令和2年1月8日、厚労省が介護予防ケアプランの報酬を再考し、できるだけ地域包括支援センターから居宅へプラン作成を推進していきたい考えを表明しました。
厚労省は来年4月の介護報酬改定に向けて、要支援の認定を受けた高齢者を対象とする介護予防支援のケアマネジメントを再考する方針だ。地域包括支援センターが居宅介護支援事業所に委託しやすい環境を作り出す観点から具体策を構想する。
社保審・介護保険部会で12月27日にまとめた意見書に、こうした考えを盛り込んだ。「介護報酬上の対応についても検討が必要」と明記した。
2016年度のデータでは、居宅に予防プランの業務を委託している包括は全体の47.7%となっている。現行の介護予防支援費は431単位。これで賄える委託料を設定している市町村が多い。現場のケアマネなど関係者からは、委託をさらに広げたいなら対価をもっと引き上げるべきとの意見が出ている。厚労省の狙いは包括の機能強化につなげることだ。高齢化で相談支援のニーズが増大しているほか、地域全体を見据えた連携・調整のコーディネート、地域ケア会議の運営などの重要性が高まっている。家族の介護離職の防止や「8050問題」へのコミットなど、社会に期待される役割はさらに広がってきた。土日・祝日に開所するところも増えており、「あまりにも業務が多過ぎる」などと問題を提起する声も少なくない。負担が重い予防プランの委託を進めることが、状況を好転させる有効な手段の1つになり得ると見込んでいる。
厚労省は今回の意見書に、「地域の既存の社会資源と効果的に連携し、包括の相談支援の機能を強化していくことが必要」と説明。「(予防プランの)外部委託を行いやすい環境の整備を進める」と書き込んだ。
あわせて、担い手の減少が顕在化したケアマネの「処遇改善」や「事務負担の軽減」に取り組むとも謳っている。今年の夏以降に本格化する次期改定をめぐる議論では、これらが一体的に取り上げられることになりそうだ。
引用:JOINT 介護のニュースサイトより
簡単に内容をまとめると
・地域包括支援センターが、業務過多になっていて本来の機能が果たせなくなっている
・だから予防プランはなるべく居宅に頼みたい
・その為に、外部委託しやすい環境整備を進めていきます
こんな感じです。では、この件について介護予防ケアプランを包括から委託で受けていた経験もある僕がちょっと考察をしてみます。
①介護予防支援費はどの程度上げられる?
まず委託を受けるにあたって一番気になるのは委託にかかる報酬が、どの程度居宅に支払われるかということです。
ちなみに、僕が予防ケアプランを委託で受けていたときの費用は一人3,720円でした。地域によって多少の違いはあるでしょうが、大体現在の相場は約3800円です。
業務量などを考慮すると、ハッキリ言って安すぎます。しかし利用者の人数が減少している事業所などは安い金額でも受けざるを得ない所もあると思います。
今回厚労省はケアマネの処遇改善に取り組むことも謳っている為、多少の金額のアップは期待できるでしょうが、おそらくアップしても4000円程度ではないかと思います。
しかし、金額を上げるにしても財源が無いためどこから捻出するのかが謎なので、あまり期待しすぎてもダメな気がします。
②介護予防の標準件数0.5件換算をどうするか?
現在居宅介護は常勤ケアマネ一人あたりの標準担当件数は35件とされています。
これを1件でも超えれば即アウトというようなものではありませんが、あまりにオーバーすれば指導の対象にもなりますし、そもそもまともな支援を行うのが難しいので持てないと思います。
さらに、予防はこの標準件数に0.5人とカウントされてしまうので、実質居宅がたくさん担当したくてもできない事情があります。
(例)
・要介護(1~5)30件
・要支援1・2 10件
・30 + 10/2 = 35件
単純に言えばこんな感じの計算になります。予防が増え過ぎれば、肝心の収益源である要介護の人が担当できないので、幾ら委託制限が撤廃(昔は委託ではケアマネ一人当たり8人までしかもてなかった)されたとしてもあまりもてないのが現実でしょう。
今回厚労省はこれまでより委託を推進すると言ってきてるので、この標準件数のカウントから予防を外してくる事も考えられます。
③事務負担の軽減はどこまで踏み込むか?
委託の予防プランを受ける際の事務負担に僕は大きく2つあると思います。
Ⅰ:不慣れな予防独自のケアプラン様式
皆さんは介護予防の人のケアプラン見たことありますか?こんな感じです
ちょっと見にくいかもしれないのですが、この様式作る方も大変なんですが、見せられる方も
「なんだこれ。なんかよく分からん」
という感じです。これ、居宅のケアプランに慣れた人だと感覚が異なるので、どこをどう見たらいいのか分かりません。説明するこっちもどう言えば良いか難しく、お互いに結構大変です。
個人的には様式を居宅のケアプランと統一したらいいと思います。そうしたら同じソフトで作成できるので楽です。僕がやっていた時は包括から、作成用のファイルを各事業所に配布されてそれを使うのですが、動作が重い上、予防と介護を行ったり来たりする人は利用者情報の連動性が取れないので非常に不便でした。
Ⅱ:地域包括支援センターとの書類のやり取りの頻度を減らしてほしい
介護予防プランの作成にあたっては何度も包括支援センターと書類のやり取りをしなければいけません。
・基本チェックリスト
・利用者基本情報
・介護予防支援計画(予防ケアプラン)
・評価表
・支援経過
・毎月のサービス利用実績と委託支援費の請求書
ざっと挙げただけでもこれくらいあります。これらの書類を包括と何度も行ったり来たりしながらやり取りしなければならず大変手間です。これだけ手間がかかって一人当たり4,000円切る報酬ではハッキリ言って割が合いません。
必要な書類の量を減らすことや、やり取りをパソコンなどオンラインで極力済ませられるようにすることを検討しないと、今以上の人数を居宅事業所が受けるのは難しいと思います。
まとめ
厚労省は今後、包括から居宅に予防のケアプランをどんどん委託させようとしている。それを実現させる為には
①介護予防支援費(報酬)を今より上げる事
②介護予防の人の標準件数0.5件カウントを外す事も必要
③事務負担を減らす。具体的には
・予防ケアプランを、介護の様式と一緒にする
・包括との書類のやり取りの負担をオンライン等で極力軽減する
居宅が今以上に予防のケアプランを積極的に持つようになるには、居宅事業所にとって何かしらプラスが無いと難しいでしょう。その辺りの事を厚労省には考えてほしいと思います。