今ケアマネのなかで話題になっていることの一つに「ケアマネジメントの標準化」があります。
今日はこのケアマネジメント標準化について、僕個人の意見を書いてみます。
厚労省と財務省で異なる考え
この標準化について、実は厚労省と財務相で考えがかなり異なっています。
厚労省
・ケアプランは個別性が高い為、そもそも標準化することは不可能
・ICFでいう「心身機能」の「疾患」の部分にフォーカス。科学的エビテンスが得られる部分について整理する。要介護要因上位の「脳血管疾患」「大腿骨頸部骨折」について、事例から調査研究している
詳細は割愛しますが、厚労省の基本スタンスとしてケアプランを作成する過程。特にアセスメントで必要な考え方や参考にすべき内容、基準を科学的エビテンスが得やすい疾患について示すということです。すごく簡単に言うと「ケアプラン作成のガイダンス」といったところです。
財務相
介護サービスの過剰な提供を防ぐ観点から、ケアプランの標準的な内容を作成・設定すべきと主張。利用者の状態や生活環境に応じて、望ましいサービスの種類や頻度などを定めてはどうかと注文した。それと異なるメニューとする場合は、ケアマネジャーが保険者に対する説明責任を持つルールにすべきと求めている。来月にもまとめる政府への提言(建議)に盛り込む方針。
財務省は今回、訪問介護の生活援助を多く位置付けたプランの市町村への届け出が新たに義務化された(*)ことに言及。届け出のあったプランの検証の徹底を促す指針を早急に作るなど、施策を有効に機能させるよう念を押した。そのうえで、「今後の実績も踏まえ、利用者の状態像に応じたサービスの利用回数や内容などについての標準化を進めるべき」と踏み込んだ。
引用:介護のニュースサイト JOINT
こちらが財務相の考えです。
・利用者の状態や生活環境に応じて、望ましいサービスの種類や頻度などを定めてはどうかと注文
・利用者の状態像に応じたサービスの利用回数や内容などについての標準化を進める
ケアプランそのものの標準化を狙っているのが分かります。標準化などという言葉でぼやけていますが、これは「サービス利用の抑制」であり、「ケアプランの個別性を無視して、画一的なものにする」事を狙っているのが明らかです。
厚労省の考え、やろうとしていることに一定の理解はできますが、財務相のやり方はハッキリ言って受け入れられる内容ではありません。それは介護保険サービスを利用させないようにすることが最優先で、その後付け的理由に標準化推進を利用しているにすぎないからです。
そしてここで危惧されることがあります。それはこれまでの改正の経過などを見ても明らかに
厚労省<財務省
というパワーバランスが成り立っているからです。このまま標準化が推し進められれば、財務相の思惑のほうが勝ってしまい、最悪次の2021年改正でさらなるサービス抑制が成立してしまう可能性があります。
そうなると十分な支援が行えず、状態や状況が悪化してくるケースが増えることが予想されます。しかしそれを「ケアマネが無能だからこういう結果になった」と、これまでのやり口からも彼らは悪い結果は僕達ケアマネのせいにしてくるでしょう。それを僕達はただ傍観して許してよいのでしょうか?
今ケアマネにできること
この標準化推進は本当に国主導で進められれば、僕達にとってもそうですが利用者や家族といったクライエントにとっても非常に不利益になることが予想されます。
そこで、僕達ケアマネが今やれることとして、一人一人が質の高いケアマネジメントを実践することではないかと思います。
それは客観的に誰が見ても、聞いても納得できるような科学的エビテンスに基づいて実施されるマネジメントであることです。よく実際にされているのが「私の経験上、今後はこういう風になるだろうからこうした」というマネジメント手法です。
経験に基づいた支援を全否定するわけではありませんが、ケアマネジメントプロセスにおいては完全にアウトです。そこには大切な「根拠」がないからです。
「○○さんは△△という疾患があり、この疾患の特性上今後は□□のような状態経過やリスクが予想されます。それを予防するために◆◆という支援を行います」
「主治医とも相談した結果、リハビリは最低でも週に3回以上行わないと効果が期待されない為、通所リハビリを週3回利用するケアプランにしました」
最低でもこれくらいの根拠をもってケアマネジメントを行う必要があります。そしてケアプランというのは個別性が高く、安易な標準化ができないということをデータとして証明していくことが必要です。そのためにも効果測定、僕達で言えばモニタリングをしっかりやって効果のない支援は適宜見直しをしていき、効率よく効果的な支援をしていく努力が必要です。
今、僕達ケアマネジャーにとって大きなターニングポイントに来ていると感じます。一人一人がその事を理解して仕事をしていく必要があるでしょう。