「介護保険サービスと言えば?」
この質問を一般の人にしたら、多くの人が答えるのが「ヘルパーさん(訪問介護)」と「デイサービス」だと思います。
そして、訪問介護の一般的なイメージは「家に来て介護してくれたり、掃除したりしてくれるんでしょ?」
まあ大体こんなざっくりした感じで捉えられていると思います。そのせいなのか、利用者の家族などから「私仕事が忙しいんで、ヘルパーさんにでも来てもらって家の掃除しといてもらっていいですか?」
なんて依頼をされたことがあるケアマネは多いと思います。しかし、これに対して安易に「そうですね。そうしましょう」等と言ってはいけないことは、ケアマネの皆さんなら知っていますよね?
「生活援助」とは、利用者が1人暮らしであるか又は同居の家族等が「障害・疾病その他やむを得ない理由」により家事を行うことが困難な場合に、利用者に対する調理、洗濯、掃除等の日常生活の援助をおこなうものをいいます。
(引用:厚生労働省告示第19号)
つまり、生活援助は原則的には「独居」の利用者にしか位置づけることができず、同居家族がいる場合は「障害」「疾病」「その他やむを得ない理由」の3つの条件のどれかに当てはまらないと、ケアプランに入れることができないということなのです。
その為、同居家族がいる場合は利用する「理由」をこのルールに基づいて、きちんと明確にしておく必要があります。
そして、その理由をケアプラン第1表の「生活援助中心型の算定理由」の所に独居と障害・疾病の場合は○を、その他やむを得ない理由の場合は○にプラスして理由を記入しましょう
同居家族がいる場合の生活援助を利用する理由
①障害・疾病
これが一番分かりやすい理由だと思います。少し具体例を示しますと
・高齢者夫婦世帯で、同居家族の妻は高齢で要介護認定を受けており、家事などの支援が難しい
・息子と二人暮らしだが、うつや知的障害などの疾患・障害を患っており、家事等の支援が期待できない
・子どもと同居しているが、その子どもが病気(例えばがん等)の治療中で、自宅での療養と通院治療をしている状態で、家事などの支援が期待できない
②その他やむを得ない理由
これはどういうことかと言うと「障害・疾患と同等なレベルで同居家族による家事支援が期待できない」と考えてください。具体例を示すと
・頻回に長期の出張などで、実質自宅にいる時間が少ない為、家事が期待できない
・家族関係の悪化により、日常的に顔を合わせることもないような状態の為、家事支援が期待できない
他にもあると思いますが、このような明確な理由が必要であることを理解しておく必要があります。
アセスメントのポイント
①生活援助でできる事と、できないことを理解する
この生活援助でできる範囲というのを、以外とケアマネでもきちんと知らない人が多いです。
できる事
- 普段使っている部屋の掃除
- 本人しか使わないトイレの掃除
- 冷蔵庫の中身を整理。
- ベッドのシーツやカバーを取り換えて洗う。
- 布団を干す。
- ゴミ出しの手伝い
- 本人のための食事の準備や調理。
できないこと
- 家族と一緒に使っている玄関・トイレ・お風呂の掃除。
- 年末なので大掃除をしてほしい。
- 部屋の模様替えや、家具の移動。
- ペットに餌をやってほしい。
- 銀行でお金をおろしてきて。
- 家族の服も一緒に洗濯。
- 庭そうじや草抜き。
- 引っ越しをするので荷造りをしてほしい。
- 出かけている間に掃除をしておいてほしい。
- ドライクリーニングに出す、引き取りをしてきてほしい。
もし、上記のような介護保険サービスでできないことを依頼したい場合は保険外サービスとして自費利用になります。介護保険サービスと自費利用サービスを併用でやっている事業所もありますが、できない場合は民間サービスを利用するのもオススメです。
パソナグループは関東、関西エリアを中心に家事代行サービスをやっている会社です。基本は週に1回以上、1回2時間以上が基本になります。
デメリットとしてお金は介護保険サービスよりかかりますが、介護保険ではできない様々なサービスが受けられることが大きなメリットです。加えて従業員教育がしっかりしているので、普通の訪問介護事業所より掃除などのサービスのクオリティが高いのも特徴です。
またベビーシッターサービスもあるため、30~40代の若い働き盛りの女性で、介護をしながら小さなお子さんの子育てをしている場合に利用できるのも大きいです。そのようなケースでは積極的に情報提供できるとよいでしょう。
②生活援助の範囲を理解した上で、どのような生活支援が必要なのか。そして本人・家族がやる事と、生活援助で支援する範囲を決める
生活支援が必要と思われるケースでは、様々な支援が必要と思われることも多いです。しかし、全てにおいて完全に支援するのは難しいこともあります。そこで優先順位を決めて、「最低限自宅での生活を送る上で必要な支援は何か」をアセスメントで見極めていく必要があります。その為に観るべきポイントは「健康面」に関してです。
・食事はきちんと食べれているのか?
・住んでいる自宅の衛生環境などは適切か?
・入浴などはきちんとできているか?
・基本的な健康状態(バイタルや顔色、精神状態、服薬や受診状況等)はどうか?
こういった健康面に関する基本的なポイントをアセスメントでチェックしていき、不足がある部分をセルフケアと、訪問介護による支援で補う支援をしていくというイメージで良いと思います。
大事なのは「なんでも訪問介護がするのではなく、できない部分を補うのが訪問介護の仕事である」これをサービス導入前にきちんと本人・家族に説明しましょう。
そうでないと、後々「あれもやってくれ、これもやってくれ」とできることまでサービスを要求するようになり、結果として不要な支援をすることで本人・家族の自立支援を阻害することにもなりかねません。
③自立を阻害している要因があるのなら、他の支援に繋げよう
訪問介護を利用するためのアセスメントをしていると、それだけでは自立が難しいことが分かってくることも多くあります。例えばですが、
同居の息子はリストラにあい、現在無職で引きこもっている。本人は元々友人とお出かけしたりするのが好きだったが、以前住んでいた所から数年前に引っ越してからは知り合いがおらず、家からあまり出ない生活を送っている。これまではなんとか自分で家事をしていたが、最近は筋力低下や物忘れもあって難しくなっている。
こんなケースであった場合、訪問介護で掃除や食事の用意などの支援をするだけでは不十分です。現在のような状態になった背景要因に「社会との断絶による活気の低下」などが予想されます。
通所系サービスの利用などにより、本人の活気が出ることでできなくなっていた家事が再びできるようになる可能性もあります。
また、服薬管理や受診がきちんとできていなかった場合には、医療系サービスの支援が必要かもしれません。
そのように他に適切な支援に繋げることで、最終的には自分でできる範囲を広げ、生活支援する範囲が少なくなることを目指してケアプランを作る必要があります。
まとめ
訪問介護のサービスを「公的保険で利用できる家事代行サービス」のように思っている人もいます。そのような人達にそういった民間のサービスと訪問介護による支援は何が違うのか?
それは「利用者・家族が自分達の力で、自分達の生活をやっていけることをお手伝いする事が目的です」
こうきっぱり説明すればいいと思います。その為に、自分達でできる事と、どうしてもできない事はサポートするということを導入前にきちんと話し合いましょう。
そして最終目標は「訪問介護がなくても生活していけるようになる」ことだと思います。難しいケースも多いですが、可能性はケアマネとして常に模索したいところです。大変ですが、一緒に頑張っていきましょう。