先日、一般の人にも僕達介護業界の人間にも驚きのニュースが入ってきました。
それが兵庫県明石市で起きた「有料老人ホームでの孤独死」です。
90代の男性が5月22日に遺体で発見されたが、同10日ごろに死亡したとみられている。
男性は妻と一緒に2000年に入居。妻は04年に他界し、その後は1人で暮らしていたという。
ホームの入居一時金は、2人で約2200万円。管理費は月約12万円。入居者約100人に対してスタッフは約60人(清掃や調理を除く)
男性は介護の必要がない「自立」と認定され、介護保険サービスを使っていなかったという。
「食事は自炊で、部屋で1人で取っていた。このホームでは、自立の入居者でも、週1回の無料清掃や、医師による往診などで安否確認をしていましたが、男性は、いずれのサービスも利用していなかったそうです。男性の家族が今月4日、男性の体調不良を訴えましたが、その後、スタッフがロビーにいる男性を見かけたため、特に対応しなかったらしい」(マスコミ関係者)
神戸新聞によると、男性は「子どもたちに迷惑をかけたくない。誰にも気付かれずに死ぬのも嫌」と語っていた
引用:YAHOOニュース
なぜこのような事が起こってしまうのか。それは有料老人ホームのサービスの特徴にあります。
介護付き有料老人ホームには「介護専用型」と「混合型」がある
介護付き有料老人ホームと聞けば、多くの人は「料金の高い特養」みたいなザックリとしたイメージがあると思います。そしてこのイメージが先行する結果
「有料老人ホームで孤独死なんて信じられない。完全に施設側の業務怠慢でしょう」
という声が多く上がってしまいますが、実態は違います。
まず「介護専用型」ですが、これはサービスや生活の実態としては特養などの入所施設に近いものがあります。その特性として
・要介護認定(要支援1~要介護5)を受けていること
・施設に常駐している介護・看護スタッフなどから日常的に介護サービスを受けられる
上記のようなものがあります。一方「混合型」ですが
・要介護認定を受けていない自立の方も入居できる
・介護サービスを受けるかどうかは、入居者と施設で取り決めができる
つまり混合型は介護が必要な人と、元気で自立している高齢者どちらも入居できるということです。そして、今回孤独死が発生した有料老人ホームは記事の内容などから「混合型」であると推測できます。
有料老人ホームで孤独死が起こる理由
有料老人ホームの特徴は上記の示した通りです。そして混合型は世間的な「特養的施設」というよりは
「マンションの下に介護スタッフが常駐していて、必要だったら介護サービスも利用できますよ」というようなイメージのほうが近いです。
高級マンションなんかで、特定のフロアにバーやジム、レストラン、温泉、マッサージやエステなどのサービスが受けられるスペースを作っている所がありますが、そこに「介護サービス」も入っているという感じです。
その為、有料老人ホームには現時点で法的に入居者に対する「定期的な見守りの義務はない」状態です。
これが、今回の事件の最大の要因で、今後も同じような事が起こりえる理由です。
想像してみてください。自分がマンションに住んでいて、自分が望んでもいないのに毎日マンションの従業員が自分の部屋を覗きに来るのはどんな気分でしょうか?人によってはちょっと鬱陶しいと思ってしまいます。
この入居者は施設が実施している安否確認系のサービスをいずれも拒否していました。こうなってしまうと、現時点ではこの入居者の孤独死は「自己責任」になってしまいます。
しかし自己責任だけに終始していたのでは孤独死は予防できません。ではどうするのが良いのでしょうか?
ここからは個人的な考えですので賛否両論あると思いますが、一番良いのは「入居条件の一つに安否確認サービスは受けてもらうこと」を盛り込む事です。
そもそも完全自立で、本当に誰にも干渉してほしくないのであれば、わざわざ高いお金を支払って有料老人ホームに入る必要性はなく、普通の賃貸で十分です。
何かしらのニーズがあるからこそ有料老人ホームを選ぶはずです。そう考えれば現時点では元気でも、念の為に安否確認や定期的な健康チェックは受けてもらっても良いと思います。
またこのような体制を取ることは事業者側にも今回のような、ある意味不祥事で企業のイメージダウンという不利益を避けるために有効です。利用者・事業者双方にとって利点があると思います。
法律レベルのルールを改正し「有料老人ホームは必ず1日1回、入居者の安否確認を行い、それを記録する」みたいな内容を盛り込めば、利用者・事業者どちらも納得しやすいと思いますが、現時点ではどうなるか分かりません。
今回のようなことは今後も起こる可能性がありますが、利用者・事業者のどちらにとっても良い契約がされることが必要になってくるでしょう。