人材を「人財」に育てるためにはコーチングとティーチングを使いこなそう

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コミュニケーション技術

突然ですが、皆さんの職場では新人は順調に育っていますか?

新卒採用をした所でしたら採用して丁度半年といったところです。ケアマネの居宅事業所等ではあまり新人を毎年採ったりはしないかもしれません。しかし法人併設のデイや施設等では、介護職員等を採用しているところもあるでしょう。

しかし人が順調に育つ所もあれば、毎年この時期や採用1年以内に辞めてしまい、常に人材不足の所もあります。

「毎年ろくな人が来ない」「最近の若いヤツは何か嫌な事があるとすぐ辞めてしまう」

そんな嘆きが聞こえてきそうです。しかし、不利益な結果を全て相手のせいにしていては人材は育たないし、人の定着はありません。自分達の教え方や接し方に問題がないか考える必要があります。そこで今回は人を育てるために知ってほしい「コーチング」についてご紹介します。

コーチングとは?

コーチングは対話を重ねる事を通して、対象者が目標達成に必要無スキル、知識、考え方を備え行動することを支援し、成果を出させるためのプロセスです。

何か分かるようで分からない概念ですよね?日本はどちらかというと、先輩や上司が仕事を教える「ティーチング」が主流になっています。ではコーチングとティーチングの違いを見てみましょう

「コーチング」

・相手から答えを引き出す

・自発性、モチベーションを引き出す

・基本はマンツーマンの個別対応

・時間がかかる

「ティーチング」

・指示やアドバイスによって相手に教える

・一人の指導者が、複数を対象にできる(講義等)

・相手が受け身になりやすい

コーチングは相手に自分の力で気づきを促したり、考えさせたりするのに対し、ティーチングはどちらかというと教える側→教わる側の一方通行なやり取りになりやすい特徴があります。ただ言いたいのはコーチングとティーチングに優劣関係はなく、適切に使い分ける事が重要だということです。

コーチングとティーチングの使い分けについて

では、どう使い分けるのが良いのでしょうか?ここでは皆さんが職員を教育する立場だったとして、それぞれの対象者の特徴で考えてみましょう。

新人A:新卒のフレッシュな若者。中途採用者だが、仕事は未経験の人

この属性の人達はハッキリ言って何も分かりません。なのでまずは基本的な仕事への考え方や、仕事の進め方などはティーチングを中心に教えることになります。

しかし、いつまでもティーチングだけでは成長は期待できません。ある程度基礎的な理解ができてきたタイミングで新しい仕事を教える時「こういう時はどうするのが良いと思いますか?」等、相手に考える機会を与える。つまりコーチングも混ぜていくのが良いでしょう。

中堅職員B:数年の経験は積んだが、人手不足から本人の能力を超えた仕事を任せる時

本来はそれぞれの能力に応じた仕事を任せるべきなのですが、現実にはなかなか理想通りには行かないですよね。しかし「この人にこの仕事できるんだろうか・・・」と任せる側も不安な時があります。そんな時は基本的にティーチング中心の関わりになります。教わる側も不安がありますので、細かい部分も含めてしっかり教えていく必要があります。そして仕事の進め方が合っているかどうか不安にならないよう、お互いに確認し合うと安心です。

ベテラン職員C:キャリアも能力も十分

こういったベテランで能力の高い人には基本的にコーチング中心の関わりになります。「ベテランだから大丈夫」と周囲は思っているかもしれませんが、本人は自分の成長に限界を感じていたり、もっとレベルの高い仕事がしたいのにそれを言い出せずにいて、悶々と日々仕事をしている人もいます。

その為コーチングによって本人の気づきを促すような関わりが有効です。また新人教育を任せる等、これまでやってこなかった新しい仕事を任せる事も検討していきましょう。一通り仕事ができるベテランは新しい仕事に挑戦することで、さらに成長する可能性が高いのです。

 

3つの事例を挙げましたが、コーチングの採用が適切かどうかは「自分の中に答えを持っているかどうか」です。幾らコーチングしてもスキルも経験もない人が、自分で答えを見つけられないのはある意味当然ですよね。逆に相応のスキルや経験があるなら自分の中に気づきや答えを見つけられるのです。

コーチングに必要な3つのスキル

スキル①ゼロポジション

これは相手に対して先入観を持たない。自分勝手な評価を相手に押し付けないということです。

どんな人間でも無意識にバイアスに支配されている部分があります。それを知っていないと簡単に「この人は高卒だから、こんな難しい事は知らないだろうしできないでしょう」「半年も仕事して、成長達成率が平均の半分程度。きっとこの先も大した成長は見込めないだろう」

