介護施設などで昔から行われている、年に1回程度の「〇〇祭り」
多くは夏祭りと名目で夏に行われる事が多いですね。しかし最近だと秋など夏以外にも行う施設も増えてきました。
この祭りイベント、コロナ禍でほぼ100%の施設が自粛していました。3密と会食を避ける必要があったコロナ禍で、それを自ら行うイベントをするわけにはいかないですからね。
しかし2023年5月にコロナが2類から5類になったのを機に、この祭りイベントを再開しようとしている所がチラホラ増えてきています。
そこで僕が言いたい事があります。それは
「介護施設で祭りをする必要は無いのでは?」
これです。これに関しては反対も賛成意見もあるでしょう。
ではなぜ僕が介護施設で夏祭りをする事に反対なのか?その事について書いていきます。
介護施設が祭りをするのは地域貢献義務を満たす為?
そもそもなぜ介護施設が夏祭りをやるのか?
表向きは「地域の方に必要とされる施設を目指すため」みたいなのがありますが、もう一つ社会福祉法人などには「地域貢献義務」というのがあり、それを達成するためという理由もあります。
社会福祉事業及び第26条第1項に規定する公益事業を行うに当たっては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない
引用元:社会福祉法第24条第2項
介護施設を運営する社会福祉法人などは自分達の利益を最優先するのではなく、公益性をもっとも重視しないといけない。そのような立場である事からこのような義務が課せられています。
この地域貢献義務、ポイントを整理するとこうなります。
②「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者」に対する福祉サービスであること
③無料又は低額な料金で提供されること
・障害者などに就労の機会を作る
・母子家庭などの相談に乗る
・生活困窮者へ、金銭や食料などの現物給付支援
・子ども食堂などの、地域住民が利用できる食堂の運営
祭りイベントは職員の負担が大きすぎる
僕が祭りイベントに反対する理由には、実際にイベントを運用する職員の負担が大きすぎるからです。
①通常業務+祭りイベント業務で残業代を支払わない
介護施設の現場はどこも人手不足。慢性的に残業が行われており、職員の負担が大きい。それが理由で退職者が後を絶たない状況です。
そんな苦しい状況に追加の業務。当然職員の負担は大きくなります。
僕も数カ所の介護事業所で働いてきましたが、年に1回の祭りイベントを喜んでやっている職員は皆無でした。なぜなら負担が大きいからです。
さらに最悪なのが、この祭りイベント業務によって発生した残業代などを支払おうとしない経営者が非常に多いという事です。
「地域の為にやる仕事なんだから奉仕して当然」とでも考えているのでしょうか?しかしこのような考えは通用しません。
業務を命令している以上、残業代の支払い義務は発生します。支払わない場合は労働基準法違反です。
百歩譲って残業代を支払ったからといって、負担の大きさに代わりありません。
普段1~2時間程度残業が発生している状況で、さらに追加の残業が発生すれば職員も体調を崩す可能性が高くなります。そうなれば祭り業務によって、通常の介護業務が運営できなくなるリスクが高くなってくるのです。
本来の業務ができなくなるリスクを負ってまで果たしてやる必要があるのでしょうか?
②素人がやっても、大したイベントにならない
当たり前ですが、僕達は介護のプロであってイベント運営のプロではありません。
祭りのような大きなイベントをやると分かるのですが、スムースな運用は非常に難しいです。
企画立案、必要な準備物とそれの購入費用の稟議書作成。予算の範囲に収まらなければさらにやり直しが発生します。
当日までの準備のスケジュール。当日の準備と運営スケジュールを考え、実際に必要な人材を確保する。
このようなイベントではボランティアを募集しますが、思ったように人が集まらない場合もあるし、ボランティアに指示しながら自分達の仕事もこなさないといけない職員の負担は相当なものです。
このような大きなイベントをスムーズにやるのは素人では限界があります。必ずどこかにトラブルが発生します。改めて大きなイベントを運用するプロには脱帽する思いです。
経営者は「このような機会によって職員のチームワークが高まる」なんてキレイ事を言いますが、別にそんな事ありません。僕も何回もやりましたがこの程度で信頼関係ができることはないし、場合によっては「あの人は私よりサボっていた」なんて思われ、関係が悪化する可能性すらあります。
そもそも介護施設で働く職員は、介護の仕事をするために労使間契約を結んだはずです。それなのに、なぜ無関係な大型イベントの仕事をやらせるのか?
こんな無理をやらせても、結局は学生の文化祭レベルかあるいはそれ以下のモノにしかなりません。
つまり投下するリソース(労働力とそれに対して支払う報酬、時間、準備物などの購入コストなど)とリターンが全く見合わない。事業として冷静に考えた時、完全に破綻していると言えます。
③利用者の安全を確保しながらやる事の難しさ
祭りイベントは通常と異なる空間を作り、また過ごし方をします。
たとえば夏祭りであれば、夏の暑い時間帯に人がいっぱいいる所に出る。普段は食べない焼き鳥や場合によってはノンアルコールビールなども飲むかもしれません。
そのような環境でサービスを提供していると、利用者が興奮して普段取らないような行動を取って転倒したり、誤嚥したり、熱が出たりして体調を崩したり。
つまり普段は想定されていないようなリスクが増えてくるのです。その中で安全に過ごしてもらう為、職員は普段以上の神経を使って業務にあたる事になります。それでも事故が発生することを防ぐことはできません。
利用者にとって楽しい時間を提供できるかもしれません。しかしリスクの大きさと天秤にかけた時、果たして適切なサービス提供と言えるのか?考える必要があるでしょう。
祭りの代わりにやりたい地域貢献活動
ここまで散々祭りイベントを批判してきました。では祭りイベントの代わりに僕達がやるべき事は何なのでしょうか?
僕が考えるポイントは
「地域の人も、そして貢献する職員も、どっちにも嬉しい活動」
つまりwin‐winな事です。正直祭りイベントは地域の一部の人にとっては嬉しいかもしれませんが、職員には先述したように嬉しくない活動です。
ではどのような活動が良いのか?僕が考えるものはこんな感じです。
今はまだ大丈夫だけど、将来親が介護が必要になったらどうしたらいいのだろう?
このような不安をモヤモヤと抱えながら過ごしている人は多いです。だからこそ気軽に相談できる機会を作る事は、地域の困りごとの解決にダイレクトに繋がります。
母親をショートステイに預けたいけど、どんな風に過ごすのか不安。かえって状態が悪くなるなんて聞いたこともあるし・・・
結論
今は変化の激しい時代です。その変化に合わせて介護施設も地域からも、働く職員からも求められるニーズは変わっています。
それなのに「今までやっていたから」という思考停止な理由で祭りイベントをする意味はないはずです。
本当に自分達が今やるべき事は何なのか?考えるタイミングが来ていると思い、この記事を書きました。参考になれば嬉しいです。