この記事はこんな人の役に立ちます
いつまでも生きる事が良いことではない
まず一番最初に押さえておきたい考えは「死ぬ事は悪い事ではない」という事です。
医療や介護の現場で働いていると「こんなミスをして、利用者にもしもの事(最悪死ぬ可能性)があったらどうするの?」と上司や先輩に怒られた経験が誰にでもあると思います。
その影響か、僕達専門職も無意識に「利用者が死ぬことは悪い事」という先入観に縛られている人を見かけます。まずはここから変えましょう。
医療ミス等が原因で、利用者が大怪我をしたり亡くなるような事は避けなければいけませんが、一方で死ぬ事は決して悪いことでもなんでもなく自然の摂理です。
僕達人間は生まれてから様々なライフステージを経験しますが、その最後のステージが「死」です。人間である以上避けては通れないのです。
仮にですが、老い衰えながらも死ねない人生を想像してください。それこそ地獄だと思いませんか?少し宗教っぽい言い方かもしれませんが、人は死ねる事が決まっているからこそ人生を頑張って幸せに生きる事ができるのです。
そう考えれば利用者が死ぬことを恐れる必要がないことが分かってもらえると思います。
特別なケアは必要ない
看取りケアにおける不安に「難しい医療行為や管理が必要になるのではないか?」という不安が未経験者にはあります。これは特に介護職等の福祉系専門職が抱きやすい不安でしょう。
結論として様々な医療行為を行うのは、まだ治療して回復する余地がある段階です。しかしもう積極的な医療行為に意味がないと判断された終末期では医療は最小限になります。
医療というのは体に大なり小なり負担をかける行為です。(その代償として病気を治療することが可能)つまり、治療の余地がない状態で医療を行う事はいたずらに終末期の利用者を苦しめるだけなのです。点滴ですら、状態によっては利用者を苦しめる事になります。
終末期で大切なのは医療よりも、いかに利用者が苦しくなく、そしてなるべく穏やかに残された時間を過ごせるか、です。
しかしそれは難しい事をする必要はないのです。体を拭いてあげたり、安楽な姿勢で過ごせるようクッションを入れてあげたり、快適な温度・湿度、明るさ、音、臭い等の室内環境を整える。そして、家族や友人、これまで関わってきた専門職などのスタッフが「今日は良い天気ですね。もう少しで桜も咲きそうです」など、日常生活でするような普通の声掛けをするのが大切なのです。(声掛けは話ができなくなっても続ける事が大切)
そういう普通の人が送る、普通の時間を提供する。それが一番大切なケアであり、特別な難しい医療もケアも必要ないという事を知っておいてください。
終末期における状態の変化
看取り期では、通常時であれば慌てるような状態変化を起こしますが、これを知っておくことで「これはごく普通の経過なんだ」と落ち着いて対応ができます。
・食事が食べれなくなる。口に入れても飲み込めず吐き出す。結果低栄養や脱水を起こしやすくなる
・筋力が低下し全身の廃用と拘縮が進む。
・寝ている時間が長くなり、褥瘡ができやすくなる。また寝ている時間が長いと骨がもろくなり、ちょっとしたケアの際の外圧で折れやすくなる
・熱が出たり下がったりしやすくなる。ただ多くは自然に下がってくる
・手足の先が冷たくなり、紫色に変色してくる。これは血液の循環不良により起こります。
・最期が近づくと「下顎呼吸」(喘ぐような呼吸)が始まります。一見苦しそうなので慌てたくなりますが、本人は夢の中にいるような状態であり苦しいわけではないので、慌てず最期の時間を家族などと穏やかに過ごせるようにする
いずれも経験がないと不安になる状態変化が多いです。その為これらの状態変化はごく自然な経過だと知っておく事が大事です。
まとめ
終末期のケアの基本的な考え方や知っておきたい事は
- 死ぬことは悪いことではない。人の人生の自然な流れ
- 看取りケアには特別な難しいケアは必要ない
- 終末期の利用者の状態変化
看取りケアは死ぬことを支援するという特殊性はありますが、その本質をきちんと知ることで恐れる必要なく落ち着いてケアをすることができます。その為、一番最初に押さえておきたい部分でしたので紹介させてもらいました。参考になれば幸いです。