5月27日の今年度の第2次補正予算案で、介護業務に従事している人はその職種に問わず、全員に最低5万円のお金が支給される事が閣議決定しました。
感染者が発生した、あるいは濃厚接触者に対応した介護・障害福祉事業所の職員に20万円を支給する。感染者、濃厚接触者がいない事業所で働く職員には5万円を支払う。いずれも「慰労金」という名目。これらが正式に決められた。
投じられる財源はおよそ5150億円(医療分を除く)。介護保険、障害福祉の全てのサービスが対象となる。職種にも制限はない。現場で働く人ならケアマネジャー、看護職、リハ職、事務職など皆が一律で、正規職員でも非正規職員でも受け取れる。介護分野では地域包括支援センターの3職種なども対象に含まれる見通し。
今年度の1次補正で新設された交付金(緊急包括支援交付金)を積み増す形で実行される。
具体的な支給方法はまだ調整中だ。厚労省は今のところ、交付金を渡す都道府県から事業所ごとに配る形を想定している。個々の職員へ直接的に支払う形をとると、自治体にかかる負担がかなり重くなるという指摘がある。取材に応じた担当者は、「職員ひとりひとりに必ず行き渡る仕組みにする」と説明した。
厚労省は2次補正が国会で成立した後で、詳細なルールを定める通知を発出する予定。同様の給付金は医療現場を支える医師や看護師らにも支給される。
引用:ケアマネタイムス
まとめるとこういう内容です。
- 対象は介護と障害福祉サービス事業者
- コロナウイルスに感染・或いは濃厚接触者をケアしている事業所の職員は一人20万円
- 感染者や濃厚接触者をケアしていない事業所の職員は一人5万円
- 職種は介護職だけでなく、全職種(ケアマネや事務職、包括の職員も対象)
- 支給は各都道府県から事業所へ配布する予定(まだ未定)
これまで国は医療従事者、特にコロナ患者が入院している医療機関に対しては散々手厚い支援を謳ってきました。それに対して僕は別に不満はありません。現在最も過酷な環境で仕事をしているのは間違いなくこの人達です。十分なサポートを国としてやってほしいと思います。
しかし、一方で僕達介護事業所で働く人間に対してのサポートはあまりにも雑というか適当だっと感じていました。
こんな態度が透けて見えており、その事に多くの介護業界で働く人達は不満を感じていたのではないでしょうか?
【閲覧注意】ケアマネのマスク配布依頼、僕達は配達屋じゃない!でも書いたように、僕達ケアマネも無料で感染リスクの高い中マスクを配らされたことからも感じます。
実際問題、コロナの感染者や濃厚接触者がいなくても、これまでにない程の厳重な感染予防対応をしながら目の前の利用者のケアを行う。行動も業務も通常時と比べるとかなり制限され、追加された感染対策業務もこなすのは本当にハードワークです。
しかし一生懸命ケアをしていても、この状況では十分なケアができず心身の機能が日に日に衰えていく人も多いです。この状況では現場は介護職だけでなく全員が疲労困憊で、僕の法人でも「辞めたい」という人達が増えてきました。
この事に危機感を感じ「介護崩壊」がリアルになってきた中、介護福祉士会等の職能団体が国に職員への手当の支給などを求める要望書を提出しました。それが功を奏したのか、今回は異例の慰労金という形でお金が支給される事が決定しました。
5万円もらったからといって、今の大変さが変わるわけではありません。しかし少しは精神的に「もう少し頑張ろう」と思えます。
ただ今回の慰労金については心配な点もあります。
①本当にちゃんと職員に支給されるのか?
支給方法はまだ未定ではありますが、各事業所にお金が配布されます。そして事業所から給料等と一緒に支払われる予定ですが、これが問題です。
介護事業所には残念な事にブラック事業所もたくさんいます。自分達の優位な立場を悪用し、職員が経営の事に無知であったり、意見を言えない事を分かった上で自分達の赤字の補填に当てる可能性があります。
今の世の中の雰囲気として、仕事が一時的に無くなって生活が苦しくなっている人が大勢います。その為「仕事があるだけありがたい」という感じです。しかしこれが危険な思考だと僕は思います。
一昔前にパワハラが当たり前になっていた時代は、完全に経営者である使用者側が労働者側より立場が強く「雇ってやっているんだからありがたく思え。だから長時間労働、休日労働を無料でやる滅私奉公は当然だろう」という思考をもっており、労働者側も他に仕事がないからと渋々受け入れている状態で、今はそれに近い雰囲気を感じます。
現在は使用者側も、介護事業所は人手不足なので昔のように「文句があるなら辞めてもらって結構」と強気には出にくくなっていますが、この背景を悪用して今回の慰労金に対して意見を言う職員に対して、辞職を人質にちらつかせながら脅しをかけてくる可能性もあります。これに個人レベルで対抗するのは難しいと思います。
その為、支給されたお金がちゃんと全額職員に行き渡るよう、事業所には支給した事を証明させる等何かしらのルールを設ける必要があります。
さらにちゃんと支給をしない事業所には、匿名で相談できる窓口を設置し、必要な行政指導等のアクションができる体制も必要です。
そうでないと必ず自分達の懐に収めようとする事業所が出てしまいます。
②財源は大丈夫なのか?
今回の支給にかかる財源は約5150億円。今回のコロナ騒動で、他にも多額の支援策を国は打ち出しています。一体どこからこのお金が出てくるのでしょうか?
日本はただでさえ借金王国です。これ以上国債を発行すれば本当にギリシャと同じ状況になってしまいます。もしそれを回避するとしたら、収入を増やすしかありません。つまり「税金」の増額です。
例えば消費税は現在10%ですが、今回のコロナ騒動後に再び増税の話が湧き出てくるかもしれません。
消費税だけではなく、他の税金も上げられる可能性があります。そうなると今は一旦お金もらえて嬉しいかもしれないが、回り回って自分達が余計に苦しくなる可能性も秘めています。
いずれにしても今回の慰労金がいつ頃僕達の元に届くのか?注目しておく必要があります。