皆さんは大学病院等の大きな病院を、紹介状無しで受診した場合に追加で費用負担がかかる事を知っていますか?
正式名称を「初診時選定療養費」と言います。今回はこの初診時選定療養費について紹介します。
初診時選定療養費とは?
・大学病院等の特定機能病院と、許可病床400床以上の地域医療支援病院が対象
・上記の対象医療機関は、紹介状を持たずに受診した患者から5000円以上の病院が決めた額を徴収しなければならない
・上記の対象医療機関は、紹介状を持たずに受診した患者から5000円以上の病院が決めた額を徴収しなければならない
この制度は2016年4月までは任意徴収だったのですが、それ以降は対象になる医療機関に対して徴収が義務化され、さらに2018年には一般病床500床以上から許可病床400床以上と徴収義務範囲が拡大されました。
さらに、2020年4月から次のような内容の見直しがされる事が決定しました。
大学病院等の特定機能病院と、許可病床200床以上の地域医療支援病院が対象
地域医療支援病院の病床数が400→200床以上になることによって、対象になる医療機関が現行の420病院から1.6倍の670病院に増える見通しです。
さらに金額でも最低5000円以上の徴収ですが、医療機関によってはさらに高額設定をしている所もあります。
まずは、自分の地域の特定機能病院と地域医療支援病院を把握し、対象になっている医療機関にいきなり受診をしないようにする必要があります。受診した後に「知りませんでした」と言っても、支払いを免れる事はできません。
対象の医療機関はインターネットや都道府県のHP等で簡単に調べられます。
ちなみに、対象の医療機関を受診しても、この初診時選定療養費を免除される条件もあります。
緊急その他やむを得ない事情がある場合については、定額負担を求めないこととする。その他、定額負担を求めなくても良い場合を定める。
[緊急その他やむを得ない事情がある場合]
救急の患者、公費負担医療の対象患者、無料低額診療事業の対象患者、HIV感染者
[その他、定額負担を求めなくて良い場合]
a. 自施設の他の診療科を受診中の患者
b. 医科と歯科の間で院内紹介した患者
c. 特定健診、がん検診等の結果により精密検査の指示があった患者 等引用:厚生労働省HPより
デカイ病院の受診で大損を避けるにはどうすればいいのか?
このルールを設定した国の思惑は
医療機関ごとに役割を分担してもらい、それぞれに役割を果たす事に集中してもらう事で、最終的にかかる医療費を抑制したい
現在増え続ける社会保障費が問題視されており、消費税が10%にアップしたのも社会保障にかかる費用を賄うためというのが大きいです。
しかし10%にアップしても十分でないというのが現状のようです。そこで政府が去年、公的病院の再編を促すリストを作成し発表するアクションを起こしています。
これはかなりの反発がありました。何せ地域で中心的な医療を担っている大病院がズラッと名指しされたわけです。名指しされた医療機関側もそうですが、そこを利用している患者や家族の不安を煽る結果にもなりました。
しかし、実際これだけ膨れ上がり続ける医療費を抑えるには、何もしないわけにもいかないだろうというのが現状です。
少し話が逸れましたが、要はこの初診時選定療養費を導入した背景は、医療機関毎に役割分担を今よりきっちりしてもらう事によって病院の数を現状より減らし、最終的には病院の統廃合を促し、日本全体の病床数そのものを減らして、医療費を削減していきたいという狙いがあるのです。
まあ、国の狙いは置いといてまず僕達が支援している利用者さん達が損しないようにするために必要な情報提供や提案をする必要があります。
そしてそのシンプルな考えは
「近くの個人病院などに主治医(かかりつけ医)を持っておきましょう」
これだけです。しかしこれにはたくさんのメリットがあります。
まずデカイ病院が好きな人の勘違いに「デカイ病院の方が質の良い医療が受けられる」というのがあります。
しかし、大学病院などは教育機関としての機能もあります。何時間も待ってやっと診察してくれたのが経験も浅く、技能レベルも低い新人の医者だなんてことはザラです。これって時間のコスパが悪いですよね。
でも、近所のかかりつけ医は病院にもよりますが、大学病院などで経験を積んで自分で開業してやれる自信があるからやっているわけで、腕はそれなりに担保されている確率が高いです。(2代目などで、腕がからっきしの場合もありますが)
しかも待ち時間はデカイ病院より短いので、複数の大きな病気があるわけではないなら近所のかかりつけ医のほうが、総合的なメリットが大きいです。
また定期的にかかっておくことで、その人の健康状態を詳細に把握してもらえる為、必要なタイミングで必要な医療機関に紹介状をスムーズに書いてもらえるのも大きなメリットです。
僕も現在は老健のケアマネという立場からたくさんの紹介状(診療情報提供書)を見るのですが、あまりかかっていない医療機関が発行した紹介状は内容が薄く、これだと紹介された医療機関は一から必要な検査等をしなければならず患者の負担が大きくなります。
「でも、かかりつけ医に紹介状書いてもらうのも結構お金かかるんでしょ?」
こんな風に思っている人もいますが、紹介状の料金は診療報酬で決められていて250点(2500円)で、高齢者で1割負担なら250円の自己負担で済みます。
5000円以上のお金を紹介状なしで受診するのと、どちらが得なのかは一目瞭然ですね。
まとめ
①デカイ病院を紹介状なしでかかる費用「初診時選定療養費」
・大学病院等の特定機能病院と、許可病床200床以上の地域医療支援病院が対象
・上記の対象医療機関は、紹介状を持たずに受診した患者から5000円以上の病院が決めた額を徴収しなければならない
②デカイ病院の受診で大損を避ける為には、近所のかかりつけ医を持っておくこと
これからは医療と介護にかかるルールというのは目まぐるしいスピードで変わっていきます。必要な情報を知らないと、気づいたら金銭的に大きな損をしてしまうかもしれません。
ケアマネとして利用者や家族に、そして自分や自分の家族が損をしないよう有益な情報を知っておくことは大切だと思います。
もし、皆さんの周りでこれを知らずに損している人がいたら是非教えてあげてください。