こんな考えで相手を見ていたら要注意です。実は皆さんが偏見を持って見ていることは相手は気づいています。そんな人から言われる事は、幾ら正論でも相手も素直に聞けないですよね。

このようなバイアスを完全に取り除いて0のまっさらな視点で相手と接することが「ゼロポジション」スキルです。そうすることで、相手の話を真剣に聴く事ができます。さらに相手も自分の感情に対して素直に話してくれるようになれば関係が強くなりやすいです。しっかり相手の感情や気持ちの理解に努めていきましょう。

スキル②相手の「存在」と「行動」を認める

相手の存在を認める方法。一番シンプルで確実に効果があるのが「○○さん」と相手の名前を呼ぶことです。どんな人でも自分の名前を呼ばれることには心理学的に心地よさを感じます。ただここで注意したいのが「〇〇君」「○○ちゃん」「(アッキー等のあだ名)」で相手を呼ぶことです。

幾ら名前で呼んでも、これは相手を自分より下に見ている呼び方で、それは相手も感じ取ってしまいます。第3者が見ていても決して気持ちの良いものではありません。しっかりさん付けで名前を呼びましょう。

また挨拶をすることも効果的です。これは「絶対に自分から先にやる」つもりでやってください。「新人が先に先輩に挨拶するのが当たり前だろ」的な昭和な古い考えを持っている方は今すぐ捨ててください。詳細はここでは割愛しますが、自分から挨拶するのはメリットだらけです。それに教わる側は遠慮もあって挨拶もしにくい時がありますが、先に挨拶されると「しっかり自分を認めてくれている」と嬉しく感じます。

「行動」の承認とは具体的な事実や情報を、自分の評価を交えずに伝える事です。例を挙げると

「この間、利用者さんと話す時に目線を合わせて、相手の話を聴くことを重視したコミュニケーションを取ることを目標にすると言ってましたね。それがこの1週間しっかりできていますよ」

こんな感じです。教える側の勝手な評価でなくただ具体的な事実を伝えているだけなのですが、言われた側は自分の事を認めてもらえたし、目標が達成できたと感じてすごく嬉しいものです。この喜びが成長に繋がります。

スキル③「オープン」「クローズド」2つの質問テクニックを使いこなす

質問には大きく分けて「クローズド」と「オープン」の2つがあります。

クローズドは「はい/いいえ」で答えられる質問。オープンは「〇〇についてどう思いますか」等、相手が比較的自由に答えられる質問です。

クローズドの注意点があります。皆さんも人に教える時「はい」「分かりました」とすぐ言う人いませんか?でもそんな人に限って分かっていないし、言われた事をやっていないことも多いものです。

このような人達は「もういいからさっさと話終わってくれ」「そのくらい簡単にできる」と思っています。なので聞き方を変えてみましょう。

例:「このお薬は食間に飲むと説明しましたが、どのように理解しましたが?」

「食事の途中でお薬を飲めばいいんですよね」

食間とは食事の途中ではなく、食後2時間後を指します。このような聞き方をすれば、相手の理解が間違っていることに気づき後で「分かっていないじゃないか」と言った事になりません。

オープンの質問は相手が自由に答えられるというメリットがある反面、いきなりこれで質問を開始すると何を言っていいか分からずパニックになることもあります。コツは「最初はクローズドで会話を潤滑にしてから、オープンに移行する」です。

クローズドとオープン。この2つを上手に使い分けて、相手の気づきを促していきましょう。

コーチングの最終ゴールとは

コーチングが目指すのは「対象者が自らの力で目標達成するのを支援する」ということです。

その為には、一緒に話し合い、幾つか具体的な事を決めておきましょう。

・将来の目標は?なぜそうなりたいのか?

・その目標を達成するための短期、中期、長期目標とは。それはいつまでに達成するのか?

・目標達成に予想される困難と、その困難にどう対応するか

まとめ

今日はコーチングのティーチングの使い分けについて紹介しました。

コーチングは相手の気づきを促し、自らの力で目標を達成させる事を支援する。しかし、自分で答えを持っていない人には使えないため、その時にはティーチングから始める

こんな感じです。今はどの組織でも権威で管理するリーダーでなく、部下や新人と対話を重ね、能力を引き出すコーチ型リーダーが求められています。皆さんも職場で真に必要なリーダーになり、人材を「人財」に育て上げるような人になってもらいたいと思います。

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