生活保護に関しての話題でよく「世帯分離」ってワードを聞いたことがありませんか?
「よく聞くけど、あんまりよく分かっていない・・・」
そんな方はいませんか?僕も最初の頃「なんかよく分からんけど、世帯を分けちゃうんでしょ?」という感じでした。
でも「じゃあ、なんでそんな事するんですか?」と聞かれると「・・・・・なんでだろう~(笑)」状態です。
そこで、今日は生活保護の世帯分離について解説したいと思います。
生活保護は世帯単位で行われる
生活保護の大前提なんですが、生活保護は個人を対象にするのではなく「世帯」を対象に行われる制度です。
独居の場合は「個人=世帯」なので、まるで個人が対象のように感じるかもしれませんが「夫婦=世帯」も同じ意味ですので、この場合は夫婦2人を対象に生活保護が行われることになり、個人が対象でないことが理解できます。
世帯分離とは?
生活保護が世帯を対象にすることは分かりました。
ちなみに世帯とは「実際に同一の住所で寝起きし、生計を同じくする者の事」を言います。
世帯分離とは「世帯の一部を他の世帯員と分けて保護する事」です。
この世帯分離に該当するには通常の生活状況とは異なる「例外的なケース」である必要があります。詳細は.
生活保護法による保護の実施要領について(昭和 36 年 4 月 1 日厚生省発社第 123 号厚生省事務次官通知)【改正案】
これを見てもらうといいと思います。ただ、あまりにも長文過ぎて分かりにくいので簡単にまとめてみます。
ポイント①
世帯員の中に、お金を稼ぐ能力があるのに働かず、職探しをする努力もしない。その者のせいで、他の世帯員の生活が苦しくなって保護を必要としている。
例:ギャンブル依存症の息子が、年老いた母親の年金をギャンブルで使い込んでしまい、その母親まで生活が苦しくなっている。
ポイント②
夫婦、親子、兄弟等、生活保持義務がある親族が、その世帯に転入してきたことにより生活が苦しくなった時。
例:夫婦でなんとか生活していたが、急に夫の弟(年金などの収入0)が一緒に住むことになり、その影響で保護が必要な状態になってしまった。
ポイント③
保護を必要としない者が、生活保護世帯の世帯員の世話などを目的に転入してきた場合
例:独居で生活保護を受給しながら生活をしていた高齢の女性の家に、介護などを目的に姪っ子が一緒に住むようになった
ポイント④
寝たきりなど、重度の介護を必要とする高齢者や障害者で、同居し常時の介護が必要で、世帯分離を行わないとその世帯が要保護状態になる場合
例1:要保護対象者が、自分に対し生活保持義務がない世帯に属している場合。
寝たきりの高齢女性が、姪っ子などの世帯に属している場合。
例2:例1以外で、生活保護を必要とするものに対し、生活保持義務関係にある者の収入が自分の一般生活費以下の場合
寝たきりの高齢女性が、息子夫婦と同居している世帯。世帯収入が一般生活費以下だが、寝たきりの高齢女性を世帯分離して保護を受ければ、息子夫婦は保護を受けなくても生活が成り立つ場合。
ポイント⑤
その物を出身世帯員と同一世帯と認定することが、出身世帯員の自立助長を著しく阻害すると認められる時
例1:6ヶ月以上の入院、または入所を必要とする患者などに対して、出身世帯員のいずれもが生活保持義務関係になく、世帯分離を行わないとその世帯が要保護世帯になる場合
おじが6ヶ月以上入院。入院費などにより一緒に暮らしていた甥っ子の生活が苦しくなっている場合等
例2:生活保持義務関係にある出身世帯員が、1年を超える入院や入所をしており、かつ引き続きその状況の継続が必要と認められる場合。
母親の年金と、自分もパートで働き、その収入で暮らしていた娘。ところが母親が病気で植物状態になり1年以上が経過。入院治療費の支払いが負担になって生活が苦しくなっている場合。
例3:例1、2で入院している世帯員が入院・入所を継続している間。
例4:例1~3の者が退院・退所したが6ヶ月以内に再入院・入所しその後も長期間に渡り入院・入所が必要になる場合
ポイント⑥
⑤で入院・入所をしている出身世帯員で、かつ生活保持義務関係にない者が収入を得ているが、長期入院・入所をしている者と世帯が同じだとその者の自立を阻害する場合
例:長期入院をしてい義父と、息子が一緒に生活。息子は収入があるが、義父の入院治療費で生活を圧迫している場合等。
ポイント⑦
同一世帯員で、生活保持義務関係にない者が収入を得ている場合で、結婚や転職の為1年以内において自立し、同一世帯員に属さなくなる場合。
例:父親が異なる義姉妹が一緒に生活していた。姉妹はパート収入でなんとか生活していたが、妹が半年後に結婚し県外で暮らすことになり、姉の収入だけでは生活が困難になる場合等
ポイント⑧
救護施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、障害者支援施設または児童福祉施設(知的障害児施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設のみ)の入所者(障害者支援施設については、重度の障害を有するために入所期間の長期化が見込まれる者のみ)と出身世帯員を同一世帯員として認めることが適当でない場合
例:一緒に生活していた甥と甥っ子。甥が特養に入所した場合
ポイント⑨
その他(就学関係)
Ⅰ:高校や専門学校に就学し、卒業することが世帯の自立助長に効果的と認められる場合は就学しながら保護を受けることができる。
Ⅱ:夜間大学などで就学しながら保護を受けられる(条件付き)
・その者の能力、経歴、健康状態、世帯の事情などを総合的に勘案の上、可動能力を有する場合には十分それを活用していると認められること
・就学が世帯の自立助長に効果的であること
Ⅲ:次のいずれかの場合については世帯分離して差し支えないこと
・保護開始時に、今大学に就学しているものが、卒業するまでの間、卒業することが世帯の自立助長に効果的であること
・つぎの貸与金を受けて大学で就学する場合
A:独立行政法人日本学生支援機構法による貸与金
B:国の補助を受けて行われる就学資金貸与事業による貸与金であってAに準ずるもの
C:地方公共団体が実施する就学資金貸与事業による貸与金。(Bに該当するものを除き、Aに準ずるもの)
・生業扶助の対象とならない専修学校または各種学校に就学する場合であって、その就学が特に世帯の自立助長に効果的であると認められる場合
まとめ
世帯分離に該当するケースは複数ありますが、「一緒に生活をしていても、分離したほうが自立にむけて効果が期待できるなら世帯分離が可能」
一言でいうならそういう場合に、世帯分離ができると考えて良いと思います。なのでケアマネとして世帯収入は最低生活費を上回っていたとしても、世帯分離により保護の受給が可能になるかもしれないことを頭に入れ、ケースワーカーなどに必要な情報提供をしていきたいところです。