今回はこの記事で説明した「肺炎」という疾患の特性を理解した上でのケアマネジメントポイントをお伝えします。
肺炎の予防
①感染予防に努める
肺炎はインフルエンザなどの感染症に罹患すると、発症のリスクが跳ね上がります。そのため感染症の予防が重要になります。
Ⅰ:手洗いとうがい
本人が外出した後の手洗いとうがい、また同居家族の手洗いとうがいを徹底して行い習慣化することがリスクを下げるうえで大切です。特に子どもと同居している場合は子どもは感染源のウイルスのキャリアーになることが多い上、手洗いうがいをせずに過ごしやすい為注意が必要です。
Ⅱ:インフルエンザワクチンの接種
ワクチン接種により、発症リスクの低下や罹患した際に重症になるリスクを軽減できるため有効な対策です。本人はもちろんですが、同居している家族にもワクチン接種をしてもらえるよう働きかける必要があります。
それだけでなく、本人のケアに関わる専門職もワクチン接種が必要です。多くの事業所ではワクチン接種をすすめると思いますが、個人がやっているような小規模の事業所だと会社がお金の助成をしなかったりすると、職員が積極的に接種していないこともあります。ケアマネとして、事業所の職員のワクチン接種状況はどうなっているのか確認しておくと良いでしょう。
Ⅲ:肺炎球菌ワクチンの接種
在宅での肺炎の原因菌のうち、最も多いのが肺炎球菌です。特に、複数の疾患を抱えている高齢者の場合、このワクチン接種が有効です。
肺炎球菌ワクチンの接種は、平成26年から65歳以上の高齢者は「定期予防接種」が開始され、対象者は各市町村から自己負担の一部助成が受けられるようになりました。ちなみに僕が所属している市町村であれば、通常全額自己負担した場合の費用が8,000円のところが4,000円で受けられます。
ただし65歳以上であれば誰でも受けられるわけではありません。肺炎球菌ワクチンの特性として一度接種したら、予防効果が5年はあることから5年に1回の頻度での接種となります。そのため毎年対象者が異なるのです。
詳しくはこちらを参照ください。
②顕性誤嚥を予防する
日々の生活のなかで誤嚥を防ぐ取り組みが必要です。そしてそれを習慣化することが大切です。
Ⅰ:食事の工夫
誤嚥の予防の為には食事は身体を座位にして開始することが大切です。寝たきりの人も可能であればベッドから起きて椅子に座って食べられるようにします。その為には座位保持ができる支援が必要です。
離床して座れない場合はベッドで食事をします。ベッドで食事をする場合、高齢者の身体状況や希望に合わせてリクライニングの角度を45~80度くらいに保ちます。
その際、腰はベッドのリクライニング部分にしっかりと沿い、隙間ができないように座らせましょう。膝は軽く曲げられるようにして、その下にクッションなどを挟んであげると姿勢が楽になります。
首を安定させるために、首下から後頭部の辺りにクッションや枕を挟んであげても良いでしょう。
Ⅱ:口腔ケア
口腔ケアを適切に行うと、口腔内の汚染は取り除かれ、唾液分泌の促進による自浄作用も働き、口腔内は清浄化されます。口腔内が清掃な状態であれば、仮に最近を含む口腔内容物が下気道に流れ込んでも、菌の量が少ないため、肺炎を発症する可能性は低くなります。
Ⅲ:腸活動の促進
腹圧がかかると、嘔吐や胃食道逆流が起こりやすくなります。特に誤嚥を繰り返すときは胃食道逆流に目を向ける必要があります。このリスクを下げるには、腸の動きを活発にすることです。高齢者に多く見られる便秘を改善したり、腸の蠕動運動を促す運動を行ったりするのが有効です。薬剤を用いる場合は副作用に注意が必要です。
③不顕性誤嚥を予防する
高齢者はただ加齢という要因だけでも嚥下反射や咳反射が低下しています。高齢者は程度の差こそあれ、不顕性肺炎はほぼ確実に起こっているものと考え、日々の生活のなかでその事を踏まえた対応をとっていく必要があります。
Ⅰ:規則正しい生活
1日の生活リズムを整え、規則正しい毎日を送ることで心身の覚醒状態を向上させることができます。覚醒状態が向上すれば、それだけ誤嚥のリスクは低くなります。
Ⅱ:口腔ケア
不顕性誤嚥の予防にも口腔ケアは有効です。というのも、原因の大部分を占めるのが口腔内細菌だからです。
この最近を減少させるために、歯垢の除去を含む口腔ケアを徹底することが大切です。また毎食後の事として、食物残渣を除去するための歯磨き、口腔ケアを行えるのが理想です。
Ⅲ:呼吸指導
高齢者の場合、嚥下反射や咳反射の低下と合わせ、意識的な深呼吸が困難な方が多くいます。身体的に可能であれば、意識的に呼吸してもらう、大きな咳をして自力で痰を排出してもらう、等の呼吸指導を取り入れるのが理想です。
同居家族の協力も得て定着を図ります。痰の排出には腹臥位(うつ伏せ)が有効という報告もあります。
発症時の対応
①兆候を知り、早期に発見する
予防とともに重要なのが、肺炎の発症をできるだけ早い段階で発見することです。高齢者の場合、典型的な症状が現れない事があるのはこれまで説明してきた通りです。発症の兆候を覚えておきましょう。
Ⅰ:主症状
咳、痰、発熱、呼吸困難です。食欲の低下も現れます。
Ⅱ:バイタルサイン
一般的に血圧が上昇し、脈拍数、呼吸数が増加します。普段の数値と比較が早期発見に役立ちますので、通常がどれくらいが押さえておきます。
Ⅲ:意識レベル
高齢者の場合、この点に注意が必要です。呼びかけに対する反応低下、意欲の低下、漠然と感じられる元気のなさ等です。発熱や食事摂取量の減少などにより、脱水症状が進んで生じてくる症状です。
②発見したら、迅速に対応
肺炎の発症が高い確率で疑われる場合は、早急に適切な医療が受けられるよう迅速に行動しなければなりません。たとえ、その時点での症状が軽くても、高齢者の場合は一気に重症化するリスクがあります。
そのような場合は家族に助言し、病状によっては主治医に連絡を取ります。また、発症の発見者が訪問看護や訪問介護のサービス事業所であることも多いと思います。事前に対策を共有しておくと良いでしょう。
まとめ
肺炎のケアマネジメントで重要なのは
・基本的な予防対策(手洗い・うがい、インフルエンザのワクチン接種、肺炎球菌のワクチン接種)
・誤嚥による肺炎の発症予防(食事、口腔ケア、運動や呼吸指導)
・症状の兆候を知り、早めに医療機関へ繋ぐ
です。これからの季節は肺炎を発症する利用者が高い可能性で出てきます。僕も冬の時期は毎年のように肺炎で入院する人がいますし、最悪の場合この肺炎で亡くなったり、そこまでいかなくても元気だった人がほぼ寝たきりの状態になるまで重篤化する経験は何度もあります。
ケアマネの皆さんは是非正しい知識を身に着けて、利用者の人を肺炎のリスクから守る支援をしてもらいたいと思います。
参考書籍