が紹介されているのが特徴です。

デメリットとして、個人的には制度別に目次を作ってほしいタイプなので、自分が調べたい制度を探す時に手間がかかるということです。また高額療養費制度など、変更が頻繁にされるものに関する数字などの内容は最新ではない為、確認の必要はあります。

メリットとしては字も大きく、難しい制度も事例を切り口にシンプルにまとめられている為、お金に関する制度が苦手な人でも分かりやすく、勉強するきっかけには最適だということです。

 

ケアマネジャーは現実問題として、お金に関する知識が弱い人は利用者や家族は本気では頼りにすることができません。お金に関する質問をされて「私にはよくわかりません」で終わらせているとしたら、きっと相手はこう思います。

「この人に相談しても、自分の困り事は大して解決しないな」

僕も以前はお金に関する制度が苦手で避けていました。しかしそれでは信頼関係がなかなか築けず、利用者離れも加速していき事業所の運営が苦しい時期がありました。

そこでニーズの多かったお金に関する知識を深め、対応できるようになった結果利用者からの信頼も向上し、自分の仕事に自信が持てるようになってきました。その結果以前より多くの人からケアマネになってほしいと依頼を受けるようになりました。

これを読んだ人が少しでも苦手を克服し、自信をもって仕事ができるようになってほしいと思います。

 

 

 

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