この記事はこんな人の役に立ちます
これが良いわけではないと分かっているが、マンネリプランの打開策が分からない
ケアプランのレベルアップに必要な6つのマインド
①利用者ファースト
そもそもケアプランは誰の為に作るものですか?「利用者の為」ですよね?
しかしケアマネ業務にこなれてきて、意思疎通や意思表示に乏しい利用者より発言力のある家族とのコミュニケーションや関係性を重視するあまり、いつのまにか家族の為のケアプランになっていませんか?
家族の意向を無視しろ、というわけではありません。実際に目の前に困っている家族がいて頼られれば力になってあげたいという気持ちは分かります。
家族を支援することを否定しているのではなく、支援の中心を家族にしてしまう事が不適切だということです。
本人サイドに立てば、自分の気持ちを無視したケアプランを一方的に作られて「さあ、頑張りましょう」と言われて頑張れるかという話です。もし、自分が利用者だったとしたらどう感じるかを考えれば分かりやすいと思います。
質の高いケアプランは「利用者ファースト」という土台があって初めて作れます。逆にこれがなければ、それ以外のノウハウが完璧でも何の意味もありません。
例え家族などの関係者と本人の意見が食い違う事があっても、利用者の思いや希望を尊重する姿勢を貫く事がケアマネには求められます。
②原因→結果で考える
基本的な事なのですが、あらゆる結果の背景には原因や理由があります。それは利用者の言動にも言える事です。例えば
- 支援が必要な状態なのにサービスを拒否する
- 助けを呼んでくれればいいのに、一人でトイレに行こうとしてよく転倒する
- 他の人には穏やかなのに、妻にだけ暴言を含めた強い態度を取る
こういった結果が生じているとします。この時ケアマネが考えるのは「なぜこのような結果になったのか?」という事です。これを探求質問と言い、それに対して仮説を立てます。
結果
支援が必要なのにサービスを拒否する
仮説
②プライベートな空間に、関係性のできていない他人に踏み込まれる事への抵抗感が強い
③介護サービスを利用してしまうと、これまで訪ねてくれていた息子が来てくれなくなるんじゃないかと思っている
一つの結果に対して複数の仮説を立てます。そしてこの仮説を一つずつ確認していき、最も近い内容を原因と位置づけケアプランを考える。この視点が重要です。
③EBC(エビデンス・ベースド・ケア)に基づいたプランニング
最近では様々な分野で「根拠」が求められる時代になりました。それは介護分野でも同じです。
元々医療では「EBM」(エビデンス・ベースド・ケア)という「根拠に基づいた医療を行う」という基本概念の元治療方針などを考えてきました。それの介護版だと思えば分かりやすいです。
以前の介護というのは個人の経験に基づく判断が頻繁にされてきました。それを全否定するわけではありませんが、このやり方は支援者によって基本的な考えややり方が大きく異なってしまい、何が適切で何が不適切なのか曖昧という最大のデメリットがありました。
このEBCに基づいたケアをする為には「対象」と「目的」をハッキリさせなければなりません。
対象:「状態」
目的:「状態改善」
ではどのような状態改善を目指せば良いのでしょうか?
①健康面
日常生活の中で病気にかからないよう、あるいは持病が悪化しないようにする
・どんな持病や、病気のリスクがあるのか?
・通院状況や、内服の内容や状況
・生活習慣での課題(食事の内容、水分補給、衛生状態等)
②ADL・IADL
・歩行や移動手段
・トイレ等の排泄行為
・整容行為
・掃除や洗濯
・食事の用意(料理)
・生活に必要な買い物
③認知機能・精神状態
・記憶力の低下による生活への影響
・家族などの負担となるような周辺症状(BPSD)の有無
・意欲低下などにより、廃用の進行がないか
大きく3つの状態を掘り下げて、その状態改善を目指していくプランを作成していきます。
④結果が測定可能な内容にする
これは主に短期目標を作成する時に重要なマインドになります。
例えば「元気に生活できる」みたいな内容だと、どういった結果になれば目標を達成したのかどうかが分かりません。
その為、より具体的に測定可能な目標設定をする必要があります。その為には「数値化」する事がポイントです。例えば
・週3回、老人会のゲードボールに参加できる
・毎朝200m先の近所の公園まで散歩する
・毎日ペットボトル2本(1000ml)の水分補給をする
こんな感じです。この数値化した目標を決める際はアウトカムの評価スケールが幾つかあるので、そちらを参考にするとより専門性の高い内容に仕上げる事ができます。
- FIM(機能的自立度評価法)
- DBDー13(認知症行動障害尺度)
- SATー17(在宅高齢者の自己実現尺度)
⑤同じケースは存在しない
ワンパターンのマンネリプランができてしまう最大の要因がこのマインドが欠けているからです。
「老老介護はこう」
「独居高齢者で、KPが県外にいるのはこう」
「認知症高齢者で、主介護者が嫁の場合はこう」
こんな風にケースの簡単な概要を聞いて、アセスメントする前からすでにケアプランの内容が既定路線で作られてしまっていませんか?
これはこれまでの経験からケースをある程度カテゴリーごとにパターン化してしまっているからです。人間はどうしても慣れてくると省エネ化する為に、自分の必勝パターンにはめこみたくなってしまいます。
しかし同じ人間がこの世に二人いないように、全く同じケースなど存在しません。まずはこの考えを脳に染み込ませましょう。
ではどうやれば個別性の高いケアプランができるのか?ポイントはその人の個別性が強い情報をしっかりアセスメントする事です。例えば
・生活歴
・仕事歴
・これまでの人生で培ってきた価値感
・育ってきた時代背景
・どんな強みを持っているか(ストレングス)
これらをしっかりアセスメントし、その内容をケアプランに入れる事ができればそれだけでもオリジナリティーを感じれるプランに変身します。
特に本人の意向やニーズにその人の特徴が現れるワードを使えるのがベストです。
⑥介護保険以外の社会資源の活用
僕達ケアマネは、介護保険制度の中で仕事をしている事もあってケアプランの支援手段も介護保険のサービスばかりのプランを多く見かけます。
しかし利用者の多様なニーズに応えていく為には、介護保険制度だけでは全く物足りません。
「とりあえず訪問介護と、お風呂はデイに行って入ればOK。家族の為にショートステイもたまに入れて。福祉用具レンタルでベッドも入れておけばいいでしょ」
こんな思考になっていたら危険です。(ちなみに昔の僕はこのマインドでした)
家族の支援や近所の人や友人、民生委員等のインフォーマルな資源。
医療保険で使える制度、行政の独自サービス、ボランティア団体のサービス等探せば結構あるものです。そういった様々な社会資源を利用者とマッチングさせるのも僕達の大切な役目です。
数が多ければいいというものではありませんが、まずは介護保険以外の社会資源を何か一つ、ケアプランに入れる
これだけでも質の高いケアプランになり、それがケアマネにも自信となって社会資源の開発などのモチベーションが高まるかもしれません。
まとめ
ケアプランのレベルアップに必要な6つのマインド
②原因→結果で考える
③EBC(エビデンス・ベースド・ケア)に基づいたプランニング
④結果が測定可能な内容にする
⑤同じケースは存在しない
⑥介護保険以外の社会資源の活用