今回は前回記事知らないとケアマネできない疾患⑤「糖尿病」で紹介した糖尿病のケアマネジメントポイントを著書「ケアマネジャーの医療知識」から紹介し、解説します。
糖尿病の押さえておきたいポイント
①糖尿病の関連症状は受診が原則
糖尿病そのものに起因する症状が見られる時は早めの受診を行います。
意識障害
糖尿病は意識障害をきたすことがあります。この場合、早急な病院受診が原則ですが低血糖が疑わしく、内服が可能であれば甘い清涼飲料水を飲ませることもあり得る選択肢です。
口渇、多飲、多尿、体重減少
これらの症状の出現は血糖コントロール不良のサインです。早めに主治医に報告してください。
発熱
糖尿病は感染症に罹患しやすく、かつ重症化しやすい傾向があります。また血糖コントロールも不良になりやすいです。発熱が見られたら早めに医療機関に受診します。
②夜間尿、浮腫は腎不全進行のサイン
合併症の腎症に関連した症状です。腎不全が進行すると夜間尿、浮腫などの症状が生じてきます。さらに尿毒症に近づくと悪心、食欲不振、貧血、全身倦怠感、息切れなどの症状が見られるようになります。
③網膜症は定期受診で事故を防ぐ
網膜症は視力低下が生じてきます。特にインスリン療法の際、単位のダイヤル合わせに苦戦することがあります。最近は数字の表記が見やすくなった注射器が使われています。病期に合わせた定期的な眼科医の診察を欠かさないようにしましょう。
④多様な神経症状に対応
神経障害は様々な症状を呈し、生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。しびれによる夜間不眠や激しい痛み、感覚鈍麻による外傷や壊疽、また視力低下や起立性低血圧が伴えば転倒の危険性が増します。
胃のもたれ、便秘、排尿障害、勃起障害などもQOLに影響します。どのような神経症状が生じているのかを把握し、痛みの緩和や生活環境の整備を心がけます。
⑤服薬のタイミング、副作用に注意
治療の中で問題が生じやすいのは服薬のタイミングです。毎食直前の内服が原則である速効型インスリン分泌薬や、糖吸収阻害薬を食後に服用すると低血糖を起こす可能性が高くなります。服用を忘れて食事を始めてしまった場合は服用を断念するのが無難です。
また何らかの感染症を起こした時の食欲不振時には、内服薬の服用方法やインスリンの投与量に細かな対応が必要となります。あらかじめ主治医に確認をしておきましょう。
⑥多様な合併症と関係が深い
糖尿病を基礎疾患として患っている高齢者の場合、すでに様々な疾患を合併している、あるいは今後発症する可能性があります。
高血圧、脂質異常症、肥満症
糖尿病は動脈硬化症の重要な危険因子です。これらの病気に罹患している場合はより決めの細かい治療が求められます。
感染症
主要臓器に疾患を抱えていると、感染症により致命的な状態に陥る事が考えられます。感染症の予防のため、本人と家族への指導が必要になります。
認知症
認知症を抱えていると食事療法が困難になったり、薬物療法の不適切な使用により危険な状態に陥ることが予想されます。
これらが適切に行えるよう、家族への指導や介護・医療サービスの提供体制を整える事が求められます。
⑦禁煙と食事療法の優先順位
禁煙は動脈硬化症の危険因子です。糖尿病と動脈硬化の関係の深さからも、喫煙者には禁煙を勧めます。ただし禁煙は往々にして食欲増進を起こします。食事療法が上手く行われている場合は良いのですが、そうでない場合禁煙と食事療法のどちらを優先すべきか悩む事があります。
このような場合は主治医と連絡を取り、本人の生活に対する思いを伝える事が必要です。
⑧血糖管理は無理をしない
高齢者の場合、血糖管理は下がりすぎず上がりすぎずという、ある程度大雑把なコントロールが現実的です。食事・運動療法にあまり熱心になると本人や介護者を追い込む事になります。じっくりと取り組み、療法が上手く進みだしたら、本人・家族を褒めるようにしましょう
糖尿病のケアマネジメントポイント
①薬物療法による血糖コントロール
まずは糖尿病の血糖コントロールです。普段の数値がどれくらいか把握しておくことと、お薬の管理や各人を誰がするのかということを考える必要があります。例えば
・内服の管理方法(お薬カレンダーを使用して自分で飲むのか、家族が毎回用意するのか等)
・血糖値の測定とインスリン注射の必要性。インスリン注射は毎回同じ単位数で大丈夫なのか、一定数値以上或いは以下であれば単位数を変える必要があるのか。それを本人・家族はちゃんと理解して実行できるのか
・受診頻度は?受診は自分で行くのか、家族が連れて行くのか。その受診にちゃんと予定通り行けるのか(独居や老老夫婦などは受診を忘れたり、お薬を飲みすぎたり無くしてもうないのだが、次の受診まで薬の使用を我慢して重篤化することがあります)
②食事の管理
これは糖尿病の状態によってどの程度のコントロールが必要かは異なります。厳密にやろうと思うとかなり厳しくなってしまうので、は医師に確認して「1日大体何kcalまでなら良いか」ということを確認します。
これは食品交換表を使いながら、おおよその数値を守る感じに支援します。あまり真面目に厳しすぎると食事がストレスになって、かえって食事にルーズになる原因になってしまいます。
また、ある程度カロリーを守った食事を続けれているのであれば必ず本人と、それを支えている家族を褒めましょう。食べたいものを食べられない辛さは相当過酷です。そうやって他者から頑張りを認めらる事で長期間食事療法が続けやすくなります。
③運動の機会を作る
糖尿病の人は運動習慣があまりない人が多いです。運動はたしかに有効なのですが、いきなりハードなメニューを計画してしまうと「絵に書いた餅」になってしまいます。
毎日自分で新聞を取りにいく、家の掃除をする、庭で体操をするなど簡単な事から始めましょう。そして可能であればデイサービスやデイケアを利用して身体を動かすのも良いでしょう。
参考書籍