この記事はこんな悩みがある人にオススメ
認知症の人が介護を拒否してケアさせてくれない。ケアをしないと家族に「ちゃんとケアしてくれない」と苦情を言われるし、でも無理矢理ケアすることもできない。どうしたらいいの?
介護や看護職の人の悩みの一つに「介護拒否」があると思います。
主に認知症の人によく見られるもので、対応に苦慮している人が多いと思います。
今回はそんな介護拒否が見られる人に、どのように対応すれば良いかについて紹介します。
相手の現状を理解する
例えば入浴に誘う場面ですが、多いのがこのようなやり取りです。
田中さん、お風呂に行きましょう
いいえ、昨日入りましたので結構です
いやいや、もう3日入ってないようですよ。
体が汚いと皮膚の病気にもなるし、入浴したほうがさっぱりして気持ちいいですよ。行きましょう!!
(強引に浴室に連れて行こうとする)
ちょっと、止めてください。
あなたには関係ないでしょう。
このような場面で介助者に欠けている視点に「相手の現状理解」が不足している事があります。
例えばあなたがこのような場面になったと想像してみてください。
- 知らない場所にいる
- そこへ突然知らない人が話しかけてくる
- 自分を何かに誘導するような会話の流れ
どうでしょう?なんだか怖くないですか?
しかも入浴や排泄は恥ずかしい部分を露出する行為です。それを見ず知らずの他人に「見せろ」と誘導されていると感じれば誰だった嫌ですよね。まずは相手が置かれている心理的な状況を理解することに努めましょう。
まずは安心してもらうための対話
利用者にケアを行う前に大事な事があります。それは「相手が安心してケアを受けられる準備」です。
知らない人に、何をされるか分からない状況ではケアを受け入れられないことは理解できますね。
そのために必要なのが利用者との対話です。
例えばこのようなやり取りを行ってみると良いでしょう
田中さん、こんにちは
こんにちは
よければ今からお風呂に入っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか?
え?お風呂!?
いいえ、結構です。
そうですか。
どこか具合でも悪いのですか?
寒いし、大勢の人の前で裸になるなんて恥ずかしいのよ。
そうなんですね。
あ、でも足がとても冷えてますね。
良かったら足湯だけでもいかがですか?
そうね、足湯ならいいわよ。
ポイントは先に相手との信頼関係を築いてから、「拒否する理由」を聞き出す事です。
✔ 体調が優れない
✔ 大勢の人と一緒に入浴するのが昔から嫌
✔ 恥ずかしい
✔ 寒いから服を脱ぎたくない
✔ おっくう
他にもあると思いますが、拒否する理由を本人からしっかり聞き出せれば解決に向けて具体的な対応ができる可能性があります。
多くの介護拒否ケースの対応はこの最初の対話を丁寧に重ねられていない事が根本的な原因になっていることがほとんどです。
トライ&エラーを積み重ねる
介護の仕事をしていると、分かりやすい答えを求めがちで、手段はどうあれそういう分かりやすい結果を出す人が評価されたりします。認知症の人の介護拒否は正にその典型です。
・家族が入浴させてくれないと苦情を言う
・ケアマネが入浴させれないなら、事業所替えると圧力をかけてくる
・入浴させれないと、上司に怒られる
・ケアマネが入浴させれないなら、事業所替えると圧力をかけてくる
・入浴させれないと、上司に怒られる
上記のような背景から結果的に利用者の現状理解や意思・人権を無視したようなケアが行われます。
しかしこれは大変危険な行為です。
こういったケアを続けていくと
・利用者のADL、認知機能は低下
・利用者の状態悪化により、家族の負担はむしろ増加
・結果的に事業所への利用継続ができなくなり、収益減
・職員が改善をしよういう意識が無くなり、低レベルなケアが漫然と継続されてしまい、質の高い人材はいなくなる
大切な事は「分かりやすい結果を毎回求めなくていい」という考えを持つことです。
入浴を拒否する人に対して、「どんな方法を使ってでも入浴させないと」等と考えるのは、利用者と介助者のお互いにとって不利益でしかありません。
でも、「入浴させる事」が目的でなく「利用者と対話する事」が目的になればどうでしょうか?
対話を重ねながら、無理なくできる事をするほうがケアの質は高まります。
ただしこれはすぐに成果が出るものではありません。たくさんのトライ&エラーを積み重ねるしかありません。
ほとんどの人や事業所はそれができないから安易な結果を求めるだけの質の低いケアに依存しがちです。
しかし成功事例を少しずつ重ねる事で、職員の自信向上にも繋がり、事業所自体の評価も高まってきます。
まとめ
介護拒否をする認知症の人の対応のポイント
介護拒否に限らず、認知症の人のケアは「これをやればすぐに改善する」というような魔法のようなノウハウは存在しません。
しかし、利用者に真摯に向き合い改善を重ね続ける事でケアの質が高まり、利用者の様子が変わってくる可能性は高まってきます。
そういった事に粘り強く取り組める人や事業所が今後生き残っていく時代になるでしょう。