「ちょっと、ご飯まだなの?」
さっき食事をしたばかりなのに、こんな事を繰り返し言ってくる認知症の人がいます。
「さっき食べたでしょ」等と返事したら、人によっては烈火の如く怒って「食べてない」「私を餓死にさす気だな」等と言われ、ストレスを感じたことがある介助者は多いと思います。
この記事では食べた事を忘れる人にどうやって向き合えばよいのか、紹介したいと思います。
食べた事を忘れて、食事を欲しがる原因
①記憶障害の影響
まずはこれです。認知症の人には共通して生じる「中核症状」というものがあります。そのうちの一つに記憶障害があります。
皆さんも「3日前に食べた食事のメニューを教えてください」と言われても思い出せないことはありますよね。これは記憶力レベルの問題で個人差があります。しかしこの記憶障害というのは、「食べた事そのものを忘れる」ということです。その為幾ら「さっき食べた」と周囲が言っても、本人の中では「食事などしていない」となるのです。
②過食症
人は食事をすると満腹中枢が刺激され、そこから「もうお腹いっぱいだよ」という指令が出ることで「お腹いっぱいになってこれ以上食べれない」となります。しかし認知症の影響でこの満腹中枢の機能が働かず、結果過食症の症状としてお腹いっぱいにも関わらず食べ続けてしまうことがあります。
③孤独や寂しさ
高齢になり、認知症を発症するとこれまであった様々な役割が失われていきます。そして誰にも必要とされない生活はとても孤独で寂しいです。
その孤独や寂しさを埋めるために「食」という快を感じられる行為に感覚的に走っている可能性があります。皆さんも辛いことがあった時においしい食べ物やお酒、高額な買い物、ギャンブル等瞬間的に快楽を感じられる行為で気を紛らわそうとした経験はありませんか?メカニズムとしては、これと同じ事が起きているということです。
食べたことを忘れる人の対応
①要求があるタイミングで食べさせてあげる
何度も欲しがると「さっきも食べたでしょ。好きなだけ食べさせたらお腹を壊してしまう・・・」こう考えて食べさせないようにする人が多いですが、ほとんどの場合かえって逆効果で余計に要求が強くなります。
食べ物を欲しがったタイミングであげるほうが、「欲しい時に食べさせてもらえる」という安心感に繋がり、結果として訴えも落ち着いてきやすいです。そして食べ物をあげる時のコツがあります。
・「ご飯まだ?」と聞いてきたら「今準備していますので、これでも食べて待っていてください」と伝える
・この時出す食べ物は、嚥下に問題がなければするめや昆布等、たくさん噛まなければならない物を出す
・タイミングを見て何か用事を頼んでみる。作業などしていると、食事を待っていたことを忘れて食べなくても良くなるときがある
②食事回数を増やす
これは、毎回のように食べた後も食事を要求してくることを想定した対応です。
現在1日3食、1日の全量を100としましょう。その場合1回の食事量は約33です。
ここで1日5食で1回の食事量を20にします。そして本人が要求したタイミングで朝昼夕以外に食事を出すという方法です。この方法の良い所は要求があったタイミングで「ああ、今回はどうやって対応しよう」等と毎回考えなくても良いので、介助者のストレスは軽減されます。また認知症の人も自分の要求がスムーズに通る為、お互いにストレスが少ないです。
③生活の中に役割をもってもらう
孤独や寂しさを埋める為に「食」という行為に走っている場合は、可能な範囲で生活の中に役割をもってもらえないか検討しましょう。役割とは大げさなものでなくても構いません。洗濯物を畳んでもらう、テーブルを拭いてもらう、ペットに餌をあげてもらう等簡単な事で良いのです。
そして、何かしてもらった後必ず、多少大げさなくらい感謝の気持ちを伝えましょう。「ありがとう、いつも助かります。またお願いしていいかな?」といった感じです。
人は人に必要とされ、感謝されることにとても強い喜びを感じます。それは若い人でも高齢者でも、認知症になった人でも同じです。そのような環境で過ごし、メンタルが安定することで症状が落ち着いてくることもあります。
まとめ
今回は食べてことを忘れて食事を要求してくるBPSDの原因や対応を紹介しました。対応のポイントは
です。対応に悩んでいる人がいれば是非参考にしてもらいたいと思います。